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一つ目小僧

ひとつめこぞう

一つ目小僧

一つ目小僧

この子の魂が、あなたの言葉に応える

基本説明

額の中央に大きな一つ目を据えた、坊主頭の童子の姿で現れる妖怪。人に害を加えるよりも、夜道や辻、空き屋敷などに不意に現れて「わっ」と人を驚かす程度の、比較的おとなしい部類に数えられ、からかさ小僧などと同様、ユーモラスに描かれることも多い。豆を嫌うとする俗信は、節分の豆まきや語呂合わせに由来するとみられ、これがのちに豆腐を好む像へ転じて、近世末以降「豆腐小僧」と重ねて語られるようにもなった。江戸の絵巻や随筆には一つ目の小坊主の怪が散見され、屋内の掛物に戯れる姿から、路傍にぬっと立つ姿までさまざまに記される。舌を長く垂らし、片手に番傘や盆を持つ図様は、同じく一つ目の妖怪である豆腐小僧と通じ合い、近世後期の黄表紙や錦絵では両者の像がしばしば重ね描きされた。一方で民俗学では、この愛嬌ある妖怪の背後に古い信仰の影が見いだされてきた。柳田國男は、一つ目という異形を単なる怪異とみず、かつて神に捧げられた者の片目を損なう古俗や、製鉄など特殊な生業の痕跡が、神の零落とともに妖怪へと姿を変えた残響として読み解いた[1]

民話・伝承

江戸の『怪談老の杖』平秩東作・18世紀後半)には、麻布の武家屋敷で掛軸に戯れていた小坊主が振り向くと一つ目で、住人は年に幾度か起こる無害な怪だと事もなげに語った、という話が見える。地方の伝承も豊かで、会津には路上で少女をにらんで気絶させた話、備前には夜道に青白く光って現れ、腰を抜かした者を舌でひと舐めしたという地名譚があり、丹波篠山には晩秋の雨夜の番所橋に立つ小柄な単眼の小僧が武士さえ怖気づかせると伝わる[3]。とりわけ重要なのが、関東一帯の「事八日(ことようか)」の習俗である。二月八日と十二月八日には、一つ目小僧が箕借り婆らとともに山里から訪れ、戸締りや行いの悪い家を帳面に書き留めて回る、あるいは疫病をもたらすとされ、これを防ぐため、家々では軒先に目の数多い目籠(笊)を高く掲げ、柊(ひいらぎ)を刺して魔を退けた。目籠の無数の編み目を「一つ目より多くの目」で威圧する魔除けと解する点に、来訪する一つ目神への畏れがうかがえる。柳田國男はこの一目を、製鉄の炉を見続けて片目を病んだ者を祀る天目一箇神(あめのまひとつのかみ)の信仰などとも関連づけ、零落した山の神の面影とみたが、片目と神の結びつきをめぐる解釈には今なお議論がある[1]

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徹底解説

江戸期の絵巻『百怪図巻』『化物づくし』などに「目一つ坊」として描かれる像を基調に整理したもの。坊主姿の児童形で、屋敷内の座敷や橋、坂道、辻などにふっと現れ、こちらの反応を見て満足すると消える。宗教的背景として比叡山の一眼一足法師との連想が指摘されるが、直接の同一視は避けられる。飲食物との関わりでは、豆を嫌うとする俗信や、後世の豆腐を携えた図像が知られるが、いずれも人畜に害をなす意図は薄い。現れ方は季節や天候に左右され、晩秋の雨夜などで目がぼんやり光るとされる地域もある。名は奥州で「一つまなぐ」、各地で「一つ目小僧」「目一つ坊」と呼称が変わる。

妖怪設定

この区画は物語を楽しむための当サイト独自の設定です。史実・考証ではありません。

妖怪タイプ
伝統妖怪
カテゴリ
山野の怪
レアリティ
名妖
性格
悪戯好きで執拗ではない
相性
驚かすのみで深追いせず、人を避けやすい
能力・特技
突如出現し人を驚愕させる単眼の妖気で睨みつけ一時的に気を失わせるとされる地域伝承薄明かりや雨夜に淡く発光する
弱点
豆を嫌うとする俗信, 強く叱責されると退く, 行燈の明かりで姿が薄れるとされる土地もある
生息地
座敷・床の間周辺, 橋・坂・辻, 城下町の路地, 寺社近辺

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出典・参考文献

3
  1. 一目小僧その他柳田國男(小山書店, 昭和9年(1934年)刊) [古典文献]
  2. 怪談老の杖(江戸期作者未詳)((江戸期怪談集), 江戸後期) [古典文献]江戸後期の怪談集。大窪百人町 (現・東京都新宿区) で傘男が女に「相合傘」と声をかけると振り向いた女の口が耳まで裂けていた、という挿話を収める。狐の化けたものとされる。1979 年口裂け女現象に先行する「口が耳まで裂けた女」モチーフの祖型を成す江戸期文献として、現代妖怪研究で参照される。
  3. 妖怪事典村上健司(毎日新聞社, 2000) [研究書]

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