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夏の怪談
妖怪カード

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夏の怪談

妖怪と巡る盆の夜

蜷川実花・川内倫子・篠山紀信の系譜を引く、現代日本の夏祭り写真。Cinestill 800Tの夜景発色、提灯の暖橙、まだ青みの残る西の空。屋台の煙、浴衣の藍、金魚の朱。賑やかな宵宮の片隅に、人ごみと同じ温度で佇む妖怪。

平維茂 — 夏の怪談

平維茂たいらのこれもち

祭りの中の余五将軍

提灯のにじむ参道で、青い装束の男が腰の刀に手を置く。烏帽子の紐が頬に落ち、振り向いた目だけが人波から離れている。 平維茂は信濃戸隠の鬼女紅葉を討った武将として語られる。神仏から剣を授かる英雄も、その前夜はひとり静かだ。

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陰摩羅鬼 — 夏の怪談

陰摩羅鬼おんもらき

瓦屋根の上の赤い眼

瓦屋根の端に、黒い鳥が細い脚で止まっている。長い嘴と乱れた羽、ひとつ赤く光る眼が、下の提灯の丸い灯を見下ろす。 陰摩羅鬼は新しい死体の気から生まれる鳥とされ、供養の滞りに現れる。賑わいの上で、寺の屋根だけが冷えて見える。

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牛鬼 — 夏の怪談

牛鬼うしおに

水辺に立つ牛鬼の胸

水辺の広場に、牛の頭をした巨体が立つ。濡れた黒い胸と大きな角が提灯を受け、見上げる人の頭が手前で小さく沈む。 牛鬼は人を喰らう獰猛な怪であり、祭礼では魔を払う先導役にもなる。恐ろしさが守りに変わる境目がここにある。

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悪鬼 — 夏の怪談

悪鬼あっき

提灯街に立つ黒い悪鬼

提灯の列を背に、黒く濡れた肌の鬼が人波を見下ろす。二本の角と尖った耳、裂けた布の肩に、祭りの朱い光が貼りついている。 悪鬼は病や災いを呼ぶ鬼たちの総名として恐れられた。調伏されるはずの影が、今夜は参道の真ん中に立っている。

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磯撫で — 夏の怪談

磯撫でいそなで

港の灯を撫でる黒い背

港の水面に屋台の灯が縦に揺れ、岸壁のすぐ下を黒い背が通る。濡れた棘が列をなし、遠い明かりだけが水ににじむ。 磯撫ではサメに似た怪魚で、尾の細かな針で船上の人をさらうという。海面を撫でる静けさほど、手遅れに近い。

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紅葉狩 — 夏の怪談

紅葉狩もみじがり

紅葉の扇からのぞく角

木の幹の横で、赤い打掛の女が紅葉柄の扇を口元に立てる。頭には黒い角が一本、祭りの提灯と人波の間で目だけがまっすぐ光る。 紅葉狩の物語では、山遊びの美女たちはやがて鬼女の本性を現す。華やかな袖の奥で、宴は退治の場へ裏返る。

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おとろし — 夏の怪談

おとろしおとろし

鳥居の上の毛一杯の影

朱の鳥居の笠木に、膝を抱くような影が乗っている。顔は長い黒髪に埋もれ、提灯の明かりだけが下から赤く木肌を照らす。 おとろしは絵巻で鳥居の上に描かれた毛むくじゃらの怪。性質は不詳のまま、名前の響きだけが夜風に残る。

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マジムン — 夏の怪談

マジムンまじむん

石垣路地のマジムン

石垣沿いの細い道に、濡れた髪の女が立っている。背後の提灯は遠く、荒い石の凹凸と濃い植物の影が夜を狭くしている。 マジムンは沖縄や奄美で語られる魔物の総称で、死霊や動物、古い器物にもその名が付く。道で股をくぐられるな、という戒めだけが生々しい。

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黄泉醜女 — 夏の怪談

黄泉醜女よもつしこめ

濡れ藪の奥の黄泉醜女

湿った森の葉のすき間から、泥に汚れた女の顔がこちらを見ている。黒髪は頬に張りつき、奥の提灯だけが赤くぼやける。 黄泉醜女は、黄泉国から逃げる伊邪那岐を追った冥府の女鬼神。葡萄や筍で足止めされた追手が、まだ藪の向こうに残っている。

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七人ミサキ — 夏の怪談

七人ミサキしちにんみさき

青霧の道に七つの影

濡れた道の先、青い霧の中に七つの人影が等間隔で並ぶ。足元には水たまりが黒く光り、遠い岸の灯だけがかすかに残る。 七人ミサキは必ず七人で現れる死霊の群れ。一人を取り殺すと一霊が抜け、代わりにその者が列へ入る。出会えば高熱に倒れ、死へ引かれるという。

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鈴鹿御前 — 夏の怪談

鈴鹿御前すずかごぜん

鈴鹿の石段に立つ黒衣

神社の石段に、黒い烏帽子と長い黒衣の女が横顔で立つ。森は夕闇に沈み、鳥居と灯籠の明かりだけが背後で低く光る。 鈴鹿御前は鈴鹿峠に宿る女神であり、鬼女や盗賊の記憶もまとう存在。都と東国の境で、旅人を守る顔と試す顔を同じ袖に隠している。

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清姫 — 夏の怪談

清姫きよひめ

提灯下の濡れた蛇衣

赤提灯の列の下、濡れた黒髪の女が肩越しに振り返る。鱗のように光る赤い衣へ、店先の橙色が熱を帯びて映っている。 清姫は約束を破られたと思い定め、蛇身となって道成寺の鐘へ巻きついた女。祭りの明るさの中でも、その眼だけは川を越えてきたまま。

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アカマタ・クロマタ — 夏の怪談

アカマタ・クロマタあかまたくろまた

濡れ葉の赤い来訪神

濡れた緑の蔓草が全身を覆い、赤い面だけが闇の中に浮く。南の路地の奥には松明の火があり、葉先に雨の光が残っている。 アカマタ・クロマタは八重山の豊年祭に来る草装束の神。地底の他界から現れるとされる姿は、本来、許された者だけが知る。

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海坊主 — 夏の怪談

海坊主うみぼうず

港をのぞく黒い坊主頭

薄暮の港に灯籠が浮き、浴衣姿の子どもたちの前で、黒く濡れた坊主頭が海から肩まで突き出す。掌の中の丸い灯だけが温かい。 海坊主は夜の海面を盛り上げ、船の行く手をふさぐと漁師に恐れられた。祭りの灯りを覗き込む静けさほど、底が知れない。

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猫又 — 夏の怪談

猫又ねこまた

金魚袋を提げた古猫

夕暮れの細い路地、木壁の前で三毛の古猫が二本足で立つ。水玉の手ぬぐいを巻き、片手には金魚袋。背後の祭り灯りがぼけている。 長く飼われた猫は尾を二つに裂き、家の内外をまたぐ猫又になるという。魚を一匹持ち帰るだけの顔で、こちらを測っている。

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両面宿儺 — 夏の怪談

両面宿儺りょうめんすくな

石段に座る両面宿儺

夕焼けの石段に、前後ふたつの顔を持つ男が腰を下ろしている。角のある顔は町を向き、背の顔は別の方へ、手には丸い団扇がある。 両面宿儺は『日本書紀』では飛騨のまつろわぬ鬼神、土地では龍退治の英雄とも伝わる。祭りの灯を浴びる背中には、どちらの名も消えていない。

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影女 — 夏の怪談

影女かげおんな

障子に浮く影女の横顔

明るい障子一枚に、横顔の女影がくっきり映る。外の路地では提灯が連なり、濡れた石畳の奥を祭りの人影がぼんやり流れている。 影女は物の怪のいる家で、月明かりに女の影だけが障子へ現れる怪。実体を見せないからこそ、戸を開ける手前で夜が止まる。

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雨女 — 夏の怪談

雨女あめおんな

濡れ傘の雨女

強い雨の路地で、濡れた和傘の縁から水滴が落ちる。長い黒髪と薄い着物は肌に貼りつき、遠い提灯の光が石畳に滲んでいる。 雨女は雨を呼ぶ女とも、旱魃に恵みをもたらす霊とも語られる。子を攫う怖い話も残り、この一瞬の視線だけでは吉凶を選べない。

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天探女 — 夏の怪談

天探女あめのさぐめ

鳥を見上げる天探女

杉の幹が暗く立つ境内で、白衣に赤い袴の女が空を見上げる。奥の提灯はにぎやかにぼけ、青い空には一羽の黒い鳥が切り抜かれている。 天探女は鳥の声と徴を読み、天若日子へ告げた女神。その言葉が天の使者を討つ方へ事を傾ける。聞き取る力は、時に祭りのざわめきより怖い。

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骨女 — 夏の怪談

骨女ほねおんな

牡丹提灯を持つ骨女

細い路地の青い闇で、白い浴衣の女が牡丹の提灯を手にしている。骨を思わせる髪飾りと、うつむき気味の視線だけが灯りに浮かぶ。 骨女は牡丹燈籠の系譜を引く、美女に見えて実は白骨という逢瀬の怪。花の灯りが近づくほど、恋と死の境目も細くなる。

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七尋女房 — 夏の怪談

七尋女房ななひろにょうぼう

港を見下ろす七尋女房

水際の石の上に、灰色の長衣をまとった巨女が立つ。対岸の家並みと提灯の列は小さく、濡れた水面に夏祭りの橙が揺れている。 七尋女房は出雲、隠岐、伯耆に伝わる背丈や首の長い女。海辺や山道で笑いかけ人を惑わすというが、この距離では笑みか影かも判じにくい。

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倩兮女 — 夏の怪談

倩兮女けらけらおんな

塀の上のけらけら笑い

古びた土塀の上から、長い髪の女がこちらを見下ろす。青い宵空と木立を背に、下からの灯りが頬と赤い口元だけをあたためている。 倩兮女は塀越しに大口でけらけら笑い、人の心を乱す女霊として石燕に描かれた。声は写らないのに、口角だけで道が少し戻りにくい。

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女天狗 — 夏の怪談

女天狗おんなてんぐ

瓦屋根に座る女天狗

暮れた山の稜線と黒い枝を背に、緋の袴と白い薄衣の女が瓦屋根へ腰を下ろす。手前の祭り提灯だけが橙にぼけ、背の黒い翼を浮かせている。 女天狗は霊山にまれに語られる女姿の天狗。化粧や緋袴、翼をまとう像があり、人の灯りの上で黙るほど、山側の夜が濃くなる。

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雪女郎 — 夏の怪談

雪女郎ゆきじょろう

氷旗の前に立つ雪女郎

赤い「氷」の旗のそば、白い衣の女が濡れた屋台前に立つ。足元には冷たい煙がたまり、背後の提灯だけが夏らしい。 山形に伝わる雪女郎は、雪の夜に宿を乞う白い女。月から降りて帰れなくなった姫ともされ、涼しさが寂しさに変わる。

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九千坊 — 夏の怪談

九千坊きゅうせんぼう

橋下に座る河童の長

橋の下の暗い水面で、ぬめった河童が岩に腰を下ろす。頭の皿、甲羅、長い指が、上の祭り灯を鈍く返している。 九千坊は九州の河童九千を率いる長。球磨川から筑後川へ移り、のちに水難を防ぐ水神の眷属となったと伝わる。

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天狐 — 夏の怪談

天狐てんこ

棟に座る九尾天狐

祭りの灯を下に、社の屋根の棟に狐の耳を持つ白衣の姿が座っている。背後の九つの尾は青い夜気に透け、顔は静かに伏せ気味だ。 天狐は千年を経て天に通じるとされた最上位の妖狐。千里を見通す力を持ち、人にみだりに関わらないという距離がある。

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八岐大蛇 — 夏の怪談

八岐大蛇やまたのおろち

夏舞台を見下ろす大蛇

山の黒い稜線から、鱗の首がいくつもせり出している。下の小さな舞台と提灯、人影は、赤い目に見下ろされている。 八岐大蛇は出雲の斐伊川に棲んだ蛇神。八頭八尾の身を須佐之男に斬られ、尾から草薙剣が出たという。

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稲荷神 — 夏の怪談

稲荷神いなりのかみ

朱鳥居に立つ白い神使

朱い鳥居の列の内側、濡れた石畳に白衣の姿が立つ。狐の耳と尾だけが暗がりから浮き、祭りの灯は奥でぼけている。 稲荷は穀物と食物を司る信仰の神。狐は神そのものではなく御使いだが、夜の参道ではその境目も赤く沈む。

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ボゼ — 夏の怪談

ボゼぼぜ

青宵に立つボゼの面

青い夕空の下、赤黒い仮面の大きな目と鼻が迫る。濡れた葉の衣をまとい、手には赤土色の棒が握られている。 悪石島のボゼは盆の終わりに現れる来訪神。人々についた悪霊や穢れを払う役目を負い、祭りの熱気を少し荒くする。

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ヨッカブイ — 夏の怪談

ヨッカブイよっかぶい

石段の麻袋ヨッカブイ

神社の石段脇、シュロの髭と黒い穴の面がこちらを向く。古びた夜着の前では、大きな麻袋が重たく垂れている。 金峰町高橋の水神祭に来るヨッカブイは、ガラッパの化身。子どもを脅かして水難を戒め、無病息災をもたらす。

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