民話・伝承
近世の絵巻には名と図があるばかりで解説が付かず、地域的な口承も確認されない。石燕の『画図百鬼夜行』では神社の鳥居の上に乗る姿で描かれ、この構図が後世の解釈の出発点となった。昭和以降の児童向け妖怪図鑑では、鳥居の上から、不心得者や悪戯をする者を見つけると突然落ちかかって脅す、という説明が広く流布する。しかし村上健司は、これを石燕が鳥居の上に描いた図像から想像された後世の創作にすぎず、実在の伝承ではないと明確に指摘している[4]。多田克己もまた、名義の解読を通じて、この怪が確かな民間信仰や説話に根ざすものではないことを示した[3]。すなわち、おとろしの「不信心者を懲らす守護神めいた性格」は、近代の編者が絵姿から逆算して付与した物語であって、近世の一次伝承には裏づけを欠く。乱れ髪に隠れた顔と、鳥居という結界の上に蹲るという図像の取り合わせだけが先にあり、そこへ後の世がもっともらしい意味を読み込んでいった——おとろしは、図像が物語を呼び寄せ、解釈が伝承に化けてゆく過程をそのまま体現した妖怪の好例である。鳥居の上という配置自体が、神域を犯す者への戒めという連想を誘い、創作の苗床となったといえる。
コレクション収録
この妖怪は以下のコレクションに収録されています:
徹底解説
江戸時代の絵巻・絵双六に描かれる造形を基準とした整理。長髪が全身を覆い、前髪が垂れて顔貌は判然としない。『百怪図巻』や『画図百鬼夜行』では同頁に「わいら」と並置され、恐れを体現する語感の連関が指摘される。名称は「おとろし」「おどろおどろ」「毛一杯」などが併記され、踊り字の読解差から表記が変化した可能性がある。具体的な出現場所・所業・吉凶は絵からは読み取れず、鳥居上に描かれる例もあるが、そこから神罰的機能を断定する史料は残らない。民俗的には「おどろがみ(棘髪)」の観念と恐怖の語感が造形に反映した像とみなされるにとどまる。
妖怪設定
この区画は物語を楽しむための当サイト独自の設定です。史実・考証ではありません。
- 性格
- 不詳(畏怖を喚起する像)
- 相性
- 不詳
- 能力・特技
- 不詳人に畏怖を抱かせる存在感(図像上の解釈)
- 弱点
- 不詳
- 生息地
- 不詳, (図像上の例)社頭・鳥居付近
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