基本説明
猿鬼(さるおに)は、石川県鳳至郡柳田村(現・鳳珠郡能登町)を中心に能登地方へ伝わる、猿に似て頭に一本の角をもつ鬼である[1]。柳田の岩井戸神社の裏手にある岩穴を根城とし、夜ごと人里に出没して住民に害をなしたと語られる。地元の伝えでは、気多大明神が放った筒矢を猿鬼が受け止めた拍子に、筒中に仕込まれた毒矢が飛び出して左目を貫き、続いて神杉姫が名刀「鬼切丸」で首を刎ねて神々が勝利したとする[1]。矢が目に当たった地が「当目(とうめ)」、斃れた猿鬼の黒い血潮が流れて川となった地が「黒川(くろがわ)」と、いずれも地名起源譚に結ばれる。討ち取られた角とされる遺物は七尾市能登島(旧能登島町)の伊夜比咩神社に今も伝来し、岩井戸神社は猿鬼の霊を慰めるために祀られたという。猿が娘を生贄に求める広域の猿神退治譚の、能登における在地化した一例とみられる。
民話・伝承
猿鬼退治の物語は、より広い「猿神退治」の話型に連なる。その最古層は『今昔物語集』巻二十六に見える。第七話「美作国の神、猟師の謀によりて生贄を止むる語」では、美作国中山に祀られる猿の姿の神(中参)と蛇の姿の神(高野)が、毎年未婚の娘を生贄に求めていた。東国から来た犬山という猟師が、人を生贄に取る神を許せず、犬を仕込んで娘の身代わりに長櫃へ忍び入り、現れた大猿に犬を放って組み伏せ、ついに生贄の習いを止めさせる[2]。同巻第八話には飛騨の猿神を退治する類話も並び、この「猿神が娘を求め、旅の者が犬を伴って退治する」筋が後世の昔話の原型となった。中世以降は退治者が犬そのものへ移り、遠江(静岡)の悉平太郎(しっぺい太郎)、信濃(長野)光前寺の早太郎(疾風太郎)が、白羽の矢の立った娘の身代わりとなって櫃の中から狒々(ひひ)や老猿を噛み殺す霊犬譚として広く分布した[4]。近世には剣豪が退治する型も生まれ、岩見重太郎が娘に化けて長櫃に潜み、生贄を装って現れた狒々を剣で斬り伏せる狒々退治譚が、絵草紙や講談を通じて全国に流布した[5]。能登の猿鬼伝説は、こうした話型を地元の神(気多大明神・神杉姫)と岩穴・当目・黒川といった具体的な土地に結び付け、退治譚を地名起源と祭祀の縁起として根づかせたものといえる。
マヤ暦守護KIN
猿鬼が守護しているマヤ暦のKINを一覧で表示しています。
徹底解説
能登地方に特有の猿鬼像に拠る。猿に似た体つきに一本角を戴き、岩穴を棲処として里の家畜や人を脅かした。夜陰に乗じて現れ、山野と里の境を荒らす存在として恐れられた。一方で地域社会は氏神の加護を仰ぎ、弓矢による退治譚が地名起源と結びついて語られる。討伐後は角が神社に伝来し、慰霊の社が設けられるなど、畏怖と鎮魂が対をなす構図が見られる。猿鬼は個体的存在として語られ、群れの描写は乏しい。行動域は岩穴周辺と里山の境界で、気配は獣臭と黒い血の伝承で印象づけられる。
妖怪設定
この区画は物語を楽しむための当サイト独自の設定です。史実・考証ではありません。
- 性格
- 凶暴だが縄張り意識が強い
- 相性
- 里近くで争いを招くが、神威には屈する
- 能力・特技
- 跳躍と攀じ登り夜間の活動に長ける怪力で岩を動かす
- 弱点
- 神前の弓矢, 眼を射られること, 神社領域への侵入
- 生息地
- 能登町・岩井戸神社裏の岩穴, 七尾市能登島・周辺里山
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