百鬼の行列を、一体ずつの頁へ分ける
百鬼夜行は本来、夜の都を多数の異形が進む光景として絵巻に描かれてきました。鳥山石燕の『画図百鬼夜行』は、その名を受け継ぎながら、行列を一体ずつ切り分けます。頁をめくるたびに名前と姿が現れ、読者は妖怪を比較し、覚え、好きな一体を選べるようになりました。
国立国会図書館の公式解説[1]が位置づけるとおり、本作はのちに『今昔画図続百鬼』『今昔百鬼拾遺』『百鬼徒然袋』へ続く石燕妖怪画集の第一作です。本ページでは、現在のキャラクター設定を原典へ逆投影せず、図像と短い詞書から読める範囲を確かめます。
1776年、陰・陽・風の三巻
『画図百鬼夜行』は安永五年(1776)刊。前篇陰・前篇陽・前篇風の三巻構成です。「前篇」と記され、奥付には後編の予告がありますが、その名の後編は刊行されず、三年後の『今昔画図続百鬼』が実質的な続作となりました。
国文学研究資料館公開本『画図百鬼夜行』[2]を見ると、絵と名を中心にした簡潔な頁が続きます。後続作のような長めの解説は少なく、余白と姿そのものが読者の想像へ委ねられています。
陰――山、獣、水辺の古い気配
最初の巻は木魅、天狗、幽谷響、山姥、山童から始まり、犬神、猫また、河童、獺、垢嘗、狸、鎌鼬、網剪へ進みます。山の反響や古木の気配、身近な動物の変化、水辺の危険が、固有の輪郭を得て並びます。
犬神と白児のように一図へ複数の名が添えられた頁もあります。また狐火は火の現象として収録されますが、現在の当サイトでは九尾狐の種プロフィールと分け、独立項目の整備を待っています。収録数をカード数だけで数えない理由です。
陽――怪火、家、死者
陽の巻では、絡新婦、鼬、叢原火、釣瓶火、ふらり火、姥ヶ火、火車と、動物・怪火が続きます。その後、家鳴、産女、海座頭、野寺坊、高女、手の目、鉄鼠、黒塚、ろくろ首、逆柱、枕返し、雪女、生霊、死霊、幽霊が並び、住居の異変から死者の像まで射程が広がります。
生霊・死霊・幽霊を別の構図で示した点は、姿の似た霊を状況と関係から見分ける試みでもあります。石燕以前の説話を踏まえるものと、絵師が図像を整理したものを分けて読む必要があります。
風――名は分かるが、物語の少ない異形
風の巻には、見越、しょうけら、ひょうすべ、わいら、おとろし、塗仏、濡女、ぬらりひょん、元興寺、苧うに、青坊主、赤舌、ぬっぺふほふ、牛鬼、うわんが並びます。現在よく知られるぬらりひょんの「妖怪総大将」という性格は、石燕の頁に詳しく書かれているわけではありません。
わいらやおとろしのように、名と姿が残る一方、行動や土地の伝承がほとんど示されない妖怪もいます。空白があったからこそ、後世の作家や絵師が新しい物語を重ねました。
石燕は妖怪を「発明」したのか
本作には、河童や天狗のように広い伝承をもつ存在、古今百物語評判など先行書に見える怪異、百怪図巻や化物づくし系絵巻の図像を参照したものが混在します。石燕がすべてを無から作ったわけでも、各地の口承をそのまま写しただけでもありません。選び、名づけ、配置し、筆致を統一する編集こそが作品の力です。
収録妖怪一覧の読み方
下の「収録妖怪」は、原作に名があるもののうち、YOKAI.JPで独立プロフィールが整っている存在を、原作順に一種一件で収録しています。旧データにあった木魅・天狗・山姥・猫また・濡女の地域別バージョン重複は除きました。白児、鼬、狐火、死霊は本文で原作収録を明記し、独立プロフィール整備後に追加できる構造にしています。
まず一枚の図を見てから個別ページへ進み、原典に書かれたことと後世に付け加えられた性格を見比べてみてください。
















































