基本説明

ニホンオオカミを神格化した山の神で、「お犬さま」「御眷属さま」とも呼ばれる。「真神 (まかみ)」はオオカミの古名で、『万葉集』巻八に「大口の真神の原にふる雪は」と詠まれるほど古い大和国の飛鳥には真神原の老狼伝承があり、人を喰らう猛き獣を畏れ敬う心が神格化の源にあった。武蔵国の秩父山中に鎮まる三峯神社では、このオオカミを主神の使い神=御眷属とし、人語を解し善悪を見分ける霊獣として崇める。火難·盗難·魔物·憑きものを祓い清める力をもつとされ、近世以降は関東一円へ信仰が広まった。

民話・伝承

三峯神社の縁起では、日本武尊が東征の折に碓氷·雁坂の山中で道に迷ったとき、忽然と現れた白いオオカミが道案内をし、その勇猛·忠実さから神の使いに定められたと伝わる同社では御神札としてオオカミを一年間借り受け、家や村を守護してもらう「御眷属拝借」の習わしが古くから続き、火防·盗賊除·諸難除の霊験あらたかとされるお犬さまの信仰は享保年間 (18世紀前半) に三峯山で本格化し、天保年間 (19世紀前半) には盗難除け·魔除けの護符として江戸の町でも盛んに求められた。武蔵御嶽神社 (現·東京都青梅市) や秩父·奥多摩の山々にも同じオオカミ信仰が連なり、田畑を荒らす熊·猪を追い払う益獣として、また憑きもの落としの神として畏敬された。明治以降ニホンオオカミは絶滅したが、御眷属としての大口真神への信仰は今も三峯神社に受け継がれている。

徹底解説

大口真神は単なる獣の妖怪ではなく、ニホンオオカミという実在の山の頂点捕食者を「真の神」として祀り上げた信仰の結晶である。武蔵国秩父の三峯神社を中心に、武蔵御嶽神社·宝登山神社などへ連なる関東のオオカミ信仰圏を貫く守護神格で、その本質は「祓い」にある。家を襲う火、忍び入る盗賊、人に取り憑く物の怪—目に見えぬ災いを嗅ぎ分け、追い払う番犬としての神性が、近世の庶民に強く求められた。御眷属拝借という独特の作法は、神そのものを一年間家へ迎え入れるという濃密な信仰形態で、返納·更新を繰り返すことで神と家との縁が結ばれ続ける。絶滅した獣を今なお神として遇する点に、この信仰の根強さがある。

妖怪設定

この区画は物語を楽しむための当サイト独自の設定です。史実・考証ではありません。

性格
忠実で勇猛、無口だが情に篤い。一度守ると定めた家や人を生涯違えず守り抜く。盗み·穢れ·欺きを何より嫌い、邪心ある者を鋭く見抜く。
相性
正直で筋を通す者、山や生き物への畏敬を忘れない者と深く結ばれる。約束を破る者·人を欺く者とは相容れない。
能力・特技
火難·盗難·魔物·憑きものを祓い清める人語を解し善悪·邪心を見抜く田畑を荒らす害獣を追い払う御眷属拝借により一年間家·村を守護する
弱点
欺きや不浄を忌み、約束を違える者には加護を退く。実体のニホンオオカミは明治期に絶滅した。
生息地
秩父·奥武蔵·奥多摩の深山と、その霊気を祀る山岳神社の境内。

秩父三峯の御眷属・お犬さまについてさらに詳しい情報や診断結果については、こちらをご覧ください。

出典・参考文献

5
  1. 万葉集(巻八)舎人娘子ほか((現存最古の和歌集), 8世紀(奈良時代)) [古典文献]巻八に舎人娘子の歌「大口の真神の原にふる雪は」が見え、オオカミの古名「真神」の古い用例とされる。
  2. 大和国風土記(逸文)((風土記逸文), 8世紀(奈良時代)) [古典文献]飛鳥の真神原に老狼の伝承を伝え、オオカミ神格化の古層を示す。
  3. 三峯神社 由緒・縁起三峯神社(三峯神社(埼玉県秩父市三峰)) [社伝・由緒]日本武尊の道案内をしたオオカミを御眷属とする三峯神社の縁起。
  4. 三峯神社 ご祈祷案内(御眷属拝借)三峯神社(三峯神社(埼玉県秩父市三峰)) [社伝・現行祭祀]御眷属を一年間拝借し火防・盗賊除・諸難除を祈る現行の信仰作法。
  5. 大口真神とは ~絶滅した山の神のご眷属草の実堂(草の実堂(解説記事)) [二次解説]ニホンオオカミの神格化と享保・天保期のお犬さま信仰拡大を概説。

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