陰摩羅鬼
おんもらき
屍気より生ずる怪鳥・陰摩羅鬼
陰摩羅鬼(おんもらき)は、新しい死体から立ちのぼる気が変じて生ずるとされる鳥形の妖怪で、その典拠は中国の古書に遡る。鳥山石燕『今昔画図続百鬼』は雲気のたなびく堂内に羽を広げた怪鳥としてこれを描き、姿は鶴のごとく、全身黒く、眼は灯火のように赤く輝き、羽を震わせて甲高く鳴くと説く。石燕は仏典(大蔵経)に「新しき屍の気、陰摩羅鬼となる」と見える旨を踏まえ、死してまもない亡骸の気が凝って形をとったものと位置づけた。それゆえこの怪は、十分な供養を受けられぬ屍や、読経を怠った僧のもとに現れるとされ、寺院における死者供養と戒律の弛みを戒める象徴として理解された。名の由来には、仏道修行を妨げる魔物「摩羅(魔羅)」に「陰」「鬼」の字を添えて鬼魔の意を強めたとする説と、障害を意味する「陰摩」に「羅刹鬼」が混じったとする説とがあり、いずれも仏教的な悪鬼の連想を背負う。死と供養をめぐる仏教的観念が、鳥という具体的な形象へと結晶した怪異である。