他の妖怪が想像上の異形であるのに対し、即身仏は実在した行者がその信仰によって半ば神格へと昇った稀有な存在である。湯殿山の奥の院は社殿を持たず、熱湯の湧く茶褐色の巨大な霊巌そのものを御神体とし、参道は素足で踏みしめねばならない。この自然崇拝の原型を留める霊域で、行者たちは即身成仏——今生において仏となる——を目指した。木食行は穀物を断ち、やがて塩や水も限界まで絶って体を枯らしていく自己ミイラ化の準備であり、最後は鈴のついた竹筒で外と繋いだ土中の石室に籠もって絶命する。鉦の音が絶えた時が入定の成就とされた。掘り出された遺体は腐らず仏となり、寺の本尊脇に祀られて衆生の苦を引き受け続ける。彼らは恐怖の対象ではなく、死をも超えて人を救おうとした意志の化身であり、山形・出羽三山の死者観と山中他界の思想を最も鮮烈に示す。
妖怪設定
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