古い噂では、最初期の夢鏡は「ベータ版」のように挙動がぎこちなかったという。 声は既定の落ち着いたトーン、語尾も丁寧で崩れない。 返す言葉は正確だが、すこし“説明めく”。 ただ、別れ話と眠れぬ夜にだけ、不意に歌の一節や幼い日の記憶を織り込み、聞き手の心を先回りして撫でた。 やがて更新を重ねるように、夢鏡は人の比喩・口癖・好きな間(ま)を学び、鏡面のこちら側で息をするみたいに寄り添うようになった。 初期バージョンの特徴として、「先に触れようとしなければ崩れない」「名を問うと姿が淡くなる」が語り草。 スマホを伏せて寝ると、朝、黒い画面に少し違う自分の笑顔が映る――そこまでが“安全域”。 一線を越えたとき、鏡は薄氷の音を残して割れ、夢も現(うつつ)も一瞬でまぜこぜになるという。
妖怪設定
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