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猫又 囲炉裏守りの古猫又
伝説
守護的

猫又囲炉裏守りの古猫又

ねこまた

動物変化🏞️ 東北から山陰にかけての古民家の囲炉裏端, 町家の竈間や土間の梁, 人通りの少ない路地裏から続く旧家

詳細説明

囲炉裏守りの古猫又は、長年ひとつ所に飼われ、煤と灰に染みた囲炉裏端で齢を重ねたネコが、ある夜ふいに尾を二股に割って顕れる版である。山で人を襲う荒ぶる猫又(『明月記』等に記される山猫また)とは対極に位置し、この者は家の息や歴代の営みを吸い込み、火の気と炊煙を身に宿すため、家内神(あるいは座敷童子)に近い振る舞いをとる。『徒然草』に引かれた「飼い猫が化ける」という俗説の延長線上にありながら、より守護的な性質を帯びている。人語は用いずとも、鍋の蓋をちろりと鳴らし、灰に模様を描いて合図をなす。夜更け、座敷の隅に走る青白い怪火(猫股の火)は、『大和怪異記』などで恐れられた祟りの火とは異なり、この古猫又が家屋の火難を未然に舐め取り、悪しき気を焼き落とす浄化の印であるとされる。尾の一本は「家筋の繋がり」を、もう一本は「火の神気」を繋ぐと信じられ、二股は単なる異形ではなく、務めを二つ持つ神聖な徴と説く里もある。

古猫又は、家人が亡骸を囲む折に必ず近くへ来る。俗にネコは死者を蘇らすという畏れがあり、火車(『画図百鬼夜行』等で描かれる亡骸を奪う怪猫)と混同されがちだが、この版は決して荒立てず、ただ鼻先で息の乱れを嗅ぎ、未練を払うために小さな火点を灯す。ゆえに、家人は猫又の前で刃物を振りかざさず、香を一筋焚いて「送り火」とするのが作法とされる。長く飼われたネコを粗略に扱うと、夜半に竈が空焚きとなり、壁に湿った足跡が幾重にも現れる。対して、丁重に弔った家では、雪の朝に障子の下だけ温み、米びつに鼠の影が絶えるという、柳田國男が指摘するような「世間話」に似た恩返しの民俗が息づいている。

この版は、かつて山へ消えた老猫が家を慕い戻った姿とも、初めから家を出ぬ古猫が自然と尾割れした姿とも語られる。化けるのを防ぐため尾を切る習俗(尾曲がり猫の起源)も伝わるが、囲炉裏守りの地ではこれを忌み、「尾を傷つけると家徳も割ける」と厳しく戒める。容姿は背皮が垂れて外套のごとく見え、灯の少ない部屋では人影のように映る。これが死人に化けると誤認される所以だが、古猫又は無用の化けを好まない。たまに祖母の姿を借りるのは、幼子を寝かしつけるためであり、声は出さず、ただ煤と灰の匂いだけを残す。

旅人には姿を見せぬが、婿取りや新築の初夜など家の節目には、床下で小さく爪を打ち、吉凶を告げる。三つ打ちは吉、二つは火の用心である。灯心が湿れば舌で整え、竈の火が強すぎれば尾であおぎ弱める。こうして日々の小さな災いを受け持つ代わり、家人には「食の端」を分け与える作法が残る。米粒三つ、塩ひとつまみ、湯気を少々。これさえ守れば、猫又は人を惑わさず、夜の怪音もただの「家鳴り」で済むとされた。

出典情報

種類全体の出典primary

妖怪学の基礎知識

著者: 小松和彦

年代: 2011

出版社: 角川学芸出版

信頼度: S関連度:

種類全体の出典primary

明月記

著者: 藤原定家

年代: 1180-1235

出版社: (鎌倉前期・日記)

信頼度: A関連度:

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徒然草(第十九段)

著者: 吉田兼好

年代: 14世紀前半(鎌倉末〜南北朝期)

出版社: (随筆/煙々羅詞書の典拠とされる、近藤瑞木の指摘)

信頼度: A関連度:

種類全体の出典primary

大和怪異記

著者: 未詳

年代: 1708

出版社: 江戸期の怪談集

信頼度: B関連度:

種類全体の出典primary

妖怪図巻

著者: 京極夏彦 文 ; 多田克己 編・解説

年代: 2000年6月

出版社: 国書刊行会

信頼度: B関連度:

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画図百鬼夜行

著者: 鳥山石燕

年代: 安永5年(1776年)

出版社: 国文学研究資料館国書データベース(東京藝術大学附属図書館所蔵)

信頼度: A関連度:

種類全体の出典primary

百怪図巻

著者: 佐脇嵩之

年代: 元文2年(1737年)

出版社: 福岡市博物館(DNPアートコミュニケーションズ画像提供)

信頼度: A関連度:

性格

寡黙で義理堅く、家人の礼節に敏感。夜は警戒心が強く、昼は穏やかに見守る。

相性

古道具を粗末にせず、火と食を大切にする家主や、動物を敬って弔う人。

能力・特技

怪火の制御と火難の予兆消し人の心持ちを灰の模様で示す占い鼠・害虫の徹底的な駆逐姿影を薄くして床下や梁上に溶ける弔いの場で未練を鎮める微かな送り火

弱点

刃物を乱暴に扱う家や、火を粗末にする者を嫌う, 尾を故意に切られると家への情が離れる, 湿り気のない荒野では力が鈍る

診断評価

🔮

妖怪バウンダリー・タイプ指標

いたずら濃度
-3.0

high: 戯 low: 護

📝 メモ

火難の予兆消しや鼠害駆逐を担う守護的な古猫又である。

変化適応
2.0

high: 化 low: 定

📝 メモ

尾を割り、姿影を薄くして床下や梁上へ溶ける。

夜話度
2.0

high: 夜 low: 昼

📝 メモ

夜は警戒心を強め、青白い怪火で家を見守る。

情の深さ
3.0

high: 縁 low: 境

📝 メモ

一つの家と囲炉裏、家人の礼節に深く結びつく。

結界強度
3.0

high: 律 low: 流

📝 メモ

囲炉裏端と家内の火の掟を守る家内神的存在である。

表舞台圧
-1.0

high: 表 low: 影

📝 メモ

灰の模様や鍋蓋の音、梁上の気配で静かに知らせる。

🔮

妖怪相性診断

喜び
3.5

喜びと楽しさの程度

📝 メモ

寡黙で義理堅く、喜びを表立って示さない。踊る古猫の系譜はあるが本バージョンは節度重視。

怒り
4.5

怒りの激しさの程度

📝 メモ

荒ぶる山の猫又ほどではないが、粗略や刃物乱用には空焚きや足跡など警告的な報いを与える。激烈な加害性は低い。

慈悲深い
7.8

慈悲深さの程度

📝 メモ

弔いで未練を鎮める送り火や家人への配慮がある一方、作法破りには容赦なく徴を示すため過度には高くしない。

憂鬱
6.2

憂鬱で思慮深い程度

📝 メモ

灰と煤、死者の場への関与、静かな夜回りなどに物寂しさが漂う。過度に陰鬱ではない。

静寂
8.6

内なる平静の程度

📝 メモ

昼は穏やかに見守り、声を出さず灰で合図するなど内的静けさが強い。

いたずら好き
3.0

いたずら好きで活発な程度

📝 メモ

無用の化けを好まず、いたずらは控えめ。蓋を鳴らす等の小さな合図は遊び心というより実務的。

やさしい
7.5

やさしく親しみやすい程度

📝 メモ

家内神的に振る舞い、幼子を寝かしつけるなど温和。ただし夜は警戒が強く、粗略には罰も与えるため満点ではない。

厳格
8.0

厳格で真面目な程度

📝 メモ

作法・礼節・火の扱いに厳格で、尾を傷つけることを戒める。三つ打ち二つ打ちなど規矩を示す。

守護的
9.2

他者を守る傾向

📝 メモ

火難を先取りして鎮め、害鼠を駆逐し、家の節目に吉凶を告げ守護する描写が明瞭。

神秘的
9.0

神秘的で不思議な程度

📝 メモ

怪火を舐め取り、灰で占い、姿影を薄める等の不可思議な所作が中核。人語は介さず合図する点も神秘性が高い。

霊性の深さ
9.1

精神的境界の深さ

📝 メモ

家筋と火の神気を繋ぐ二股の象徴性、送魂・予兆消し・家内神的性格が重層的な霊性を示す。

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