基本説明
鳥山石燕『百器徒然袋』[1](天明4年・1784年)に描かれた鏡の付喪神。古木めいた台に据えられた丸鏡に、舌を出した悪戯っぽい妖しき顔が浮かび出る姿で示される。石燕は中国由来の照魔鏡(しょうまきょう)の説話を踏まえ、もろもろの怪しき物の形を映すという照魔鏡に、映った妖魔の影がそのまま住み着き、やがて鏡そのものが意のままに動き出したのではないか、と夢想の体で記す。すなわち単なる器物ではなく、年を経た鏡が霊性を帯びて化けた付喪神であり、化け物を映し出す鏡であると同時に、自らも化けて動く鏡として理解される。正体を映し出して見破る「照妖鏡」の観念と習合して語られ、後世には百年を経た鏡が変化する付喪神譚の代表例の一つとして紹介された。石燕本の挿画が広く流布の基となり、名は『山海経』の語呂を踏まえた石燕の造語とする説もある、絵姿先行の妖怪である。
民話・伝承
『百器徒然袋』[1]の解説に「照魔鏡(しやうまきやう)と言へるはもろもろの怪しき物の形をうつすよしなれば、その影のうつれるにやとおもひしに、動き出るままに、此のかゞみの妖怪なりと夢の中におもひぬ」とあり、石燕は鏡に宿る妖を夢の体裁で述べる。下敷きとなった照魔鏡は、魔物の正体を暴くとされる中国伝来の伝説上の鏡で、高井蘭山『絵本三国妖婦伝』などには、殷の紂王を惑わせた妲己の正体を照魔鏡が映し出して見破ったとする話が伝わる。石燕の雲外鏡は、この「怪しきものを映す鏡」の観念を裏返し、映された妖の影が鏡に居着いて鏡自体が妖怪化したと発想した点に独創がある。以後、雲外鏡は百年を経た器物が魂を得て化ける付喪神譚の一例に数えられ、鏡面に怪異の相が現れる、あるいは鏡が自ら化けるという伝承類型に配された。ただし具体の地名・人物に結び付く在地の説話は乏しく、版本の挿画を典拠として広まったもので、石燕以前に独立した雲外鏡の伝承があったことを確かめる史料は今のところ見当たらない。鏡が魔を照らし、魔がまた鏡に宿るという反転の発想にこそ、この付喪神の妙味がある。
コレクション収録
この妖怪は以下のコレクションに収録されています:
徹底解説
本バージョンは鳥山石燕の図と文言を基礎に、照魔鏡観念との結び付きを重視する。鏡面には怪の貌が浮かぶが、必ずしも外に現れた妖怪を写すのではなく、鏡そのものに宿った霊が姿を取ると解される。付喪神譚の系譜上、長年用いられた器物が霊性を帯びるという通念に合致し、持ち主の扱い次第で機嫌を変えると語られる場合がある。近世の版本挿図に依拠するため、具体の出没譚や被害談は少なく、夜分に仄暗い座敷で鏡を覗くと異相が映る、という類の一般的怪談枠で伝えられる。後世の狸姿や見世物的能力付与は映画・児童書由来とされ、古典的像とは区別される。
妖怪設定
この区画は物語を楽しむための当サイト独自の設定です。史実・考証ではありません。
- 性格
- 人の目を試すように戯れる
- 相性
- 古道具を粗略にする者と不和
- 能力・特技
- 怪異の相を映し出す鏡面に自らの妖相を顕す長年の使用により霊性を帯びる
- 弱点
- 粗布で曇りを拭われることを嫌う, 粗雑な扱いを受けると沈黙する
- 生息地
- 座敷, 納戸, 道具店の奥
出典・参考文献
1- 1
画図百器徒然袋 — 鳥山石燕((天明4年・付喪神絵本), 1784) [図像資料]石燕最後の妖怪絵本。徒然草もじりの夢仕立てで、ばけの皮衣を上巻に収める。
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