天狗礫
てんぐつぶて
投擲者見えぬ礫・天狗礫
天狗礫は実体の定まらない怪異として語られ、原因は天狗、または狐狸や神意の発露など多義的に解釈されてきた。特徴は、投擲者が見えないのに四方から石が飛ぶ、感触や音は確かでも石が見当たらない、痕が残らない、一定の時刻に反復する、といった点にある。加賀・金沢・江戸など都市部から社頭近辺まで広く事例が記録され、見物人の増加や役人の見回りを契機に鎮静する例も報告される。道徳的文脈では素行の戒め、不作や病をもたらす兆しとされ、古記録では雷と結び付けて天神の落とす石と見る記述もある。民俗学上は飛礫の神事や強訴・印地との観念的連関が指摘され、超自然の意思表示として理解されてきた。