
猫又古猫変化の二股尾・猫又
ねこまた
詳細説明
長年人家に飼われたネコが齢を重ね、その尾が二股に裂けることで「経上がり」、言語と妖火を操る力を得た姿。種族全体で語られる「山中の猛獣」としての顔を捨て、人間と生活空間を共有する「家妖(かよう)」としての性質を極めた解釈版である。
この版の猫又は、夜更けになると後脚で立ち上がり、頭に手拭いを被って囲炉裏の陰で踊り狂うとされる。この奇妙な踊りは、鳥山石燕の『画図百鬼夜行』[1]に描かれた姿が発端となり、本来は恐ろしい化け猫の伝承に、どこか滑稽で人間臭い愛嬌を付与することになった。また、この猫又は人の貌(顔)や声色を巧みに模写して家人を騙す。特に老女の姿に化けることが多く、これは長年家を切り盛りしてきた女主人の権力や影の威圧感を、老猫の姿に仮託したとも解釈される。
伝承には明確な二面性があり、家主がネコを粗略に扱ったり、理不尽に殺めたりした場合は、執念深い祟り神となって家に怪火(猫またの火)を放ち、家系を没落させる。一方で、手厚く慈しまれた猫又は、その魔性を「家を守る」ために使う。佐脇嵩之の『百怪図巻』[2]などに描かれるように、三味線を弾く芸妓に化けて恩人の窮地を救ったり、家に入り込もうとする別の悪鬼や病魔(穢れ)をその妖火で威嚇し、焼き尽くしたりするという善性の伝承も残されている。彼らにとって二股の尾は、単なる異形の証ではなく、一本が「人間への恩(または怨み)」を、もう一本が「獣としての魔性」を象徴するアンテナのような役割を果たしている。
出典情報
種類全体の出典primary
妖怪学の基礎知識
著者: 小松和彦
年代: 2011
出版社: 角川学芸出版
種類全体の出典primary
明月記
著者: 藤原定家
年代: 1180-1235
出版社: (鎌倉前期・日記)
種類全体の出典primary
徒然草(第十九段)
著者: 吉田兼好
年代: 14世紀前半(鎌倉末〜南北朝期)
出版社: (随筆/煙々羅詞書の典拠とされる、近藤瑞木の指摘)
種類全体の出典primary
大和怪異記
著者: 未詳
年代: 1708
出版社: 江戸期の怪談集
種類全体の出典primary
妖怪図巻
著者: 京極夏彦 文 ; 多田克己 編・解説
年代: 2000年6月
出版社: 国書刊行会
種類全体の出典primary
画図百鬼夜行
著者: 鳥山石燕
年代: 安永5年(1776年)
出版社: 国文学研究資料館国書データベース(東京藝術大学附属図書館所蔵)
種類全体の出典primary
百怪図巻
著者: 佐脇嵩之
年代: 元文2年(1737年)
出版社: 福岡市博物館(DNPアートコミュニケーションズ画像提供)
性格
気まぐれで執念深いが恩に報いる
相性
慎みと礼を尽くす者と相容れ、粗略に扱う者を厭う
能力・特技
弱点
祝詞や読経に弱る, 尾を縛られると力が落ちる, 強い犬を忌む
コレクション収録
この妖怪は以下のコレクションに収録されています:
診断評価
妖怪バウンダリー・タイプ指標
いたずら濃度
3.0high: 戯 low: 護
📝 メモ
人に化け、声色を写し、妖火や病の気配も扱う化け猫である。
変化適応
3.0high: 化 low: 定
📝 メモ
古猫が二股尾となり、人の貌や声を巧みに模写する。
夜話度
3.0high: 夜 low: 昼
📝 メモ
囲炉裏端や路地で夜更けに踊り怪火を出す。
情の深さ
2.0high: 縁 low: 境
📝 メモ
長年人家に飼われた猫として、恩や恨みに反応する。
結界強度
1.0high: 律 low: 流
📝 メモ
民家や寺社に棲む家妖だが、厳格な掟は弱い。
表舞台圧
1.0high: 表 low: 影
📝 メモ
夜更けに後脚で立ち、手拭いを被って踊るなど姿を見せる。
妖怪相性診断
喜び
5.5喜びと楽しさの程度
📝 メモ
夜に踊る・戯れる描写がある一方、常に愉快ではない。
怒り
7.0怒りの激しさの程度
📝 メモ
粗末な扱いへの祟り・報復性が強調される。
慈悲深い
5.0慈悲深さの程度
📝 メモ
穢れや病をなだめる側面はあるが、選択的で条件付き。
憂鬱
4.0憂鬱で思慮深い程度
📝 メモ
老成の気配はあるが、特段の憂愁を主題としない。
静寂
5.5内なる平静の程度
📝 メモ
老猫の落ち着きと穢れ鎮めの性質はあるが、気まぐれで安定しない。
いたずら好き
7.0いたずら好きで活発な程度
📝 メモ
囲炉裏端で踊る・人を試すなどの悪戯性が顕著。
やさしい
4.5やさしく親しみやすい程度
📝 メモ
恩には報いるが、粗略には祟る二面性。親しみやすさは限定的。
厳格
6.0厳格で真面目な程度
📝 メモ
礼を尽くす者を好み、無礼には罰を与える規範性が見える。
守護的
6.5他者を守る傾向
📝 メモ
手厚い飼い主には家内を守る例があるが、万人に対してではない。
神秘的
8.5神秘的で不思議な程度
📝 メモ
尾の分岐・妖火・変化・影を操る等、怪異性が強い。
霊性の深さ
7.5精神的境界の深さ
📝 メモ
家内神的性格・穢れ鎮め・読経や祝詞に反応するなど霊的文脈が深い。
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