
木霊青ヶ島のキダマサマ・木霊
こだま
詳細説明
伊豆諸島・青ヶ島に伝わる木霊で、島人は古来「キダマサマ」「コダマサマ」と敬称で呼び、スギの大木の根元に小祠を据えて祀ってきた。海風と火山の息を吸う島の森は浅い土に深く根を張る。そこに宿るキダマサマは、ただ声を返すやまびこではなく、木そのものの齢を織り込んだ古い記憶の精である。朝霧の頃、祠前で名を呼べば、返事は一度きり、わずかに湿った音で戻る。それは承諾のしるしであり、二度三度と乱れて返れば、時節でない、刈るな、の戒めであると解される。島では木を刈る際、まず祠に米一握りと海塩、焼酎の盃を供え、幹を三度叩き、由(わけ)と数(かず)を告げる作法がある。キダマサマはその律を重んじ、礼が尽くされれば風向きを整え、刃を鈍らせず、作業の道筋を迷わせない。無礼に及べば、山中の音が濁り、刃は節に跳ね、労に病が添うと恐れられた。姿は定かでないが、島の古老は「年輪の影」と言い、夕照に幹肌が朱に染まるとき、木目の奥に水鏡のような淡い瞳がひとつ生まれ、すぐ溶けると語る。ひとたび大風や地鳴りの前には、祠の小石が自ずと並び替わるという。これは森の息の乱れを知らせる前触れで、聞き分ける者は畑と舟の手を止め、被害を軽くしたと伝わる。また、島外から来た者にも閉鎖的ではない。名乗りと土産の塩を忘れず、祠の前で声を低く保てば、返るやまびこは柔らぎ、山道は迷いを減ずる。逆に笑い騒ぐと、返り声は遅れて高く割れ、耳の奥に残り、方角の感覚を崩す。キダマサマは木の齢が尽きようとすると、夢に現れて「今は世を替える」と告げるという。村人はその言を瑞祥とし、倒木の後には若木を三本植え、根元の祠を移して息を継ぐ。こうして島の森林は世代を重ね、精もまた薄れず移ろう。古典にいう木の神の余映が海上の孤島で色濃く生き、山の礼と海の糧をつなぐ媒介として、今日も静かに耳を澄ませている。
出典情報
種類全体の出典primary
源氏物語
著者: 紫式部
年代: 11世紀初頭(平安時代)
種類全体の出典primary
古事記
著者: 太安万侶(撰録)
年代: 和銅5年(712年)
出版社: (現存最古の日本神話・史書)
種類全体の出典reference
鳥山石燕の妖怪図鑑でみる妖怪の世界
著者: 国立国会図書館
年代: 2025
出版社: NDLイメージバンク
種類全体の出典primary
和名類聚抄
著者: 源順
年代: 承平年間(931〜938年ごろ)
種類全体の出典primary
画図百鬼夜行
著者: 鳥山石燕
年代: 安永5年(1776年)
出版社: 国文学研究資料館国書データベース(東京藝術大学附属図書館所蔵)
性格
おごそかで律義、恩を忘れず、無礼には冷たく沈黙で応える。だが筋を通す者には柔らかく道を示す。
相性
山の作法を守る樵や狩人、祠に手を合わせる旅人、約束を違えない人
能力・特技
弱点
無礼な騒音や嘲りの声に心を閉ざし応答を絶つ, 塩と水の供えを絶やすと力が痩せ、兆しが鈍る
コレクション収録
この妖怪は以下のコレクションに収録されています:
診断評価
妖怪バウンダリー・タイプ指標
いたずら濃度
-2.0high: 戯 low: 護
📝 メモ
礼を尽くす者に道迷い避けや前兆を授ける
変化適応
-2.0high: 化 low: 定
📝 メモ
杉の精と返り声が中心で姿を変える話は薄い
夜話度
1.0high: 夜 low: 昼
📝 メモ
地鳴りや山の気配として陰の時間に読める
情の深さ
-2.0high: 縁 low: 境
📝 メモ
人より青ヶ島の大木と祠に属する
結界強度
-1.0high: 律 low: 流
📝 メモ
祠の場はあるが木霊型として厳格な結界より流に寄る
表舞台圧
-3.0high: 表 low: 影
📝 メモ
祠と杉の大木に静かに宿り前面には出ない
妖怪相性診断
喜び
2.5喜びと楽しさの程度
📝 メモ
喜びや愉悦の表現は少なく、静謐で実務的な応答が中心。
怒り
4.5怒りの激しさの程度
📝 メモ
無礼には沈黙や音の濁りで戒めるが、露骨な激怒や破壊は少ない。怒りは抑制的。
慈悲深い
6.0慈悲深さの程度
📝 メモ
恩を忘れず、作法を守る者に便宜を与える。無差別の慈愛ではなく条件付きの温情。
憂鬱
5.5憂鬱で思慮深い程度
📝 メモ
木の齢や世の替わりを告げるなど時間感覚は哀愁を帯びるが、過度に陰鬱ではない。
静寂
8.5内なる平静の程度
📝 メモ
静寂と秩序を重んじ、応答も一度きりで落ち着く。内的な平静が強い。
いたずら好き
1.5いたずら好きで活発な程度
📝 メモ
いたずらや戯れの描写はなく、むしろ騒ぎを嫌う。
やさしい
5.5やさしく親しみやすい程度
📝 メモ
礼を尽くす者には柔らかく道を示すが、基本はおごそかで距離がある。親しみやすいというより節度ある応対。
厳格
9.0厳格で真面目な程度
📝 メモ
作法・供物・手順を厳密に求め、守られなければ応答を絶つ。性格も“厳格”。
守護的
8.0他者を守る傾向
📝 メモ
礼節を守る者に風向きを整え道迷いを防ぐなど、共同体と作業を守護する働きが明確。
神秘的
9.0神秘的で不思議な程度
📝 メモ
姿は定かでなく“年輪の影”や祠の小石が動く前兆など、不可視の働きが多く強い神秘性。
霊性の深さ
9.2精神的境界の深さ
📝 メモ
木の神格の余映、古典神話との連関、記憶と前兆の媒介など霊的層が非常に深い。
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