伝説
伝統妖怪

天狗

てんぐ

カテゴリ
山野の怪
性格
山の主にして護法と魔の両義をあわせ持つ。慢心を最も嫌い、修行者を試し、時に導く。
起源
京都府・滋賀県・和歌山県 (各霊山の大天狗諸座)
  • 愛宕山太郎坊(京都府 京都市右京区)八大天狗の一
  • 比良山次郎坊(滋賀県 大津市北小松)八大天狗の一
  • 鞍馬山僧正坊(京都府 京都市左京区)八大天狗の一
  • 飯綱三郎(長野県 長野市)八大天狗の一
  • 大山伯耆坊(神奈川県 伊勢原市)八大天狗の一
  • 彦山豊前坊(福岡県 田川郡添田町)八大天狗の一
  • +2 ヶ所
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お子様にも分かりやすく天狗について説明したページもご用意しています。

基本説明

天狗は、日本の山岳に棲むとされる妖怪にして神格的存在であり、修験道の山伏と分かちがたく結びついてきた山の主である。その姿には大きく二つの系統がある。ひとつは赤ら顔に高い鼻、山伏の装束をまとい羽団扇と一本歯の高下駄を具えた鼻高天狗、いまひとつは鴉のくちばしと翼をもつ烏天狗で、さらにその下に木の葉天狗・木っ端天狗といった下位の眷属が連なる。古くは鳶(とび)のごとき鳥の姿で観念されたものが、中世を通じて長鼻の山伏像へと固まっていった。

天狗は仏法を妨げる魔でありながら、調伏されれば仏法を護る護法神に転じる――この両義性が天狗の本質である。慢心した高僧が堕ちて天狗になるという観念は、仏教の説く「天狗道」と結びつき、鎌倉末の絵巻にも風刺として描かれた。一方、山岳信仰のなかでは山の守護者・武芸と法力の達人として畏敬され、修行者を試し、あるいは導く存在とされた。京都の鞍馬山や愛宕山をはじめ、諸国の霊山にはそれぞれの大天狗が座すと伝えられ、近世の『天狗経』はその総数を四十八に数え上げている。

民話・伝承

「天狗」の語は、もと古代中国で凶事を告げる流星をさす言葉であった。日本の文献での初出は『日本書紀』舒明天皇九年(六三七)の条で、雷のような音を立てて空を流れた大星を、唐帰りの学僧旻(みん)が「流星に非ず、これ天狗(あまつきつね)なり」と評したと記す。ここでの天狗は天体の怪であって、のちの山の妖怪とは断絶している。両者を結ぶ連続性は実証されておらず、山に棲む天狗の像が定着するのは平安期以降である。

中世になると、天狗は仏教の慢心の象徴として語られた。永仁四年(一二九六)頃の『天狗草紙』は、南都北嶺の名だたる寺の驕れる僧たちを天狗に擬えて風刺し、中国の大天狗が来日して比叡山の高僧の法力に敗れる『是害房絵巻』の説話も広く知られた。その原話は『今昔物語集』巻二十の智羅永寿(ちらえいじゅ)の物語にさかのぼる。これらの絵巻のなかで、人に化けた天狗が正体を現すとき鼻が伸びるように描かれ、長鼻の鼻高天狗の像が形づくられていった。

民俗のうえでは、天狗は山の怪異の主であった。人が忽然と消える天狗攫い(神隠し)、大木を伐り倒す音が響くのに翌朝には何もない天狗倒し、山中にこだまする天狗笑い、降りかかる天狗礫(つぶて)――いずれも山の不可解を天狗の仕業として語ったものである。近世には浮世絵や歌舞伎に描かれ、庶民にも親しまれる妖怪像となった。

諸国の霊山には、それぞれの大天狗が座すと信じられた。愛宕山太郎坊・比良山次郎坊・鞍馬山僧正坊を筆頭に、飯綱三郎・大山伯耆坊・彦山豊前坊・大峰前鬼坊・白峰相模坊らを「八大天狗」と束ねる枠組みは、室町期の謡曲『鞍馬天狗』に既にその名が列ねられており、近世の創作ではなく中世まで遡る信仰と芸能の所産である。ただしその顔ぶれは資料によって異同があり、固定した教義ではない。天狗研究を集大成した知切光歳は、これら諸山の天狗を一つの体系として整理した。

徹底解説

天狗には4種類の異なる形態が確認されています。 それぞれ独特の特徴と性格を持ち、人々との関わり方も様々です。以下に各形態の詳細をご紹介します。

天狗とは何か――類型と図像の総論

天狗とは何か――類型と図像の総論について詳しく説明すると、

この版は、特定の霊山の一座ではなく、「天狗とは何か」を図像と類型の歴史から徹底して解きほぐす総論である。各座の個別伝承は、それぞれの大天狗の頁に譲る。

天狗の姿は一様ではない。第一の類型は鼻高天狗――赤ら顔に高い鼻、山伏の兜巾と鈴懸をまとい、羽団扇を手に一本歯の高下駄を履く。第二は烏天狗で、鴉のくちばしと翼をもち、剣や金剛杖を執る。第三は木の葉天狗・木っ端天狗と呼ばれる下位の天狗で、力弱く数多い眷属とされる。これらは固定した分類というより、時代と地域による天狗像の幅を映している。

図像は時代とともに変遷した。平安期の天狗はまず鳶(とび)のごとき鳥として観念され、烏天狗の像はその名残をとどめる。長い鼻が際立つのは鎌倉末以降で、『是害房絵巻』には、人に化けていた天狗が鳥の姿へ戻る際に鼻が伸びる場面が描かれる。鼻高の起源については、伎楽面の高鼻の治道(じどう)面に由来するとし、烏天狗を迦楼羅(かるら)面に結ぶ学説があり、長い鼻を鳥の嘴の図像的な遺存とみる見方もあるが、いずれも定説とまでは言いがたい。『日本書紀』で鼻長七咫(しちあた)と描かれる猿田彦神と重ねられ、祭礼の猿田彦役に天狗面を用いる風も生まれた。

天狗の両義性は、仏教の天狗道の観念に根ざす。仏道を学ぶゆえに地獄には堕ちず、邪法を扱うゆえに極楽にも行けない中間の境涯――そこに堕ちるのは慢心した僧とされた。『天狗草紙』はこの観念を七大寺の僧への風刺として描くが、ただし「高慢な僧だけが天狗になる」という単純化には知切光歳も行き過ぎと釘を刺している。魔でありながら、調伏されれば護法に転じ、修験者が『天狗経』を誦せば諸国の天狗を招いて願を叶えるとされた――この護法と魔の振幅こそ天狗の核である。

「八大天狗」という括りの確かな中世典拠は、室町期の謡曲『鞍馬天狗』の詞章にある。大天狗が従える諸国の天狗を「筑紫には彦山の豊前坊、四州には白峰の相模坊、大山の伯耆坊、飯綱の三郎……大峰の前鬼が一党、葛城高間」と地理順に唱え上げるくだりがそれで、八大天狗が江戸の創作ではなく中世の信仰と芸能に根を張っていたことを示す。もっともその構成は資料により揺れ、石鎚山法起坊を加える異伝もあるなど、固定した名簿ではない。

妖怪設定

この区画は物語を楽しむための当サイト独自の設定です。史実・考証ではありません。

性格
山の主にして護法と魔の両義をあわせ持つ。慢心を最も嫌い、修行者を試し、時に導く。
相性
山を畏れ敬う者、修験・武芸の道を志す者、驕りを戒められても恥じぬ者
能力・特技
飛翔と神通(羽団扇で風雲を起こす)変化(鳥・人・山伏への化身)山中の隠形と天狗攫い武芸・兵法・法力の伝授護法神としての加護と、魔としての惑わし
弱点
  • 強き法力・読経による調伏
  • 慢心を突かれること
  • 山を遠く離れると力が衰える
生息地
日本各地の霊山(愛宕・鞍馬・比良・飯縄・大山・英彦山・大峰・白峰ほか)

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天狗とは何か――類型と図像の総論についてさらに詳しい情報や診断結果については、こちらをご覧ください。

比叡山法性坊・大天狗

比叡山法性坊・大天狗について詳しく説明すると、

比叡山法性坊は、都と湖の境にそびえる叡山の峰々を巡り、杉檜の梢と雲海の狭間を住処とする大天狗である。山王の社叢に吹く峯風をまとい、鴉の翼と修験の法具を思わせる羽団扇を手に、夜半には法螺の残響とともに現れるという。外見は厳めしく、赤ら顔に高き鼻、眼は星霜を見透すごとく鋭い。だが、その立ち姿は僧形を思わせ、衣の褶には経巻の香が漂う。古きより『天狗経』に名を記される四十八天狗の一、叡山の教法と山の気脈を護る役を担い、山門勢力が興隆した時代には、学徒の行いを陰に陽に律したと語られる。

法性坊は、ただ武芸に秀でるのみならず、言葉の縁(へり)を断ち切り、事の本性を示すことを旨とする。求道の者が山に迷えば、霧を増して道標を消し、心が定まらぬ者を堂塔の影に誘い込む。これは惑わせるためではない。心の揺らぎが己を迷わせると知れば、霧は忽ち晴れ、比叡の稜線は刃のように清明となる。逆に、名利を求めて山に入る者や、山王の社威を侮る輩には、木の葉を刃に変える風を起こして追い払い、二度と無用の登攀を許さぬと伝えられる。

叡山の古僧が秘かに伝えるところでは、法性坊は法華と密の要諦を風に託し、読誦の韻に合わせて鳥の群れを操り、祈雨・祈晴を司る。延暦寺の堂鐘が異様に鳴れば、峯の上で法性坊が羽団扇をひと振りした兆とされ、湖上の波紋に経の字が立つ夜もあったという。時に、若き修行者の枕元に現れ、夢のうちに一喝して煩悩の根を断ち、明け方には白露の一滴を残して去る。露は薬となり、怠惰は毒となると教えるためだ。

また、法性坊は都人の流言や権勢の争いが山に及ぶのを最も嫌い、言の刃を沈める術を持つ。人が悪しき噂で互いを傷つけるとき、山颪が町家の軒を震わせ、虚言は自らの重みで崩れる。ゆえに、口業を慎む者は法性坊の加護を受けると言われる。一方で、修行を盾に慢心を育てる者には容赦がない。法性坊はその者の足音を軽くして地を離れさせ、踏んではならぬ空理の道に迷わせる。地に足を戻すのは、自らの非を認めたときのみである。

比叡の森に響く鶯の声が突然止み、かわって遠雷が澄んで聞こえる夜、法性坊は近い。参詣の者は帽を脱ぎ、山王の神前に礼を尽くせば、峯風は柔らぎ、雲間から一筋の光が差す。これを「法性の返し」と呼び、山での祈りが正しく返答された徴とする。法性坊は山の守り手にして教えの試し手。畏れは敬いに通じ、敬いは道をひらく。そう心得る者にのみ、その翼は陰となり、旅を守る。

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性格
峻厳にして慈悲深く、言葉少なだが必要な一喝は惜しまない。約定を重んじ、虚飾や慢心を最も嫌う。敵には烈風の如く、学び求める者には冬日和のぬくもりを与える。
相性
礼を知り、鍛錬を怠らず、問いを持って山に入る修行者や学僧、道を正したい志ある者。
能力・特技
法風招来(羽団扇で風を起こし、霧・雲を操る)心鏡の一喝(迷いを断ち、真意を照らす霊的な叱咤)鳥衆指揮(山鳥・烏を使役し、道案内や警護をさせる)鐘応の術(堂塔の鐘と呼応し、兆しを示す)
弱点
慢心の場では力が鈍る(敬いなき場所では術が乱れる), 社殿の荒廃を嫌い、穢れに近づくと翼が重くなる
生息地
比叡山の峯と社叢, 坂本から横川にかけての参道と霊地

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比叡山法性坊・大天狗についてさらに詳しい情報や診断結果については、こちらをご覧ください。

高野山覚海坊・烏天狗

高野山覚海坊・烏天狗について詳しく説明すると、

横川覚海坊は、平安末より鎌倉初にかけて仏法護持の一念から天狗へと転じたと伝えられる変種である。もとは真言の法脈を重ねて受けた高徳の僧で、山の諍いに奔走するうち、俗の理では守り得ぬ境界を悟り、翼ある法護の者となったという。高野の山内では、ある夜堂中に強風が巻き、中門の扉が鳴動したかと思うと、その扉は二枚の羽と化し、黒雲を割って飛び去ったと語られる。扉は覚海坊の双翼となり、以後、彼は山門の出入りに従い現れては、法を乱す者の前に烈しい風を起こし、戒の一条を突き付ける。

姿は烏天狗に近いが、面は痩せぎすの老僧の面影を残し、長い鼻は山の稜線のごとく反り上がる。法衣に似た羽衣は朱と墨の層を重ね、袖口は古い経巻の端のようにほつれている。手には錫杖に似た羽団扇を携えるが、振れば紙背に宿る梵字が舞い上がり、結界の綱となって地を走る。言葉は少ないが、耳に入れば鐘の余韻のように長く胸に残り、道を誤った者はその一語で足を止める。

覚海坊は山の境目、すなわち社寺の門、参道の曲がり、尾根と谷の交わりを守る。そこは人の法と山の法が触れ合う端であり、彼は両者の調停者でもある。修行者が清浄を保てば、雲間から白い羽根を一枚落とし、道中の安堵の徴とする。だが慢心の芽が立てば、参籠の灯が一瞬揺らぎ、背に冷たい風が走る。これを三度感じた者は、彼の導きに従い山を降りるか、あるいは一度衣を脱いで初心に返るほかない。

また、彼は「乾しの教え」と呼ばれる戒めを授ける。心を澄ますには余計な湿りを抜け、という比喩で、山内では豆を乾して保存する工夫や、法会の供物を清らかに保つ術と結び付けられて語られる。確証はないものの、山の厳しさを日々の糧へ移し替える知恵を示した象徴とされる。

夜更け、谷に霧が籠もると、覚海坊は烏の影を連れて巡回する。彼らは彼の目と耳であり、僧俗の噂に惑う者に近づいて短い合図を送る。合図を正しく解せる者は迷い道から外れ、間違えば同じ場所を三度巡る。これを「覚海の巡り」と呼び、三度目に己が心の曲がりを正すと、東の稜線が白み、道は自然と正面の門へ通じるという。

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性格
沈毅で妥協を嫌う。法の曲がりを許さず、必要とあらば威を示すが、根は慈悲深く迷える修行者には手を差し伸べる。無駄口少なく、行いで教える。
相性
精進を怠らず、教えを素直に受ける求道者や、山の掟を尊ぶ者と良好。名利に囚われた者、僧形を借りるだけの偽者とは相性が悪い。
能力・特技
結界裁ち(羽団扇で場の穢れを断ち、清浄域を一時的に拡げる)風戒の一語(一言で慢心を鎮め、動揺を止める)門翼変化(門扉・板戸を一時の翼に変え、境を越えて迅速に移動)烏使い(山烏を使役し、消息や兆しを伝える)
弱点
慢心に染まった場では力が鈍り、結界が薄くなる, 鐘の音が乱れた寺では留まれず、静まるまで姿を見せない
生息地
高野山周辺の社寺境内と参道の要(かなめ), 近隣の尾根筋と谷筋の合流点

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高野山覚海坊・烏天狗についてさらに詳しい情報や診断結果については、こちらをご覧ください。

四十八天狗一覧――『天狗経』の諸国大天狗

四十八天狗一覧――『天狗経』の諸国大天狗について詳しく説明すると、

天狗は、八大天狗だけにとどまらない。諸国の霊山には、それぞれの大天狗が座すと信じられ、近世の祈祷秘経『天狗経』は、その代表を四十八座――「四十八天狗」――として列ね上げる。この版は、その全名簿と、経そのものの来歴を一望する総覧である。

『天狗経』は、江戸期に成立したとされる密教・修験系の祈祷文である。仏典としての正統な経ではなく、山伏が勤行に誦して諸国の霊山の天狗を招請(来臨影向)し、その霊威を借りて悪魔退散・怨敵降伏・諸願成就を願う呪文経の系統に属する。本文は「南無大天狗小天狗」と唱え起こし、諸天狗の名を連ねたのち、「総じて十二万五千五百」と天狗の総数を挙げ、真言「おんあろまや てんぐすまんき そわか」で結ぶ。この「十二万五千五百」は実数ではなく、無数の天狗を表す象徴の数であり、固有名で挙げられる四十八座は、そのなかの代表という位置づけである。なお『天狗経』の写本・版本の伝来については、高橋成「天狗経――その現状と所在」(二〇一六)などの文献学的研究があり、成立年代を厳密に一点に定めるのは難しい。

四十八天狗の名簿は、坊号(霊山名+坊の名)のかたちで連なる。冒頭は愛宕山太郎坊・比良山次郎坊・鞍馬山僧正坊ら畿内の大天狗で始まり、富士・日光・羽黒・秋葉・英彦山・石鎚といった全国の修験霊山の天狗が続く。以下に、確認できる二系統の出典を照合した全四十八座を、坊号・霊山・国(現都道府県)とともに掲げる。★は当事典に独立頁をもつ八大天狗である。

1. ★愛宕山太郎坊(愛宕山/山城・京都)

2. ★比良山次郎坊(比良山/近江・滋賀)

3. ★鞍馬山僧正坊(鞍馬山/山城・京都)

4. 比叡山法性坊(比叡山/山城・京都)

5. 横川覚海坊(比叡山横川/山城・京都)

6. 富士山陀羅尼坊(富士山/駿河・静岡)

7. 日光山東光坊(日光山/下野・栃木)

8. 羽黒山金光坊(羽黒山/出羽・山形)

9. 妙義山日光坊(妙義山/上野・群馬)

10. 筑波山法印坊(筑波山/常陸・茨城)

11. ★彦山豊前坊(英彦山/豊前・福岡)

12. 大原住吉剣坊(大山剣ヶ峰(諸説)/伯耆・鳥取(比定))

13. 越中立山縄垂坊(立山/越中・富山)

14. 天岩船檀特坊(天岩船/所在未詳)

15. 奈良大久杉坂坊(未詳/所在未詳)

16. 熊野大峯菊丈坊(大峯山菊ノ窟/大和・奈良)

17. 吉野皆杉小桜坊(吉野山/大和・奈良)

18. ★那智滝本前鬼坊(那智滝本/紀伊・和歌山)

19. 高野山高林坊(高野山/紀伊・和歌山)

20. 新田山佐徳坊(新田山(諸説)/上野・群馬(比定))

21. 鬼界島伽藍坊(鬼界ヶ島/薩摩・鹿児島(比定))

22. 板遠山頓鈍坊(板遠山/所在未詳)

23. 宰府高垣高林坊(竈門山(宝満山)/筑前・福岡(比定))

24. 長門普明鬼宿坊(未詳/長門・山口(比定))

25. 都度沖普賢坊(隠岐島(諸説)/隠岐・島根(比定))

26. 黒眷属金比羅坊(象頭山/讃岐・香川)

27. 日向尾畑新蔵坊(未詳/日向・宮崎(比定))

28. 醫王島光徳坊(硫黄島/薩摩・鹿児島(比定))

29. 紫黄山利久坊(紫尾山/薩摩・鹿児島(比定))

30. ★伯耆大山清光坊(大山/伯耆・鳥取)

31. 石鎚山法起坊(石鎚山/伊予・愛媛)

32. 如意ヶ嶽薬師坊(如意ヶ嶽/山城・京都)

33. 天満山三萬坊(天満山(諸説)/美濃・岐阜(比定))

34. 厳島三鬼坊(弥山(厳島)/安芸・広島)

35. 白髪山高積坊(白髪山/土佐・高知(比定))

36. 秋葉山三尺坊(秋葉山/遠江・静岡)

37. 高雄内供奉(高雄山/山城・京都)

38. ★飯綱三郎(飯綱山/信濃・長野)

39. 上野妙義坊(妙義山/上野・群馬)

40. 肥後阿闍梨(金峰山(諸説)/肥後・熊本(比定))

41. 葛城高天坊(金剛山(葛城)/大和・奈良)

42. ★白峰相模坊(白峰/讃岐・香川)

43. 高良山筑後坊(高良山/筑後・福岡)

44. 象頭山金剛坊(象頭山/讃岐・香川)

45. 笠置山大僧正(笠置山/山城・京都)

46. 妙高山足立坊(妙高山/越後・新潟)

47. 御嶽山六石坊(御嶽山/信濃・長野)

48. 浅間ヶ嶽金平坊(浅間山/上野・群馬(比定))

この名簿を読むうえで、三つの注意がいる。第一に、坊号(各座の名)は複数の出典で一致し信頼できるが、国・都道府県の比定にはウェブ二次情報に誤りが混じる。たとえば紫尾山は鹿児島県(薩摩)であり、「日向」は宮崎県の旧国名である――これらを関東や東北の地と取り違える誤記が流布している。本名簿では、比定に幅のある座に「(比定)」、出典間で所在の確かめられない座に「所在未詳」を付した。第二に、天岩船檀特坊・奈良大久杉坂坊・板遠山頓鈍坊のように、複数の出典が所在を「未詳」とする座があり、これらは無理に地名を当てていない。第三に、八大天狗の坊号と『天狗経』本文の表記には揺れがある。たとえば八大天狗にいう大山伯耆坊は本文では「伯耆大山清光坊」、大峰前鬼坊は「那智滝本前鬼坊」「熊野大峯菊丈坊」系の表記で現れる。八大天狗は、この四十八座のなかから代表八座を抜き出したものと通説で説かれるが、坊号が一字一句一致するわけではない。

四十八天狗という枠組みは、天狗が単独の妖怪ではなく、全国の霊山に遍く座す山岳信仰の神格であったことを、もっとも端的に示している。天狗研究を集成した知切光歳も、これら諸山の大天狗を一つの体系として整理した。八大天狗の各座(★)は独立した頁で詳しく扱うが、それらもまた、この十二万五千五百の天狗の海のなかの、ひときわ高い峰々なのである。

妖怪設定

この区画は物語を楽しむための当サイト独自の設定です。史実・考証ではありません。

性格
諸国の霊山に遍在する天狗の総体。八大天狗を頂点に、四十八の代表座、そして十二万五千五百の無数の眷属からなる。
相性
山岳信仰・修験道を奉じる者、諸国の霊山を巡る者、天狗の全体像を知ろうとする者
能力・特技
諸国の霊山に遍在する天狗の招請(来臨影向)悪魔退散・怨敵降伏・諸願成就の加持八大天狗を頂点とする天狗界の統べ十二万五千五百と称される無数の眷属
弱点
  • 正法・読経による調伏
  • 慢心
  • 霊山を離れての力の衰え
生息地
日本各地の霊山(愛宕・比良・鞍馬・富士・日光・羽黒・秋葉・英彦山・石鎚・大峰ほか四十八座)

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四十八天狗一覧――『天狗経』の諸国大天狗についてさらに詳しい情報や診断結果については、こちらをご覧ください。

出典・参考文献

8
  1. 天狗草紙(絵巻、作者未詳)((鎌倉末期の風刺絵巻), 1296頃) [絵巻]南都北嶺の名刹の慢心した僧を天狗に擬えて風刺した絵巻。天狗道と鼻高天狗像の中世的典拠。
  2. 天狗経(密教系祈祷秘経)((修験の祈祷経典), 江戸中期) [古典文献]諸国の大天狗四十八座を列挙する祈祷秘経。山伏が誦して天狗を招き悪魔退散・調伏を願ったとされる。
  3. 日本書紀(舒明天皇九年条)舎人親王ほか((奈良時代の勅撰正史), 720) [古典文献]舒明天皇九年(637)、空を流れた大星を学僧旻が「天狗(あまつきつね)」と評した、天狗の語の日本初出。
  4. 是害房絵巻(絵巻、作者未詳)((曼殊院本ほか、重要文化財), 1354頃) [絵巻]中国の大天狗是害房が来日し比叡山の僧の法力に敗れる説話の絵巻。化身が鳥へ戻る際に鼻が伸びる描写を含む。
  5. 今昔物語集(巻二十)(編者未詳)((平安後期の説話集), 12世紀前半) [古典文献]震旦の天狗智羅永寿が来日し比叡山の僧に阻まれる説話。是害房絵巻の原話となった天狗説話群を収める。
  6. 鞍馬天狗(謡曲)宮増(伝)((能・五番目物), 室町期) [謡曲]鞍馬山僧正坊が牛若丸に兵法を授ける能。詞章に諸国の大天狗を地理順に列ね、八大天狗の中世的典拠となる。
  7. 天狗の研究知切光歳(大陸書房, 1975) [研究書]天狗研究を集大成した基本文献。諸山の大天狗を体系的に整理し、相模坊↔伯耆坊の移座説などを論じる。
  8. 天狗経――その現状と所在高橋成(西郊民俗236号, 2016) [学術論文]『天狗経』の写本・版本の伝来と所在を扱った文献学的研究。天狗経の現状を知る現時点で最も確かな入口。

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