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名妖
妖怪

コックリさん

こっくりさん

カテゴリ
霊・亡霊
性格
呼ばれれば答えを返し、 正しい終わり方を欠くと憑く合成動物霊
起源
1884 年伊豆下田 (アメリカ船員によるテーブル·ターニング伝来、 井上円了所伝)

基本説明

コックリさん(狐狗狸さん)は、 明治期日本に伝来したテーブル·ターニング系の占い遊戯であり、 同時に「呼び出された霊」 そのものを指す呼称でもある。 鳥居を描いた紙·五十音表·「はい/いいえ」 を記した板に十円硬貨等を置き、 数人で指を載せて「コックリさん、 コックリさん、 おいでください」 と呼びかけ、 硬貨の動きで答えを読む形式が一般的である。 起源は井上円了『妖怪学講義』『妖怪玄談』 によれば、 1884年に伊豆下田沖に漂着したアメリカの船員が地元住民に見せたテーブル·ターニングを起源とするとされ、 当初テーブルが普及していなかった日本では「お櫃を三本の竹で支える」 代用具が用いられ、 これが「こっくりこっくり傾く」 動きから「こっくり」 と呼ばれ、 「狐·狗·狸」 の三獣を当て字して「狐狗狸」 と表記されるようになった。 1970年代に学校児童間で爆発的に流行し、 学校怪谈と隣接する遊戯型怪谈の代表として定着した。

民話・伝承

1884年下田起源説と井上円了の検証井上円了 (1858-1919) は明治期の哲学者·東洋大学創立者で、 妖怪を科学的に分類·解明する「妖怪学」 を立ち上げた人物である。 円了は『妖怪玄談』 等で、 1884年に伊豆下田沖に漂着したアメリカ船の船員が地元民にテーブル·ターニング (テーブル回し) を見せたのが日本伝来の起点だと記録した。 当時の日本にはテーブルが普及していなかったため、 お櫃を三本の竹で支える代用具が考案された ── これが「狐狗狸」 という当て字の物理的由来である。 ただし「1884年下田」 という具体的時期·場所は円了の所伝に基づくものであり、 これに先行する伝来経路の可能性も排除できない。

「偽怪」 として整理。 円了は妖怪を「実怪 (本当の不思議)」「仮怪 (錯覚)」「偽怪 (人為的)」「真怪 (自然法則)」 に分類し、 コックリさんを「偽怪」 ── 参加者の無意識の筋肉運動 (現代心理学でいう観念運動効果 ideomotor effect) によって硬貨が動く現象 ── に位置づけた。 これは19世紀末ヨーロッパでマイケル·ファラデーがテーブル·ターニングを同じ原理で説明したのと並行する科学的判断であり、 円了の明治期妖怪学は欧米最新の心理学·物理学と歩調を合わせていた。

1970年代児童ブーム。 戦後昭和の児童文化では1970年頃に深夜ラジオ番組がトリガーとなり、 学校児童間でコックリさん遊びが爆発的に流行した。 オカルト作家中岡俊哉『こっくりさんの秘密』 (二見書房、 1974) が大ベストセラーとなり、 つのだじろう『うしろの百太郎』 等の漫画でも紹介され、 児童間の流行を加速した。 学校では「コックリさんをすると霊に憑かれる」 「やめ方を間違えると死ぬ」 等の派生伝承が広がり、 多くの教育委員会·学校が禁止令を出した。

「呼び出された霊」 としての扱い。 占い遊戯としてのコックリさんが流行する一方で、 「コックリさん」 という名前で呼び出される霊そのものを妖怪として扱う見方も児童間で広まった。 「狐·狗·狸」 の合成神格として、 動物霊系の眷属が問いに答えるとされ、 一部地域では「正しい終わり方 (鳥居の絵に硬貨を戻し『お帰りください』 と唱える)」 を欠くと憑依が残るとする俗信が生まれた。 この遊戯型怪谈は花子さん·テケテケ等の学校怪谈と隣接する位置を占め、 児童期の「呼び出し儀礼」 の心理的機能を担った。

現代継承。 2012年1-3月に藤原ここあ作『妖狐×僕SS』 (スクウェア·エニックス『月刊ガンガン JOKER』 2009-2014連載、 ディオメディア制作 TVアニメ 2012) でコックリさんの主人公が登場し、 累計450万部超のヒットとなった。 2015年には現代版コックリさん (スマートフォンアプリ等) が中高生に再流行し、 一部学校で生徒が異常行動·奇声を発する事例が報じられて再び社会問題化した。 1884年起源とされる占い遊戯が、 140年を経て児童文化·マンガ·アプリの中で繰り返し再生されているのがコックリさんの特異な持続性である。

戦後·平成日本のネット·学校·都市から生まれた九体

現代都市怪谈の系譜

戦後日本の学校怪谈と平成期の 2 ちゃんねるオカルト板から派生した、 現代日本の都市怪谈を代表する九体。 江戸期百鬼夜行系の妖怪とは異なり、 初出年·初出媒体·投稿者名が辿れる近現代の怪谈である。 トイレの花子さん (1948 岩手県沢内) から、 1970 年代学校怪谈ブーム (赤マント·テケテケ·カシマレイコ·メリーさんの電話) を経て、 平成期 2 ちゃんねる発 (クネクネ·ヤマノケ·八尺様) のネット怪谈へ。 民俗学者·常光徹『学校の怪談』 (1990) や木原浩勝『都市の穴』 (2003) で学術整理された「現代怪異」 のラインナップ。

徹底解説

観念運動効果と「偽怪」 の意義。 species 通覧で円了の分類に触れたが、 ここではその科学的解明の意義を深掘りする。 観念運動効果(ideomotor effect)は、 1852年にイギリスの生理学者ウィリアム·カーペンターが命名した現象で、 ヒトが自覚なしに筋肉を微細に動かしてしまう不随意運動を指す。 テーブル·ターニング、 ダウジング、 ウィジャ盤、 そしてコックリさん ── これらは全て同じ原理で硬貨や指針が動く。 円了は明治期の日本でこの欧米最新理論を独自に検証し、 「妖怪は科学で説明できる」 ことを示した点で、 戦前日本の啓蒙的合理主義の代表的事例となった。 コックリさんの不思議は「物理的不思議」 ではなく「無意識という心理的不思議」 へと移し替えられた。

「狐狗狸」 三獣の選択。 「こっくり」 という音にどんな漢字を当てるかは恣意的選択だが、 「狐·狗·狸」 の三獣が選ばれた背景には日本の動物霊信仰の系譜がある。 狐は稲荷信仰·玉藻前等で人を化かす能力の代表、 狸は変化·腹鼓·分福茶釜等で同じく化けの名手、 狗 (犬) は犬神·御犬様等で土俗的に憑霊の媒介となる動物として知られる。 三獣の合成は江戸期以来の動物変化譚の三大代表を一括召喚するという発想で、 1884年下田起源説の異質性 (西洋テーブル·ターニング) を、 日本の伝統的霊観念で包み直した知的工夫の産物である。

学校空間における呼出儀礼の継承。 1970年代の児童ブーム以降、 コックリさんは小学校·中学校の休み時間や放課後の重要な遊戯となった。 民俗学者宮田登は『妖怪の民俗学』 (岩波書店、 1985) で、 戦後日本の学校が新しい「呼出儀礼の場」 となったと指摘する。 コックリさん (1970代-) → 花子さん (1980代-) → 八尺様 (2008-)。 これらは全て「学校空間で霊を呼び出す/封じる」 という共通構造を持ち、 平安期以来の呪術儀礼 (丑の刻参り·尊勝陀羅尼の唱誦等) が世俗化·遊戯化された現代版と読める。

禁止令と「正しい終わり方」 の伝承。 1970年代後半から80年代にかけて、 多くの学校でコックリさん禁止令が出された。 これは児童の異常行動 (集団ヒステリー·過呼吸·トランス状態) の頻発に対応するもので、 観念運動効果が集団心理と結合した時の効果を示す事例である。 それと並行して「正しい終わり方」 の伝承が児童間で精密化した ── 「ありがとうございました」 と全員で唱える、 硬貨を鳥居に戻す、 紙を破って捨てるか焼く、 等。 これらの儀礼的手順は中世以来の呪詛解除作法 (反閇·散米·散塩) と構造的に類似しており、 現代の児童が無自覚に古典呪術儀礼を再演している事例として民俗学的に注目される。

漫画·アニメでの再造形。 つのだじろう『うしろの百太郎』 (1973-1980) 以降、 コックリさんは漫画·アニメで反復登場する定番モチーフとなった。 1995年東宝『学校の怪談 2』 (平山秀幸監督) でも重要な要素として登場し、 2012年TVアニメ『妖狐×僕SS』 では主人公の血筋にコックリさんが組み込まれた。 近年では『繰繰れ! コックリさん』 (遠藤ミドリ作、 スクウェア·エニックス『月刊 G ファンタジー』 2011-2016連載、 2014年 TVアニメ化) のように、 コックリさんを擬人化したコメディ漫画も大ヒットしている。 明治の科学的解明と現代のサブカル受容が同じ怪を媒介に交差する稀有な事例となっている。

2010年代の現代版コックリさん。 2015年頃には中高生のあいだで現代版コックリさんが再流行した。 これはスマートフォンアプリで五十音盤を表示し、 友人と複数の指を画面に置いて動かす形式で、 一部学校では生徒が大声を上げたり奇声を発する事例が報じられ、 指導に踏み切った学校が現れた。 140年前に伊豆下田で漂着船員が見せたテーブル·ターニングが、 形を変えながら現代日本の児童·中高生文化に脈々と継承されている ── これがコックリさんの最も特異な点である。

妖怪設定

この区画は物語を楽しむための当サイト独自の設定です。史実・考証ではありません。

性格
呼ばれれば答えを返し、 正しい終わり方を欠くと憑く合成動物霊
相性
正規の作法 (鳥居·五十音·終了の唱句) を守る者と相和、 無作法な召喚に祟りを返す
能力・特技
硬貨や指を動かして問いに答える (観念運動効果)「狐·狗·狸」 三獣の合成神格として現れる正規の終了作法を欠くと召喚者に憑依する鳥居·五十音表·『はい/いいえ』 の符号体系を媒介に意思を示す学校·家庭の遊戯空間に滞留しやすい
弱点
正しい終わり方 (硬貨を鳥居に戻し『お帰りください』 と唱える、 紙を焼く)、 神仏祈祷
生息地
学校の教室·休み時間の机、 家庭の和室、 中高生のスマートフォン画面

狐·狗·狸の合成神·コックリさんについてさらに詳しい情報や診断結果については、こちらをご覧ください。

出典・参考文献

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  1. 妖怪学講義 / 妖怪玄談井上円了(哲学館 (現·東洋大学), 明治期 (1893-1894 講義、 1900 年代著作刊行)) [学術書]明治期の哲学者·東洋大学創立者井上円了が妖怪を科学的に分類·解明した記念碑的著作群。 コックリさんを「偽怪」 (人為的) として観念運動効果で説明、 1884 年伊豆下田起源説の所伝を記録。
  2. こっくりさんの秘密中岡俊哉(二見書房, 1974) [オカルト書]1970 年代児童コックリさんブームの中核となったオカルト作家の大ベストセラー。 つのだじろう『うしろの百太郎』 と並んで児童間流行を加速、 全国の学校で禁止令が出る社会現象を生んだ。 2024 年に 50 年ぶり復刻版が刊行された。
  3. 妖狐×僕SS (いぬぼくシークレットサービス)藤原ここあ(スクウェア·エニックス『月刊ガンガン JOKER』 / TV アニメ制作ディオメディア, 2009-2014 連載 / 2012 年 TV アニメ放送) [漫画·アニメ作品]ガンガン JOKER 創刊号 (2009 年 5 月号) から 2014 年 3 月号まで連載、 単行本全 11 巻·累計 450 万部超。 主人公の血筋にコックリさんが組み込まれた現代妖怪漫画。 2012 年 1-3 月 TV アニメ化。

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