日の神の誕生は一つではない
『古事記』の天照大御神は、伊邪那岐命が禊で左の目を洗った時に生まれ、月読命、須佐之男命とともに三貴子とされる。[2]『日本書紀』本文では、伊弉諾尊と伊弉冉尊が日の神を生み、その光が世界を照らしたため天上へ送る。名は大日孁貴である。同書の一書には鏡から生まれる話と、伊弉諾尊の左目から生まれる話もある。[3]天照大御神の来歴は、最初から複数の神話が並び立つ形で伝えられてきた。
武装して弟を迎えた姉神
須佐之男命が高天原へ上ると、天照大御神は善意の訪問とは考えず、国を奪う意図を警戒した。髪を男性の髻のように結い、勾玉を巻き、弓矢を持ち、大地を踏み抜くほどの勢いで待ち受ける。二神は誓約を行い、剣と勾玉から子神を成して真意を確かめた。[4]この場面の天照大御神は、穏やかな慈母という一面だけでは捉えられない。領域と秩序を守り、来訪者へ証しを求める統治者である。
神衣の場と天石屋戸
須佐之男命は田や祭殿を荒らし、神衣を織る建物へ逆剥ぎの馬を投げ入れた。『古事記』では服織女が死に、『日本書紀』本文では天照大神が神衣を織っていて負傷し、一書では稚日女尊が死ぬ。[5][3]誰が織り、誰が傷ついたかは資料ごとに違う。その後、天照大御神が天石屋戸へ隠れると世界は暗くなり、災いが起こる。洞窟への退去は、田、祭、衣を支える秩序が破壊された結果として描かれている。
光を戻した神々の協働
八百万の神々は思金神の案をもとに、鏡、勾玉、榊、布、祝詞、長鳴鳥、舞を用意した。天宇受売命の舞で神々が笑うと、天照大御神は外が明るい理由を尋ねて戸を開く。鏡に映る輝く神を示され、さらに身を乗り出したところを天手力男神が外へ導いた。[5]一柱の英雄が救うのではなく、考える者、作る者、祈る者、舞う者、力を出す者がそれぞれの役目を果たして光を取り戻す。

幸野楳嶺の二幅対右幅では、洞窟口の光の中に天照大御神が小さく現れ、前景で天宇受売命が舞う。[19]天照を単独の肖像として大きく描くのではなく、舞、音楽、祭具、群神を含む協働の場面として構成した明治期の作例である。



春斎年昌の1889年三枚続も、前景の舞手は天宇受売命、洞窟奥の光の中の女性が天照大御神、戸口の力持ちが天手力男神である。[20]三枚を左・中・右の正しい配置で見ると、後世の絵師が岩戸開きを一人の神の登場ではなく、群像劇として表したことが分かる。
鏡・皇孫・稲穂
天孫降臨で、天照大御神は高木神とともに邇邇芸命を葦原中国へ遣わす。『古事記』では八尺瓊勾玉、鏡、草薙剣を授け、鏡を自らの御魂として祭るよう命じる。[6]『日本書紀』の一書には、皇孫の国の永続を述べる命、鏡を同じ殿に祭る命、斎庭の稲穂を授ける命が伝わる。[12]これらは後世に一組の神勅として理解されてきたが、古典では別々の異伝に属する。伊勢の御神体とされる鏡は公開されず、外部から形状や年代を確かめることはできない。
伊勢と斎王
『日本書紀』は、豊鍬入姫命が宮中の天照大神を笠縫邑に祭り、倭姫命が鎮座地を求めて伊勢の五十鈴川上に祭ったと伝える。[13]この由緒は長く尊重されてきたが、伝承紀年を西暦へ換算して確定した創建年とはできない。制度としての斎王は天武朝の大来皇女から明瞭になり、未婚の皇族女性が伊勢の祭祀に奉仕した。斎宮跡は、この制度を考古学的にたどれる現実の遺跡である。[14]
神宮で続く食・衣・遷宮
皇大神宮では、新穀を奉る神嘗祭[8]、外宮から朝夕二度の食事を奉る日別朝夕大御饌祭[9]、絹と麻の神衣を奉る神御衣祭[10]が行われる。神田、御園、御塩浜では祭祀に用いる米、野菜、果物、塩が作られる。式年遷宮では原則二十年ごとに正殿、装束、神宝を新たにし、祭祀と技術を次代へ伝える。二十年という周期の理由は古文書に明記されず、複数の説がある。第63回の諸祭は2025年に始まり、2033年秋の遷御が予定されている[11]。
中世から現代へ
中世には天照大神を大日如来と重ねる神仏習合説や、外宮を重視する伊勢神道が発達した[15]。近世には御師、伊勢講、参宮を通じて信仰が広がり、国学者は記紀を読み直した[16]。明治以後は神宮が国家祭祀の中心に置かれ、天照大御神は皇祖神として国民統合と結びついた[17]。戦後、国家による神道の管理は廃止され、神宮は宗教法人として再出発した[18]。現在の信仰上の位置づけ、古代神話、祭祀制度、各時代の思想は互いに関係するが、同じ一つの時代の事実ではない。天照大御神の像は、それらが長い時間の中で重なって形成されてきた。
妖怪設定
この区画は物語を楽しむための当サイト独自の設定です。史実・考証ではありません。
妖怪タイプ - 神々
カテゴリ - 神霊・神格
レアリティ - 神格
性格 - 警戒心と判断力を備えた威厳ある統治者。秩序を乱す行為には厳しく、誓約によって真意を確かめる。深く傷ついた時には天石屋戸へ退くが、他の神々の知恵、技、舞、力を受け入れて再び外へ出る。全知全能というより、祭祀と役割の秩序を重んじる神である。
相性 - 約束を守り、役割を引き受け、食、衣、農、工芸、芸能を丁寧に扱う人と相性がよい。異なる技能を持つ人と協力し、言葉と行いを一致させる姿勢を尊ぶ。他者の仕事や聖域を面白半分に壊し、権威だけを振りかざす人とは相容れにくい。
能力・特技 - 日の神としての光高天原の統治誓約による真意の確認高木神と進める皇孫派遣鏡による御魂の奉斎神衣・織物との結びつき稲穂・神饌・祭祀秩序との結びつき
弱点 - 田、祭殿、神衣の場を破壊する暴行は天照大御神を天石屋戸へ退かせる。外界を閉ざせば自らの光も共同体へ届かず、危機の解決には思金神、天宇受売命、天手力男神、祭具を作る神々の働きが必要となる。固定の退治法や属性弱点はない。
生息地 - 神話では高天原を治め、天石屋戸へ退く。現実の主要祭祀地は三重県伊勢市の皇大神宮である。高天原と天石屋戸は神話上の場所であり、各地の「天岩戸」はそれぞれの地域伝承として区別する。
