置行堀
おいてけぼり
本所堀の魚奪い・置行堀
江戸・本所周辺の堀や水路で、釣果を持ち帰ろうとすると水中から「置いていけ」と声が響き、魚籠の魚が消えたり奪われたりする怪異をいう。本所七不思議の一つとして知られ、落語や絵双紙にも取り上げられた。正体は河童・狸・ムジナ・カワウソ・スッポンなど諸説あり、場所は錦糸堀・仙台堀・源森橋付近などと伝えられる。語義としての「置いてけぼり」の由来ともされる。
「本所七不思議(ほんじょななふしぎ)」とは、江戸時代に本所(現在の東京都墨田区)で語り継がれてきた奇談・怪談の総称です。 庶民の間で「七不思議」として親しまれ、落語や講談の題材にもなったこれらの物語は、江戸の町に生きる人々の想像力と信仰心を今に伝えています。 代表的な話には、「置行堀(おいてけぼり)」「送り提灯(おくりちょうちん)」「燈無蕎麦(あかりなしそば)」「足洗邸(あしあらいやしき)」などがあり、それぞれに不思議で少し怖い逸話が残されています。 中でも「置行堀」は、釣り人が魚を持ち帰ろうとすると「置いてけ、置いてけ」と声が聞こえるという有名な話で、今も“本所怪談”の代名詞として語り継がれています。 現在では、墨田区の大横川親水公園に「本所七不思議」のレリーフが設置され、地域文化としても保存・発信されています。また、現代作品『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』(スクウェア・エニックス)によって再び注目を集めるなど、その魅力は時代を超えて息づいています。 このコレクションでは、七不思議それぞれの由来・逸話・現代とのつながりを、イラストや史料とともに紹介します。江戸の闇に潜む不思議な物語を、ぜひお楽しみください。
9体の妖怪が収録されています
おいてけぼり
本所堀の魚奪い・置行堀
江戸・本所周辺の堀や水路で、釣果を持ち帰ろうとすると水中から「置いていけ」と声が響き、魚籠の魚が消えたり奪われたりする怪異をいう。本所七不思議の一つとして知られ、落語や絵双紙にも取り上げられた。正体は河童・狸・ムジナ・カワウソ・スッポンなど諸説あり、場所は錦糸堀・仙台堀・源森橋付近などと伝えられる。語義としての「置いてけぼり」の由来ともされる。
おくりちょうちん
本所夜道の先導灯・送り提灯
夜道で提灯を持たぬ者の前に、ゆらめく灯が現れて先導するように進む怪異。近づけばふっと消え、離れるとまた現れ、決して追いつけない。江戸の本所七不思議の一つに数えられ、同趣の「送り拍子木」や、小田原提灯が人を惑わす「提灯小僧」と同類視される。害をなすより、人を翻弄し道行きを乱す性質が語られる。
おくりひょうしぎ
夜回りに従う拍子木・送り拍子木
江戸・本所界隈で語られる「本所七不思議」の一つ。夜回りの者が拍子木を打ち「火の用心」と唱えながら巡回すると、打ち終えた後にも同じ調子の拍子木が背後から響き、あたかも見えぬ何者かが送り伴うという怪談。静かな町並みでの反響とみる説もあるが、雨夜に打たずとも音がした例が伝えられ、不可思議として語り継がれた。
あかりなしそば
本所七不思議の燈無蕎麦
江戸時代の本所南割下水付近に夜な夜な現れたとされる二八蕎麦の屋台にまつわる怪異。店主は決して姿を見せず、店先の行灯は常に消えているのに、誰かが火を点けると帰宅後に不幸が起こると畏れられた。逆に油が尽きず燃え続ける「消えずの行灯」とする伝えもある。狸の仕業とも噂され、本所七不思議の一つとして口碑に残る。
あしあらいやしき
本所七不思議の足洗邸
江戸の本所で語られた本所七不思議の一つ。旗本屋敷の天井を突き破って剛毛の巨大な足が現れ、「足を洗え」と声が響く。従えば足は静かに引き、怠れば天井を踏み抜いて荒れ狂うという。足の正体は不詳で、屋敷の主が替わると怪異が止む話型や、女性が洗わねば収まらぬ異聞も伝わる。人を害すだけでなく、盗賊を踏みとどめる守護的側面も語られる。
かたはのあし
本所七不思議の片葉葦
江戸本所に伝わる「本所七不思議」の一つ。ある事件以後、堀端に群生する葦がなぜか片方の葉しか付けなくなったと語られる怪異で、植物の異変を通じて原因不明の祟りや怨念を示すものと解される。具体的な犯行や人物名が語られる型もあるが、伝承は時代や資料により差異があり、現象の由来は明言されないことが多い。
おちばなきしい
本所七不思議の落葉なき椎
江戸時代、本所にあった平戸新田藩松浦家上屋敷の庭に、四季を通じて一枚の葉も落とさないと噂された椎の古木があり、「本所七不思議」の一つとして語られた。常緑樹であっても落葉はあるはずなのに全く散らないことが怪とされ、屋敷の者は不吉を感じて遠ざかったという。現地との比定や実木の伝承は諸説あるが、詳細は不詳。
たぬきばやし
本所馬鹿囃子・狸囃子
夜更けに、どこからともなく笛や太鼓の囃子が聞こえ、音を追えば逃げるように遠のいて所在の掴めない、音の怪異。江戸・本所では馬鹿囃子とも呼ばれ、本所七不思議の一つに数えられた。実体は確かめられず、風に乗った祭囃子の反響や重なりとする説もあるが、俗には狸の仕業と噂された。千葉県木更津市の證誠寺には、和尚と狸が囃子と腹鼓を競い合ったという狸囃子の伝説が伝わり、これを題材にした野口雨情の童謡で全国に知られるようになった。化けと腹鼓で人を化かす狸の代表として、俗に言う日本三大狸の一つにも挙げられる。
つがるのたいこ
本所七不思議の津軽太鼓
江戸本所にあった弘前藩津軽越中守屋敷の火の見櫓で、板木ではなく太鼓が用いられたという怪談。本来火事を知らせるのは板木だが、この屋敷のみ太鼓が吊され、理由は不詳とされる。また板木を打つと太鼓の音が響くという異説も伝わる。本所七不思議に数えられることがあるが、怪異性が薄く除外される場合もある。
「本所七不思議|江戸に伝わる怪談と都市伝説の原点」の妖怪たちが連なる系譜を辿ってみよう。