蓼科山に伝わる妖怪 1 体。その土地に根ざした物語と伝承地を辿ります。
こうがさぶろう
地底を巡り蛇身となった諏訪明神・甲賀三郎
甲賀三郎の面白さは、単なる英雄譚ではなく、諏訪明神の起源を「地下へ落ちた人間の帰還」として語る点にある。古事記の建御名方神が国譲り神話の敗者として諏訪へ退く神であるのに対し、甲賀三郎は近江から信濃へ入り、蓼科山の穴から地下世界へ落ち、蛇体となって戻ってくる。諏訪の神は天から降りるだけでも、中央神話から来るだけでもない。山の穴、地下の国、蛇の身体を通って現れる。この筋立ては、諏訪信仰の水・山・龍蛇・狩猟・神仏習合を一つの物語に束ねている。建御名方神を祭神として見るページとは別に、甲賀三郎を立てる意味はここにある。