大山祇神 山·海·武の総元神·大山祇神
神格
山岳·海洋·武運を司る総元神格

大山祇神山·海·武の総元神·大山祇神

おおやまつみのかみ

神霊・神格
🏞️ 大山祇神社 (愛媛大三島)·三嶋大社 (静岡三島)·全国 400 社余の三島神社·大山祇神社·全国の山の神祭祀拠点。

詳細説明

大山祇神は『古事記』 上巻所載の山の総元神で、 伊邪那岐·伊邪那美の神生み段で「風神·志那都比古神 → 木神·久久能智神 → 山神·大山津見神 → 野神·鹿屋野比売神 (カヤノヒメ)」 の順で生まれた自然神四柱の中核を成す。 『日本書紀』 神代上 第五段一書七では「大山祇神」 と表記され、 第九段一書二·五·六·八で複数の場面に登場 ── 邇々芸命の結婚譚 (木花咲耶姫·磐長姫の父として)·八俣大蛇退治譚 (足名椎·手名椎を子に持つ)·須佐之男の系譜 (神大市比売を介して大年神·宇迦之御魂神=稲荷の祖) で皇統と国土の根源神話に深く関与する。 國學院大学古典文化学事業の解釈では、 神名の「ツ」 は古代日本語の連体助詞 (=「の」)、 「ミ」 は「神霊」 「神秘な力を持つ存在」 を示す古語 (別解として「見守る主宰者」 説)、 「大」 は美称で、 総合「偉大なる山の神霊」 「山の総元」 を表す。 『古事記』 表記「大山津見神」 と『日本書紀』 表記「大山祇神」 の用字差はあるが同神格。

異称「和多志大神 (ワタシオオカミ)」は『伊予国風土記』 逸文 (『釈日本紀』 所引) に「大山積神は百済国より渡来し、 摂津国御嶋に初めて鎮座、 後に伊予国に遷座、 別名·和多志大神と称す」 とある。 「ワタ」 は海の古語 (綿津見=ワタツミと同源)、 「ワタス」 は「渡す」 で航海·結びの動詞でもある。 山神の性格に加えて、 大三島という瀬戸内海の島に鎮座する地理から海上守護神·航海神としての性格も古代から付与され、 神道の重層性を体現する稀有な二重神格となった。

総本宮·大山祇神社は愛媛県今治市大三島町宮浦 3327 に鎮座する、 伊予国一宮·式内名神大社·旧国幣大社·別表神社·「日本総鎮守」 と尊称される。 創建伝承は複数あり: ① 推古天皇 2 年 (594 年) に摂津国から大三島に遷座、 ② 神武東征に随行した大山祇神の子孫·小千命 (乎千命·おちのみこと) が伊予二名国に渡って大三島を神地と定めたとする社伝『大三島記文』、 ③ 『伊予国風土記』 逸文の「百済 → 摂津国御嶋 → 伊予国」 経由説、 などが社伝レベルで並立し一次史料での確定は不能。 現社地造営は大宝元年 (701) 開始 → 霊亀 2 年 (716) 完成 → 養老 3 年 (719) 4 月 22 日遷宮と記録される (公式由緒)。

大山祇神社の最大の特徴は武家奉納の宝物群である。 国宝 8 件·重要文化財 76 件·天然記念物 1 件の計 85 件指定 (2016 年時点) を擁し、 日本の国宝·重要文化財指定武具のうち約 4 割を所蔵する。 旧来「8 割」 説が流布していたが、 大山祇神社公式·日本遺産ポータル·Wikipedia 注記が「正確には 4 割」 と訂正済で、 学術的にはこの 4 割数字を採用するのが正しい。 主要遺品は源頼朝奉納·紫綾威鎧 (国宝)、 源義経奉納·赤糸威鎧 (国宝)、 河野通信奉納·紺糸威鎧 (国宝)、 河野通有奉納·萌黄綾威腰取鎧 (重文) 等。 治承 4 年 (1180) 旗挙げの源頼朝が三嶋大社で源氏再興を祈願した『吾妻鏡』 記録、 河野氏 (伊予守護) の歴代奉納など、 武家信仰の集積地として中世以降に発展した。

もう一つの主要拠点·三嶋大社 (静岡県三島市大宮町 2-1-5) は伊豆国一宮·名神大社·旧官幣大社で、 主祭神は大山祇命と積羽八重事代主神 (事代主神=大国主の子) の二柱を「三嶋大明神」 として総称する独特な祭祀形式。 史料初見は天平宝字 2 年 (758) の『続日本紀』、 国史天長 9 年 (832) でも神異記載、 『延喜式』 神名帳 (927) に「伊豆三島神社 名神大 月次新嘗」 と正式登載される。 大三島からの勧請説と、 伊豆諸島噴火信仰·海上交通信仰を背景とする独自系譜説の両説が学界で並立し、 確定していない。

三島·大山祇信仰の全国分布は約 400 社余で、 都道府県別では愛媛 111 社·静岡 36 社·福島 35 社·福岡 24 社·高知 19 社·神奈川 19 社·大分 16 社の順。 中世以降の勧請拡大の担い手は河野氏 (伊予守護)·源氏·御家人系武家·瀬戸内海運業者で、 鎌倉幕府の御家人による全国拡大が確認できる (三浦氏関与説は文献での確証なし)。

民俗信仰での性格は極めて多面的である。 山岳信仰では「山の神総元」 として全国の山の神祭祀の最終的源流に位置し、 林業·木地師·炭焼·鉱山·鍛冶 (金山彦神·金山姫神と並祀される例多数、 修験道経由で伝播) の守護神。 農耕民俗の「山の神 ⇔ 田の神」 循環信仰 (春に山から下り田の神となる) の頂点に立ち、 鹿屋野比売神 (野槌·カヤノヒメ) との間に四対八柱の山野神を生んだ (『古事記』) という創世神話を背負う。 大三島が瀬戸内海の島であることから航海·武運の神性も付加され、 中世以降は「武の神」 として全国の武家社会で勧請が爆発した。

主要祭礼として旧暦 5 月 5 日の御田植祭·旧暦 9 月 9 日の抜穂祭·旧暦 4 月 22 日の例大祭 (霊亀 2 年遷宮の日に由来) があり、 御田植祭·抜穂祭で奉納される一人角力 (ひとりずもう) ── 力士役 (1 名) が見えない「稲の精霊」 と三本勝負を取り、 稲精霊が必ず 2 勝 1 敗で勝つことで豊作を約束する独特の神事 ── が知られる。 一人角力は昭和 59 年 (1984) に一旦途絶していたが、 平成 11 年 (1999) しまなみ海道開通を機に若手力士役·行司役で復活した。 現代では大三島·しまなみ海道観光の聖地として年間多くの参詣客を集め、 武家史·神道史·民俗学の研究者にも重要な拠点であり続けている。

出典情報

種類全体の出典
primary

一人角力·大山祇神社御田植祭の独特神事

著者: 大山祇神社·愛媛県民俗

年代: 古代~現代

出版社: 記紀·神社史·民俗·風土記

信頼度: A
関連度:

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primary

大山祇の子孫·木花咲耶姫/磐長姫/神大市比売他

著者: 『古事記』 上巻

年代: 712

出版社: 記紀·神社史·民俗·風土記

信頼度: A
関連度:

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primary

三島·大山祇信仰全国分布 (約 400 社)

著者: 近代~現代神社調査

年代: 現代

出版社: 記紀·神社史·民俗·風土記

信頼度: B
関連度:

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primary

三嶋大社·伊豆国一宮縁起

著者: 『続日本紀』·『延喜式神名帳』·三嶋大社公式

年代: 758 史料初見·927 神名帳登載

出版社: 記紀·神社史·民俗·風土記

信頼度: A
関連度:

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大山津見神·神生み段

著者: 『古事記』 上巻·『日本書紀』 神代上

年代: 712·720

出版社: 記紀·神社史·民俗·風土記

信頼度: A
関連度:

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大山祇神社·総本宮縁起 (伊予国一宮)

著者: 社伝『大三島記文』·公式由緒

年代: 推古 2 年伝承·701-719 造営

出版社: 記紀·神社史·民俗·風土記

信頼度: A
関連度:

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primary

大山祇神社·武家奉納国宝甲冑刀剣 (約 4 割)

著者: 大山祇神社公式·日本遺産ポータル

年代: 平安~現代

出版社: 記紀·神社史·民俗·風土記

信頼度: A
関連度:

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primary

和多志大神·『伊予国風土記』 逸文

著者: 『釈日本紀』 所引

年代: 8 世紀前半

出版社: 記紀·神社史·民俗·風土記

信頼度: A
関連度:

性格

雄大にして寛厚、山の総元としての威厳と海·武家·農耕への配慮を兼ね備える両義的気質。

相性

山岳·林業·鉱山·農耕·武運·航海·縁結びを願う者と高相性。 とくに武道·武士道·神社結婚式を志す者。

能力・特技

山岳総元の権能
海神性 (和多志大神·航海守護)
武運·武家守護 (国宝甲冑奉納の証)
山の神⇔田の神循環の頂点
鉱山·鍛冶守護 (金山彦神と並祀)
一人角力·稲精霊との豊作神事

弱点

「山·海·武の三面神」 ゆえ、 一面のみに特化した祈願は他の二面が薄まる。 「磐長姫を選ばなかった邇々芸命に短命を告げた」 神話を背負うため、 不死·永遠を欲張る祈願には冷淡。

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