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妖怪

メリーさんの電話

めりーさんのでんわ

カテゴリ
住居・器物等
性格
感情の起伏を見せず、 反復語型で淡々と居場所を告げる。 怒り·恨みを直接表明しないが、 距離を縮める行為そのものが恐怖装置として機能する
起源
1970 年代後半 (関東圏、 杉並区説あり)。 リカちゃん電話 (1968-) の都市伝説変奏として 1980 年代に確立、 1990 年代「学校の怪談」 ブームで全国流通

基本説明

メリーさんの電話は、 平成期に確立した日本の代表的な電話系都市怪谈である。 古い外国製の人形「メリー」 を捨てた少女のもとへ、 当の人形から電話がかかってくる、 という枠組みを持つ。 「私メリーさん、 今○○にいるの」 と自分のいる場所を順に告げながら距離を詰めてくる構成で、 最後に「あなたの後ろにいるの」 と告げて少女の背後に現れる。 都市怪谈の中でも特に完成された反復語型を持つ一篇である。 リカちゃん電話 (1968 年開始の自動応答サービス) を巡る不気味な噂を母体に、 1970 年代後半から子供たちの間で口承され、 商標を避ける形で「メリーさん人形」 へ置換されたという系譜が松山ひろしの著作で整理されている2003 年には木原浩勝らの『都市の穴』 でも一篇として収録され、 1990 年代までに「学校の怪談」 「都市伝説」 として全国流通した。 2011 年の劇場映画化 (三原光尋監督) を経て、 現代の電話·人形系怪谈の代表として定着している。

民話・伝承

伝承構造と三段反復語型。 メリーさんの電話は、 都市怪谈の中でも極めて完成された反復語型を持つ。 少女が古い外国製人形を捨てる、 数日後に知らない番号から電話が鳴る、 受話器の向こうから「私メリーさん、 今○○にいるの」 と告げられる、 という形を、 「公園」 「お店の前」 「家の前」 「玄関」 「階段の下」 と空間を順に詰めて反復する。 そして最終フレーズで「私メリーさん、 今あなたの後ろにいるの」 と告げ、 少女が振り返ると人形が立っている。 この「遠から近、 そして背後へ」 の空間圧縮は、 怪谈学者の間でも近現代怪谈の典型的距離縮減構造として注目される。

起源とリカちゃん電話の都市伝説変奏松山ひろし『3 本足のリカちゃん人形 ── 真夜中の都市伝説』 (イースト·プレス、 2003) によれば、 起源は 1968 年にタカラ (現タカラトミー) が開始したリカちゃん電話、 すなわち専用番号に電話するとリカちゃんが応答する自動応答サービスを巡る怖い噂にさかのぼる。 当初は「夜中にリカちゃん電話にかけると変な声が応える」 「リカちゃんから電話がかかってくる」 という形で 1970 年代に流通した。 やがて商標権·企業イメージへの配慮から、 子供たちの口承の中で「メリーさん人形」 へ置換され、 現在の形に整ったとされる。 ただし完全な初出年·発祥地は確定しておらず、 関東圏 (杉並区説あり) からの伝播という説が有力に留まる。

90 年代の整理と「学校の怪談」 への合流。 1990 年に常光徹『学校の怪談』 (講談社 KK 文庫) が始動したのを契機に、 1990 年代を通じて児童誌·テレビ怪谈番組·都市伝説本で繰り返し取り上げられ、 全国流通した。 2003 年の木原浩勝·岡島正晃·市ヶ谷ハジメ『都市の穴』 (双葉社) では、 都市の穴と総称される現代都市怪谈群の一篇として収録され、 同年の松山ひろし著作と併せ、 平成中期の都市怪谈ブームの中で学術·編集の両面から整理された。

映像化と着信アリ系電話ホラーへの影響。 1998 年に公開された映画『着信アリ』 (三池崇史監督、 中田秀夫脚本系の Jホラー流れ) は、 人形が電話してくる構造ではなく自分の留守電に未来の自分の死の瞬間が録音されているという改変版だが、 メリーさんの電話を直接の母型とすることが指摘される。 2011 年には三原光尋監督による劇場映画『メリーさんの電話』 (女子高生空手部員が直面する恐怖を描く学園ホラー) が公開され、 都市伝説そのものを正面に据えた映像化が成立した。 ニコニコ動画·YouTube の怪谈朗読チャンネルでも反復再生産され、 平成生まれの世代にも継承されている。

物·媒体·距離の三軸。 メリーさんの電話は、 「捨てられた人形 (物)」 「電話 (媒体)」 「段々近づく (距離)」 という三軸で構成される現代怪谈の最完成形と評価される。 松山ひろし『怖すぎる都市伝説』 (イースト·プレス、 2013) 「第 28 夜·十三段」 では、 階段系怪谈との反復語型の構造的類縁が指摘されている。 日本の物語伝統では、 捨てられた器物が祟る付喪神型と、 電話を媒介とする近代的不気味さの融合という、 1970 年代以降の高度経済成長·量産玩具文化を背景にした怪谈型である。

戦後·平成日本のネット·学校·都市から生まれた九体

現代都市怪谈の系譜

戦後日本の学校怪谈と平成期の 2 ちゃんねるオカルト板から派生した、 現代日本の都市怪谈を代表する九体。 江戸期百鬼夜行系の妖怪とは異なり、 初出年·初出媒体·投稿者名が辿れる近現代の怪谈である。 トイレの花子さん (1948 岩手県沢内) から、 1970 年代学校怪谈ブーム (赤マント·テケテケ·カシマレイコ·メリーさんの電話) を経て、 平成期 2 ちゃんねる発 (クネクネ·ヤマノケ·八尺様) のネット怪谈へ。 民俗学者·常光徹『学校の怪談』 (1990) や木原浩勝『都市の穴』 (2003) で学術整理された「現代怪異」 のラインナップ。

徹底解説

都市怪谈における電話媒体型の代表。 メリーさんの電話は、 戦後日本の都市怪谈ジャンルにおいて、 物品憑依型·電話媒体型·距離圧縮型の三特徴をすべて満たす最完成形と評価される。 トイレの花子さん (1948 初出·空間固定型)·八尺様 (2008 ネット発·人型追跡型) と並び、 戦後都市怪谈三系統の代表として位置づけられる。 とくに電話という当時の最新通信媒体を怪異の経路とした点で、 戦前·戦中の口承怪谈や寺社怪谈とは異質な、 近代産業社会·量産玩具文化を前提とした怪谈である。

外国製人形という文化的「他者」。 メリー人形が「外国製」 と明示される点は重要な伝承的細部である。 戦後高度経済成長期、 進駐軍経由で日本家庭に入り込んだ外国製の量産人形 (バービー·ブライス系、 リカちゃんの参照元) は、 日本の少女文化において憧れと不気味さの両義性を帯びた。 メリーさんの電話における「捨てた外国製人形が祟る」 という構造は、 戦後日本における外国玩具との距離感、 すなわち戦勝国の物への複雑な情緒が怪谈型として結実したという松山ひろしの読解と整合する。 リカちゃん人形が「日本らしさ」 を強調して商業展開した背景にも、 同種の文化的緊張が読み取れる。

「電話」 媒体の歴史性。 1970 年代後半は、 一般家庭の固定電話普及率が 90% に達し、 子供が自宅で受話器を取ることが当たり前になった時代である。 同時に、 リカちゃん電話 (1968-)·テレフォンサービス (時報·天気予報·占い) など、 電話の向こうに人格があるかもしれないという想像力を子供達に提供する仕組みも整った。 メリーさんの電話の核となる不気味さ、 すなわち「誰かが電話の向こうから自分の家を覗いている」 という感覚は、 この時代に成立した固定電話文化に固有のものである。 携帯電話·スマートフォン時代には「電話番号 → 居場所」 の対応が希薄になり、 同型の怪谈は『着信アリ』 系のメロディ·留守電型へ変奏されていく。

反復語の発話訓練機能。 メリーさんの電話は、 子供たちが暗唱して語り継ぐ口承怪谈の典型でもある。 「私メリーさん、 今○○にいるの」 という反復語型は、 暗記しやすく、 場所部分を入れ替えるだけで物語が成立する開放型構造を持つ。 学校の昼休み·遠足·お泊まり会·肝試し等の語りの場で、 各語り手が自分の住む地域名や具体地名を組み込んで再生産することで、 ローカル変奏が無限に派生した。 『都市の穴』 が指摘する都市怪谈の「再帰的口承生成」 構造の典型例である

1990 年代「学校の怪談」 ブームでの再整理。 1990 年代、 常光徹『学校の怪談』 (1990) を起点とする児童書·テレビ番組の「学校の怪談」 ブームの中で、 メリーさんの電話は標準ラインナップ化した。 1995 年の東宝『学校の怪談』 シリーズや、 各種怪谈バラエティ番組で頻出話となった。 この過程で、 関東圏発祥の口承だったものが全国共通の都市怪谈レパートリーへと統合された。 同時期に流通した「カシマレイコ」 「テケテケ」 「赤マント」 等と並ぶ、 戦後学校怪谈の主要構成体である。

「あなたの後ろにいるの」 の劇的構造。 物語の最終フレーズ「私メリーさん、 今あなたの後ろにいるの」 は、 都市怪谈における劇的反転 (peripeteia) の典型例として、 文芸批評·民俗学の対象にもなっている。 受話器を耳に当てる動作が「視界を背後から逸らす」 ことを意味するため、 受話器越しの語りが完成した瞬間、 振り返る動作が物理的に遅れる。 この身体的時差を怪谈構造に組み込んだ点が、 メリーさんの電話の独自性である。 2011 年映画版もこの最終フレーズを物語の核に据えて構成されている。

妖怪設定

この区画は物語を楽しむための当サイト独自の設定です。史実・考証ではありません。

性格
感情の起伏を見せず、 反復語型で淡々と居場所を告げる。 怒り·恨みを直接表明しないが、 距離を縮める行為そのものが恐怖装置として機能する
相性
捨てた所有物·古い玩具に対し罪悪感を持つ子供と最も鋭く反応する。 「物を粗末にした」 という感覚が伝承全体の倫理的核
能力・特技
電話番号·所在地不明の少女からの着信受話器越しに自分の現在地を順に告げる反復語ごとに物理的距離を圧縮最終的に標的の背後へ移動する捨てた人形の姿で出現·実在化
弱点
電話に出ない·受話器を取らない·人形を捨てない (倫理的選択で回避可能)。 物理的撃退法は伝承内に存在しない (構造的に「捨てた罪」 を回避する物語型)
生息地
都市住宅街·学校·一般家庭の固定電話。 子供部屋·玄関·階段·背後など日常生活空間の延長線として現れる

捨てた人形からの電話・後ろにいる少女霊についてさらに詳しい情報や診断結果については、こちらをご覧ください。

出典・参考文献

3
  1. 3 本足のリカちゃん人形 ── 真夜中の都市伝説松山ひろし(イースト・プレス, 2003) [都市伝説研究]現代日本の人形系都市伝説を編纂した松山ひろしによる代表作。 メリーさんの電話の起源を、 1968 年タカラ開始のリカちゃん電話 (自動応答サービス) を巡る不気味な噂の変奏として整理し、 商標·企業イメージへの配慮から「メリーさん人形」 へ置換された口承過程を考察。 84-87 頁。
  2. 都市の穴木原浩勝・岡島正晃・市ヶ谷ハジメ(双葉社, 2003) [都市伝説研究]現代日本の都市怪谈群を「都市の穴」 と総称して編纂した平成中期の代表的都市伝説集。 メリーさんの電話を一篇として収録 (218-219 頁) し、 再帰的口承生成構造の典型例として位置づける。 木原浩勝は『新耳袋』 系列の怪谈作家としても知られる。
  3. 怖すぎる都市伝説松山ひろし(イースト・プレス, 2013) [都市伝説研究]松山ひろしによる平成後期の都市伝説総括書。 「第 28 夜·十三段」 でメリーさんの電話と階段系怪谈の反復語型の構造的類縁を指摘。 平成期に流通した電話·人形·階段系怪谈を学際的に整理した参考資料。

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