稀少
伝統妖怪

火明命

ほあかりのみこと

カテゴリ
神霊・神格
性格
剛強で激しやすく、父神すら手を焼くほどの荒々しさをもつ。置き去りにされた屈辱に応えて即座に天候を荒らす、誇り高く一徹な気性。
起源
因達神山 (現·兵庫県姫路市・日女道丘=姫山) / 播磨国 (現·兵庫県南西部)
  • 姫路城(姫路市本町)因達神山=日女道丘(姫山)。火明命の怒りで散った蚕子が落ちた地が姫路の地名起源
  • 播磨国播磨国風土記飾磨郡の条の地名起源神話。播磨中央部の十四の丘の由来
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基本説明

火明命(ほあかりのみこと)は、『播磨国風土記』飾磨郡の条に語られる荒ぶる御子神で、国作りの大神大汝命(おおなむち、大国主神)の子とされる。その性(さが)はきわめて剛強で、父をも手こずらせるほどの乱暴者であったと伝える。父の大汝命は子の荒々しさに耐えかね、因達神山(いだてのかみやま)で水を汲んでくるよう命じておきながら、その隙に船を出して置き去りにした。置き去りにされたと知った火明命は激しく怒り、波風を起こして父の船を覆してしまう。このとき船から散乱した積荷や船具のひとつひとつが、現在の姫路市中心部に点在する十四の丘の名の由来となったと風土記は説く ── 蚕子(ひめこ)の落ちた地は日女道丘(ひめじおか)すなわち姫路城の建つ姫山に、琴の落ちた地は琴神丘に、箱の落ちた地は箱丘(現·男山)に、というように、神の怒りが地形と地名の起源譚へと結晶している。記紀神話では天孫の系譜に連なる天火明命(あめのほあかりのみこと)と同名・同神とも目されるが、播磨の伝承においては何より「父に背いて嵐を呼んだ荒神」としての貌が際立つ。

民話・伝承

この物語の典拠は、和銅六年(七一三)の官命を受けて霊亀元年(七一五)頃までに撰進されたとみられる『播磨国風土記』である。現存する五風土記(常陸・出雲・播磨・豊後・肥前)の一として、播磨国風土記は地名の起源(地名起源説話)を語る記述に富み、火明命の説話もその典型をなす。飾磨郡の条は、大汝命がわが子の悪性(あくしょう)を憂えて因達神山に至り、水汲みを口実に置き去りにしたこと、火明命が怒って暴風を起こし船を転覆させたこと、そして散った品々が丘々の名となったことを順に記す。風土記が挙げる丘には、日女道丘(姫山)・琴神丘(現·薬師山)・箱丘(現·男山)のほか、船丘・波丘・箕形丘・甕丘・稲牟礼丘・冑丘など、いずれも転覆の場面でこぼれ落ちた具体的な事物に対応する名が並ぶ。とりわけ蚕子が落ちたとされる日女道丘は、後世の姫路(ひめじ)の地名そのものの語源とされ、城下町の中核・姫山と結びつく点で、播磨国の根源的な地名神話として今日まで語り継がれている。荒ぶる御子が父神に逆らって嵐を呼ぶという話型は、海の支配と航行の危険を神の怒りに重ねる古代の感覚を映すとともに、各地の風土記に通有する「神の行為が土地の名を定める」という発想を、播磨の地形に即して具体化したものといえる。

徹底解説

火明命は、播磨国風土記が伝える地名起源神話の主役であり、その荒ぶる性格そのものが播磨中央部の地形を形づくった荒御子(あらみこ)である。父・大汝命に水汲みを命じられて置き去りにされた火明命は、怒りのままに波風を呼び起こし、父の乗る船を転覆させた。散乱した積荷 ── 蚕子・琴・箱・船・甕・冑など ── が落ちた地はそれぞれ日女道丘(姫山)・琴神丘・箱丘らの名を得て、姫路の地名そのものの淵源となった。荒神でありながら、その怒りが土地に秩序と名を与えるという両義性に、この神の本質がある。天孫系譜の天火明命と同神視されることもあるが、播磨では海と嵐を司る土着の御子神として記憶される。

妖怪設定

この区画は物語を楽しむための当サイト独自の設定です。史実・考証ではありません。

性格
剛強で激しやすく、父神すら手を焼くほどの荒々しさをもつ。置き去りにされた屈辱に応えて即座に天候を荒らす、誇り高く一徹な気性。
相性
怒りや反骨を抱える者、海・天候の力に畏れを抱く者と響き合う。穏やかな調停を求める相手とは衝突しやすい。
能力・特技
波風を起こし船を転覆させる暴風の支配怒りによって天候を荒らすその行為が地形・地名の起源となる(地名創生)
弱点
激しやすい気性ゆえ謀(はかりごと)に乗せられやすく、父・大汝命の置き去りの計略にかかった。冷静な策略の前には御しがたい。
生息地
因達神山(現·姫路市の日女道丘=姫山一帯)と播磨灘の海上。

嵐を呼ぶ荒御子・火明命についてさらに詳しい情報や診断結果については、こちらをご覧ください。

出典・参考文献

1
  1. 播磨国風土記撰者未詳(奈良時代官撰, 715頃) [古典文献]和銅6年(713)の官命により霊亀元年(715)頃までに撰進された播磨国の官撰地誌。現存五風土記の一。飾磨郡の条に、大汝命の子・火明命が置き去りにされた怒りで波風を起こし父の船を転覆させ、散乱した積荷が日女道丘(姫山)など十四の丘の名の由来となったとする地名起源説話を伝える。

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