船幽霊ふなゆうれい
沖から呼ばれても、返事はしない
久慈・小袖の沖で、黒髪の女が船べりから静かに水をすくっている。この土地の「なもう霊」は海霧の中から声を掛け、返事や櫂を足掛かりに船を重くするという。レンズ越しに呼ばれても、黙って見返すのが浜の作法だ。
作品を見るこの特殊レンズが捉えたのは、区役所であなたと一緒に順番待ちをする河童や、帰りの電車であなたの肩に寄りかかって居眠りをする狸かもしれない。彼らは、あなたのすぐそばにいる。
船幽霊ふなゆうれい
久慈・小袖の沖で、黒髪の女が船べりから静かに水をすくっている。この土地の「なもう霊」は海霧の中から声を掛け、返事や櫂を足掛かりに船を重くするという。レンズ越しに呼ばれても、黙って見返すのが浜の作法だ。
作品を見る青坊主あおぼうず
朝の住宅街を、青い肌の僧が箒を引いて歩いている。青坊主は一つ目の法師、動物の化身、子どもをさらう影など、土地ごとに姿も素性も違う。地域の清掃当番表には、たぶん名前がない。
作品を見る船幽霊ふなゆうれい
夜明け前の漁港で、濡れた女が柄杓を差し出している。船幽霊は海水を汲み入れて船を沈めるため、底を抜いた柄杓を渡してしのいだという。普通のものしかないなら、今日は出航を見送ったほうがいい。
作品を見る鍾馗しょうき
自分の絵が飾ってあるのを見つけて、ちょっと照れくさそうに隣に立ってみた「鍾馗(しょうき)」さん。 「これ、実物よりちょっと盛ってないか?」なんて鋭い視線でチェック中😂 でも、本人が横に並ぶと魔除けの効果も100倍になりそうですね。 街の平和を守る神様も、自分の写りはやっぱり気になるみたいです。
作品を見る山姥やまんば
杉林の脇で、白髪の老女が杖をつき登山者を待っている。人を喰う鬼婆とも、山の幸や富を授ける山母とも語られる山姥だ。声を掛けるか通り過ぎるかで、この山行の結末が変わる。
作品を見る雲外鏡うんがいきょう
身支度をする男の前で、古鏡には見知らぬ女の顔が浮かんでいる。怪しきものの正体を映す照魔鏡に、妖の影そのものが住み着いたという雲外鏡だ。曇りを拭っても、その像だけは消えない。
作品を見る傀儡子くぐつし
古い町並みの軒先で、旅装の芸人が木偶の糸を静かに整えている。傀儡子は住まいを定めず、祭や市で人形舞や雑芸を見せて諸国を巡った人々だ。通りすがりの観客へ、人形の目だけが先に挨拶をした。
作品を見る一寸法師いっすんぼうし
山あいの流れを、小さな若者がお椀の舟で下っていく。針の刀一本で都へ出た一寸法師なら、この程度の急流は通勤路のうちだ。見た目は昔話の主人公でも、出世のための策はかなり大胆だった。
作品を見る目競めくらべ
雨の住宅街を、頭だけが髑髏の男がこちらへ歩いてくる。『平家物語』では無数の髑髏が一つに集まり、平清盛と睨み合ったという。信号が変わるまで、先に瞬きをしないこと。
作品を見る狂骨きょうこつ
古い共同井戸から、白髪の骸骨が桶ごとゆっくり上がってきた。狂骨は井中に捨てられた白骨が怨みを帯びた姿として描かれる。水を汲みに来ただけなら、目を合わせず蓋を戻したい。
作品を見る偽汽車にせきしゃ
山あいの線路へ蒸気機関車が迫り、その手前で一匹の狢が立ち尽くしている。明治の鉄路では、狐や狸が汽車に化けて本物と向かい合う怪談が各地に生まれた。時刻表にない列車ほど、正面から来る。
作品を見る蛇王姫じゃおうひめ
水辺で涼みながら、お肌のメンテナンス。 鱗のツヤを保つには、やっぱりこまめな保湿が一番ですね。 「蛇王姫」なんて呼ばれてるけど、中身は美容が気になる普通の女の子。 たまに頭の上の相棒(ヘビ)が勝手に動き出すのが悩みだけど、まあ、仲良くやってます。 今日も一日、穏やかに過ごせますように。
作品を見るしやうけらしょうけら
雨上がりの路地で、長い髪の影が家々の窓を順に覗き込んでいる。庚申の夜に人の眠りと罪を見張るとされた、しやうけらかもしれない。カーテンを閉めても、今夜の監視は終わらない。
作品を見るアイヌカイセイあいぬかいせい
使われなくなった和室に、ぼろぼろの衣をまとった影が座り込んでいる。古い家で眠る者の胸や首にのしかかるというアイヌカイセイだ。目を覚ましたときの息苦しさを、寝具のせいだけにはできない。
作品を見る白沢はくたく
境内に座る白い獣は、二本の角を立て、通り過ぎる人をじっと見送っている。白沢は天下の妖異と病災を知り、その正体と防ぎ方を人に教えた瑞獣だ。困りごとを話すなら、検索欄よりこちらのほうが詳しいかもしれない。
作品を見る蜃気楼しんきろう
薄暮の浜で、大きな貝を頭に載せた影が沖を眺めている。古くは蜃という大蛤が気を吐き、海上に楼閣を浮かべると考えられた。レンズの奥に映った街は、地図を開くころにはもう消えていた。
作品を見る天降女子あもろうなぐ
奄美の坂道で、白い包みを背負った女が柄杓を下げて振り返る。晴れていたはずなのに、彼女の周りだけ細い雨が落ちている。差し出された水を飲むなら、柄の支え方だけは間違えないほうがいい。
作品を見る波小僧なみこぞう
夕暮れの遠州灘で、青い少年が沖の音に振り返る。波小僧が聞き分ける海鳴りは、方角によって雨か晴れかを告げるという。天気アプリより古い予報は、今夜も海から届く。
作品を見る酒呑童子しゅてんどうじ
山の酒場で、角をもつ男が徳利を片手に夜を延ばしている。酒呑童子は大江山に鬼を集めた頭領で、源頼光たちの毒酒に酔わされ討たれた。以来「知らない山伏と飲まない」は守っていても、酒を控える気だけはないらしい。
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