妖怪図鑑

日本の妖怪大百科

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鬼・巨怪
  • 紅葉狩

    紅葉狩

    珍しい

    もみじがり

    戸隠山の鬼女紅葉・紅葉狩

    鬼・巨怪長野県

    室町から江戸にかけての能・浄瑠璃・歌舞伎で定着した鬼女像。紅葉見物を口実に都人風の女房や姫君の一行として現れ、器楽や舞で油断を誘う。酒宴で武士を酔わせるが、夜半、神の加護や霊剣により正体を見破られ、戸隠山中で本性を顕す。名は一般に紅葉とされ、作品により更科姫などの異名も見える。退治譚は武徳の顕彰と山岳の畏れを映し、戸隠信仰や鬼退治譚の語法を継承する。舞台芸能では前場の艶やかな仮の姿と、後場の荒々しい鬼相の対照が特徴。

  • 羅城門の鬼

    羅城門の鬼

    名妖

    らじょうもんのおに

    渡辺綱に腕斬らるる・羅城門鬼

    鬼・巨怪京都府

    羅城門や都の辺境に現れる鬼として武士の武威を際立たせる存在。中世軍記・能楽により舞台や細部が異なる複数の語りが伝わるが、核心は「武者が門(あるいは橋)で鬼と一騎打ちし、腕を落とす」点にある。腕は不浄と霊威の象徴として扱われ、後日の奪還譚と結び付く。茨木童子との混交は近世以降の整理過程で強まり、名や場所の転位が生じたが、総体として都の境域にひそむ異界的脅威を体現する。図像では鉄杖・角・赤黒い肌、乱髪で描かれ、荒天や黒雲の演出が定番。武家譚・能楽・絵巻に根ざした表象が現在まで影響している。

  • 両面宿儺

    両面宿儺

    伝説

    りょうめんすくな

    飛騨の前後二面・両面宿儺

    鬼・巨怪岐阜県

    『日本書紀』の原文は、宿儺の身体をきわめて具体的に刻む。「一體にして兩面あり、面おのおの相背けり。頂合ひて項なし。おのおの手足あり。其れ膝ありて膕踵なし」――胴はひとつ、顔は前後に背を向けて二つ、頭頂で合わさってうなじがなく、手足は各々の側に備わる。素直に読めば手も足も四本ずつ、計八肢の怪異である。ところが在地に残る像容の多くは、ふたつの顔に腕は四本、脚は二本の「二面四臂」で造られる。『新撰美濃志』が日龍峰寺の開基を「両面四臂の異人」と記すのもこの系統で、文献の記述(八肢)と図像の伝統(四臂二脚)が食い違う点は、宿儺像を読むうえで見落とせない。 その図像をひとつの芸術にまで高めたのが円空である。千光寺の両面宿儺坐像は、二面を前後ではなく左右に並べて彫り、一面に忿怒、一面に慈悲をたたえる。忿怒のなかに救いをにじませるこの造形は、宿儺が救世観音や千手観音の化身とされた信仰と響き合う。 実在性をめぐっては慎重な議論が要る。討伐者とされる難波根子武振熊は、本来は神功皇后の段に現れる人物で、仁徳朝の記事に置かれること自体が時代として整合しない。仏教渡来以前のはずの仁徳朝に観音化身譚が接ぐのも後世の構成で、記事全体を編纂段階の造形とみる説が有力である(永藤靖)。その永藤は、宿儺を位山の本来の祭神=中央史書に隠された英雄と読み、宝賀寿男は飛騨国造の祖に系譜づける。身体描写の異形も、八賀晋は飛騨山民の脛当てなどの装備が誤認・誇張されたものと解する。 名の由来にも諸説がある。「スクナ」の音から少彦名命との縁を説く所伝があり、大林太良はスクナビコナを大国主の「第二の自我」とみる比較神話の枠組みを示した。対で現れる神という主題は、ふたつの顔をもつ宿儺の造形とも通い合う。古代の飛騨が匠丁(飛騨工)を中央へ貢いだ特殊な「技の国」であったことと、異能の宿儺像を重ねる見方もあるが、これは史料に直接の連関があるわけではない。確かなのは、ひとつの名が中央と地方で正反対に語り継がれ、その分裂そのものが両面宿儺という存在を形づくっているということである。

  • 笑般若

    笑般若

    珍しい

    わらいはんにゃ

    角牙浮かぶ笑みの鬼・笑般若

    鬼・巨怪長野県

    江戸後期の浮世絵・戯画に見られる笑般若像を基礎にまとめた版本。角・牙・逆立つ髪、見開いた眼と引きつる笑みが核となる。手にするものはしばしば生と死を連想させ、観者に不安を与える意匠が施される。鬼女はもとは人であり、妬心・怨恨・執着が積もって変化すると解される点で、般若面の観念に通じる。具体的な土地伝承の細部は乏しいが、夜席の語り物や絵本で恐れと戒めの象徴として扱われ、女の怨の極相を示す図像として継承された。現地口承では名のみ残る例があり、像容の伝達は主として絵画資料に依拠する。

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