生霊
いきりょう
嫉妬離魂の生霊
生霊は、生きている人間の魂が肉体を離れてさまよい出る在り様、またその遊離した霊が他者に取り憑く現象をいう。死者の霊である死霊に対する語で、強い恨み・嫉妬・恋慕、あるいは臨終間際の念といった激しい情動が引き金となり、本人の意識を超えて魂が抜け出し、対象に病や災いをもたらすと信じられた。憑かれた側が床に臥して衰える一方、抜けた当人もまた茫然と気を失うとされ、加害と自失が同時に起こる点に、死霊とは異なる生霊独特の不気味さがある。 魂が身を離れるという離魂の観念は、自我の影身・影法師として現れる影の病の伝承とも重なる。意図せず情念に駆られて遊離する受動的な形のほか、丑の刻参りのように呪詛の作法を通じて魂を意識的に相手へ差し向ける能動的な形も語られた。平安貴族の物語から近世庶民の俗信、各地の方言伝承に至るまで記録の幅は広く、生者の心の闇がそのまま身を離れて他者を害するという、人の念の恐ろしさを映す観念として受け継がれてきた。