伝説
伝統妖怪

白峰相模坊

しらみねさがみぼう

カテゴリ
山野の怪
性格
崇徳の無念に寄り添い、その陵を護りつづける随従の天狗。荒ぶる怨霊を鎮め、また支える。
起源
讃岐国・白峰(香川県坂出市)
  • 白峰(白峯寺・白峯陵)(香川県 坂出市)崇徳上皇の白峯陵を護る相模坊の座す地
地図で見る

基本説明

白峰相模坊は、讃岐国の白峰に座す大天狗であり、八大天狗の一に数えられる。室町期の謡曲『鞍馬天狗』に「四州には白峰の相模坊」と唱えられる。その最大の特徴は、保元の乱に敗れて讃岐に流され崩じた崇徳上皇の白峯陵を護る天狗とされる点にある。

その名の由来には二説がある。一つは『保元物語』に登場し崇徳に味方した僧相模阿闍梨勝尊にちなむとする説、いま一つは相模国の大山から来た大行者が崇徳の霊を護る鎮守となったとする説で、後者は大山伯耆坊の「移座」伝と対をなす。日本三大怨霊にして「日本一の大天狗」とも呼ばれた崇徳と、その陵を護る天狗――両者の物語は分かちがたく結びついている。

民話・伝承

白峰相模坊の核心は、崇徳上皇の怨霊とその陵墓を護るという、ただ一点に集約される。

崇徳上皇は、保元の乱(一一五六)に敗れて讃岐へ配流され、長寛二年(一一六四)に同地で崩じた。遺骸は白峯寺の上の稚児嶽で荼毘に付され、白峯陵(四国唯一の天皇陵、宮内庁管理)が築かれた。源頼朝が「日本一の大天狗」と評したと伝わるこの崇徳は、生きながら魔道に心を傾け、崩御ののちも朝廷に祟りをなしたとされる日本三大怨霊の一である。白峰相模坊は、この崇徳の白峯陵を護持し随従する天狗として観念された。

その姿は、文学のなかで鮮やかに結晶した。原拠をなすのは、西行に仮託された鎌倉中期の説話集『撰集抄』巻一「新院御墓白峰之事」で、西行が白峯の崇徳院墓を訪う説話を載せる。これを劇化したのが謡曲『松山天狗』で、崇徳院をシテ、歌僧西行をワキとし、崇徳に従う天狗として相模坊を登場させる。さらに上田秋成の『雨月物語』巻頭「白峯」は、西行が白峯陵に崇徳の霊を弔いに訪れ、怒れる崇徳院と歌問答する物語で、相模坊はこれら『撰集抄』以来の鎮魂譚を結ぶ共通の要素となっている。

相模坊の名の由来をめぐっては、『保元物語』で崇徳に味方した相模阿闍梨勝尊にちなむ説と、相模国大山から移ってきたとする説とがある。後者は、相模大山の天狗が崇徳を慕って讃岐へ移り、その空席に伯耆坊が入ったとする大山伯耆坊の移座伝と対をなし、天狗研究の知切光歳が整理したものである。白峰相模坊を語ることは、おのずと崇徳怨霊を、そして対なる大山伯耆坊を語ることに通じる。

八大天狗

八大天狗

諸国の霊山に座す八座の大天狗。室町期の謡曲『鞍馬天狗』に既にその名が列ね、近世の『天狗経』四十八天狗の筆頭をなす。愛宕太郎坊を総帥とし、西は讃岐白峰までを束ねる。

  1. 愛宕山太郎坊
    愛宕山太郎坊
    山城・総帥
  2. 比良山次郎坊
    比良山次郎坊
    近江・次席
  3. 鞍馬山僧正坊
    鞍馬山僧正坊
    山城
  4. 飯綱三郎
    飯綱三郎
    信濃
  5. 大山伯耆坊
    大山伯耆坊
    相模
  6. 彦山豊前坊
    彦山豊前坊
    豊前
  7. 大峰前鬼坊
    大峰前鬼坊
    大和
  8. 白峰相模坊
    白峰相模坊いまここ
    讃岐

関連する妖怪

伝承の上で深く結びつく妖怪たち。

徹底解説

白峰相模坊は、八大天狗のなかでもっとも一人の人物――崇徳上皇――と固く結びついた天狗である。その像は、崇徳怨霊の物語を抜きには成り立たない。

崇徳上皇は、保元の乱(一一五六)に敗れて讃岐へ流され、帰京を許されぬまま長寛二年(一一六四)に崩じた。配流地で五部大乗経を写して都へ送るも呪詛を疑われて突き返され、激怒して血書の誓いを立て、生きながら大天狗・大魔縁と化したと伝わる。源頼朝が「日本一の大天狗」と呼んだこの崇徳の白峯陵を、相模坊は護持する。白峯寺は四国八十八ヶ所第八十一番札所、白峯陵は四国唯一の天皇陵であり、その傍らには崇徳院の霊を祀る頓証寺殿が建つ。

相模坊を不朽にしたのは文学である。その原拠は、西行に仮託された鎌倉中期の『撰集抄』「新院御墓白峰之事」で、西行が白峯の崇徳院墓を弔う説話を載せる。これを劇化した謡曲『松山天狗』は崇徳院をシテ、西行をワキとし、崇徳に随う天狗として相模坊を描く。さらに上田秋成の『雨月物語』「白峯」は、西行が白峯陵に崇徳の霊を弔い、怒れる崇徳院と対話する物語で、相模坊はこの撰集抄以来の系譜を貫く存在となった。怨霊と、それに寄り添う天狗――崇徳と相模坊の関係は、御霊信仰と天狗信仰の交わる稀有な一点である。

相模坊の出自には二説がある。『保元物語』で崇徳に味方した相模阿闍梨勝尊にちなむとする説と、相模国大山から移ってきた天狗とする説である。後者は、大山の相模坊が崇徳を慕って讃岐へ移り、空席の相模大山に伯耆坊が入ったとする知切光歳の整理した移座伝と一対をなす。いずれにせよ白峰相模坊は、八大天狗の西の果てに座し、日本三大怨霊の一・崇徳の魂を護りつづける天狗として、讃岐の白峰に伝えられている。

妖怪設定

この区画は物語を楽しむための当サイト独自の設定です。史実・考証ではありません。

性格
崇徳の無念に寄り添い、その陵を護りつづける随従の天狗。荒ぶる怨霊を鎮め、また支える。
相性
不当に貶められた者、亡き者を弔う心ある者、崇徳と白峰の故事に心を寄せる者
能力・特技
崇徳怨霊の護持と随従白峯陵の鎮護怨霊を鎮め、また支える験力風雲を操る飛翔讃岐の霊域の守護
弱点
  • 崇徳の無念が深ければ鎮めきれぬ
  • 丁重な鎮魂・祭祀を要する
  • 陵を粗略に扱う者を退ける
生息地
讃岐国・白峰(香川県坂出市), 白峯寺・白峯陵(崇徳天皇陵), 頓証寺殿

🔮妖怪相性診断

崇徳の陵を護る天狗・白峰相模坊についてさらに詳しい情報や診断結果については、こちらをご覧ください。

出典・参考文献

6
  1. 鞍馬天狗(謡曲)宮増(伝)((能・五番目物), 室町期) [謡曲]鞍馬山僧正坊が牛若丸に兵法を授ける能。詞章に諸国の大天狗を地理順に列ね、八大天狗の中世的典拠となる。
  2. 保元物語(作者未詳)((保元の乱の軍記物語), 13世紀頃) [古典文献] 参考資料保元の乱を描く軍記。崇徳の写経奉納拒否・舌を噛み血書・大魔縁化の呪詛伝説の典拠。
  3. 撰集抄(西行に仮託、作者未詳)((仏教説話集), 鎌倉中期) [古典文献]巻一「新院御墓白峰之事」に西行の白峯陵参詣を載せる。謡曲『松山天狗』と『雨月物語』「白峯」の直接の原拠。
  4. 松山天狗(謡曲)(能、作者伝承諸説)((能、原拠『撰集抄』), 室町期) [謡曲]崇徳院をシテ、西行をワキとし、崇徳に従う天狗として相模坊が登場する能。白峰相模坊と崇徳怨霊を結ぶ。
  5. 雨月物語上田秋成((安永5年・読本), 1776) [古典文献] 参考資料巻頭「白峯」で西行が崇徳の怨霊と対話。金色の鳶として描く崇徳怨霊像の文学的頂点。
  6. 天狗の研究知切光歳(大陸書房, 1975) [研究書]天狗研究を集大成した基本文献。諸山の大天狗を体系的に整理し、相模坊↔伯耆坊の移座説などを論じる。

このタイプの妖怪に興味がある?

妖怪診断で、あなたの性格に最も近い妖怪を発見しましょう

妖怪診断を始める

神社で今日の守護妖怪に出会う

おみくじを引くと、今日あなたを見守る妖怪が現れます。