からかさ小僧
からかさこぞう
夜道で跳ねる古傘・からかさ小僧
江戸時代以降の草双紙(絵入り娯楽本)や舞台芸術によって典型化された、一つ目・一本足の唐傘の化け物としての解釈版である。このバージョンにおいて、からかさ小僧は人間の命を奪うような恐ろしい怨霊ではなく、暗がりに潜んで通行人を驚かし、その反応を見て楽しむような滑稽で悪戯好きな性質を極めている。 その図像学的なルーツは室町期の『百鬼夜行絵巻』に連なるとはいえ、現在広く認知されている「傘の柄が一本の足となり、傘の布地から一つ目と長い舌が突き出た姿」は、江戸後期の「お化けかるた」や見世物小屋、歌舞伎の仕掛け道具における反復生産の賜物である。ろくろ首や三つ目小僧といった視覚的インパクトの強い妖怪たちと並べられ、絵柄としての面白さから子供向けの「おもちゃ絵」の定番スターとなった。 夜の路地裏や軒下に現れ、バサバサと骨組みを鳴らしながら一本足で跳躍し、長い舌で人間の顔をペロリと舐めるなどの視覚的・擬音的な怪異を引き起こすが、本質的な害悪はない。地域固有の伝説を持たないため、出没地や活動内容は媒体によって自在にアレンジされ、それがかえって近代の映画やアニメーションへの適応を容易にした。ある意味において、古びた器物が魂を持つという「付喪神」の原初的な恐怖を、江戸の町人文化が完全に「キャラクター(玩具)」へと脱臭し、エンターテインメントへと昇華させた究極の形態である。