基本説明

龍蛇神 (リュウジャシン·龍蛇さま) は、 旧暦 10 月の神在祭に出雲へ来集する八百万の神々の先導役として出雲大社·佐太神社等の出雲諸社に奉斎される神使である[1]。 その正体は晩秋から初冬にかけて出雲の海岸に漂着する南海産のセグロウミヘビ (背黒海蛇) で、 黒い背と黄色い腹の鮮やかな体色を持つ実在の海蛇である[1]。 古来の日本人は神々が天上から天降るか、 海の彼方の常世国から海を渡って来訪すると考えており、 季節を違えず海から寄り来る龍蛇は「常世国·海神国から遣わされた使い神」 として尊崇された[2]。 旧暦 10 月 10 日、 国譲り神話の舞台でもある稲佐の浜で執り行われる神迎神事で龍蛇神は海から迎えられ、 八百万の神を先導して出雲大社の本殿へと導く[1]。 漂着した龍蛇は出雲大社に奉納され、 出雲地方の民家でも神棚に祀る習慣が今日まで残る[2]。 火難·水難·盗難除けと招福の霊験を持つ神使として、 出雲信仰における海と他界の境を往来する存在である。

民話・伝承

セグロウミヘビ ── 龍蛇神の正体龍蛇神の正体は熱帯·亜熱帯の外洋に棲むセグロウミヘビ (背黒海蛇) で、 黒田起黄の体色から「天地玄黄の相を如実にあらわす」 ものと讃えられた。 玄黄とは天の色 (玄·黒) と地の色 (黄) が混じり合ったもので、 天の神秘性と大地の永遠性を称える語である。 暖海性のこの海蛇が対馬海流に乗って晩秋の出雲沿岸に漂着する季節現象が、 神在月の神来集と重ね合わされ、 神使信仰へと結晶した。

神迎神事と稲佐の浜旧暦 10 月 10 日の夜、 国譲り神話の舞台である稲佐の浜で神迎祭が斎行され、 海の彼方から来集する八百万の神々を迎える。 このとき龍蛇神が神々の先導役を務め、 浜から出雲大社へと神々を導く。 神々は大社の十九社に宿り、 旧暦 10 月 11 日からの神在祭 (御忌み·おいみさん) の七日間、 縁結びをはじめとする人事·運命の神議りを行うと信じられる。 龍蛇神は出雲大社のほか佐太神社など出雲九社の神迎にも関わり、 出雲一円の神在信仰の核をなす。

常世国からの使い神古来の日本信仰では、 神々は天上から天降るか、 海の彼方の常世国·海神国から海を渡って来訪すると観念された。 季節を違えず海から寄り来る龍蛇は、 まさにこの常世·海神国からの使い神と見なされ、 大国主神が少彦名命と国造りを終えた後に常世国へ神去ったという出雲神話の他界観とも響き合う。 海と他界の境を越えて来訪する龍蛇神は、 出雲が古代から海の彼方の異界と通じる聖地であったことを物語る。

奉納と民間信仰·龍蛇講出雲地方では漂着した龍蛇 (セグロウミヘビ) を出雲大社へ奉納し、 民家でも神棚に祀る習慣が現在も残る。 出雲大社教では龍蛇神を火難·水難·盗難除けと招福の神使として崇敬する龍蛇神講が組織され、 講員に龍蛇神の神札が頒たれてきた。 神使でありながら独立した崇敬対象となった点で、 龍蛇神は出雲の神在信仰が生んだ固有の信仰形態である。

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徹底解説

龍蛇神は、 出雲の神在祭という具体的な祭祀の場で機能する「神使」 として独自の位置を占める。 一般の龍神 (水·雨·海を司る複合的水神) が全国の祈雨·止雨信仰を基層とするのに対し、 龍蛇神はあくまで出雲大社·佐太神社等の神在神事に限定された、 八百万の神の先導役という職能神である。 その実体は信仰上の抽象ではなく、 晩秋に出雲沿岸へ実際に漂着するセグロウミヘビという実在の海蛇であり、 自然現象 (暖海性海蛇の対馬海流による漂着) と神話的時間 (神在月の神来集) が一致する稀有な季節儀礼の核となっている。 漂着個体は大社に奉納され、 出雲大社教の龍蛇神講を通じて火難·水難·盗難除けと招福の神札として庶民に頒たれ、 神使から独立した崇敬対象へと発展した。 海の彼方の常世·異界から来訪する点で、 出雲を他界との通路と見る古代的世界観を体現する。

妖怪設定

この区画は物語を楽しむための当サイト独自の設定です。史実・考証ではありません。

性格
季節を違えず海から寄り来る、 律義で厳粛な来訪者。 海と他界の境を往来し、 神々の道を先んじて拓く先導役の風格を持つ
相性
縁結び·運命·神議りに関わる神々と、 海·常世·他界に縁を持つ存在
能力・特技
八百万の神の先導海と他界の境の往来火難·水難·盗難除け招福·縁結びの守護
弱点
神在祭という限定された季節·祭祀の場に強く結びつくため、 神迎神事を離れた文脈では本来の先導役としての力を発揮しにくい
生息地
稲佐の浜の汀と出雲大社の神域、 そして海の彼方の常世国·海神国

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出典・参考文献

2
  1. 出雲の神迎祭 ── 龍蛇神と神在月島根県立古代出雲歴史博物館(島根県立古代出雲歴史博物館, 現代 (民俗解説)) [museum]旧暦 10 月 10 日に稲佐の浜で神迎祭が斎行され、 南海のセグロウミヘビ (龍蛇) が八百万の神々の先導役となることを解説する。
  2. 出雲大社で神の使いとされるセグロウミヘビについて (レファレンス協同データベース)国立国会図書館 レファレンス協同データベース(国立国会図書館, 現代 (レファレンス回答)) [reference]セグロウミヘビが常世国·海神国からの使い神とされる理由、 天地玄黄の相、 出雲大社への奉納と民家神棚に祀る習慣を典拠付きで解説する。

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