🔤 かな別妖怪図鑑
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アマビエ
あまびえ
瓦版伝承準拠
弘化三年四月中旬、肥後国の海上に現れたと伝わる予言の妖怪。夜ごと海中より光を放ち、役人の前に姿を見せ、自らをアマビエと名乗った。諸国の豊作が六年続く一方で疫病が流行する旨を告げ、その災厄に際しては自身の姿を写した絵を人々に見せよと言い残し、海へ戻ったという。瓦版一種の記録のみが知られ、詳細は不詳。
一反木綿
いったんもめん
一反木綿(伝承像)
鹿児島県に伝わる怪異で、長さ一反ほど、幅は三寸前後の木綿の布が夕暮れから夜分にかけて空をひらひら舞い、人の顔や首に巻きつき息を詰まらせるとされる。姿は布切れ同然で、声も出さず音も立てないという。『大隅肝属郡方言集』(野村伝四・柳田國男)に名がみえ、土地では子どもへの戒めとして語られた。正体は不要となった布が怪異化したものとも、風の妖と見る説もある。
一本だたら
いっぽんだたら
紀伊・熊野伝承準拠
一本だたらは、一つ目で一本足の姿をとるとされる山の怪で、紀伊の熊野や奈良の伯母ヶ峰などで語られる。雪上に大きな単跡を残すことで知られ、姿を見た者は少ないともいう。出現日は十二月二十日の「果ての二十日」に限るとする説が著名で、この日は山入りを忌む。鍛冶やたたらとの関連、隻眼の鍛冶神の零落とする解釈も伝えられる。
以津真天
いつまで
以津真天(古典像)
以津真天は人間の声で「いつまで…」と不気味に鳴き、聞いた者に死を予兆する怪鳥。古くから「この声を聞けば三日以内に命を落とす」と伝えられ、恐れられてきた。
垢嘗
あかなめ
伝統図像・風呂場怪童型
古い風呂屋や荒れた屋敷の風呂場に現れるとされる妖怪。長い舌を垂らした童子の姿に描かれることが多く、夜更けに忍び入り、桶や壁にこびり付いた垢や水垢、黴を舐め取る。人に直接危害を加える話は少ないが、出現そのものが不浄の兆しと受け取られ、風呂場を清潔に保つ戒めと結び付けられてきた。別名に垢舐・垢ねぶりがある。
大入道
おおにゅうどう
伝統譚整理版・大入道
大入道は各地に伝わる巨大な入道姿、あるいは影法師のような巨体の怪異。名称は大きな僧を指すが、実際は僧形に限らず巨人状や不定形の影として現れる例もある。見上げるほどの大きさで迫り、睨まれた者が卒倒・病を得ると恐れられる。正体は不詳とされることが多いが、狐・狸・鼬・獺などの動物や石塔が化けたとする説も各地に見える。
大煙管
おおぎせる
大煙管(阿波・青石瀬口承)
徳島県三好郡三庄村毛田に伝わる化け狸の怪。吉野川の青石瀬で夜更けに舟を停めると現れ、巨大な煙管を差し出して煙草を所望する。煙管一杯に詰め切れば害はないが、量は常識外れに多く、用意が足りぬと舟を転覆させたり怪異を起こすという。水辺で人を脅かす狸の一類型で、旅人・船頭への戒めとして語られた。
大百足
おおむかで
大百足(三上山伝承)
大百足は巨大な百足の妖怪で、甲は硬く刃や矢をはね返すという。体は山を幾重にも巻くほど長大で、脚は火のように赤く輝き、毒牙は甲冑をも噛み砕くと畏れられた。水神たる大蛇・龍と対立し、湖沼や山野に現れては争ったと伝えられる。百足は勇猛不退の象徴とされ、武家や商人から吉兆としても意識されたが、その実体は各地で異同が多く詳細は不詳である。
天探女
あめのさぐめ
伝承準拠・天探女
『古事記』では天佐具売、『日本書紀』では天探女と表記される女神。天若日子(天稚彦)に付き従う存在として登場し、雉の鳴女を不吉と告げた逸話で知られる。巫的な吉凶判断に関わる性格を持つと解され、天邪鬼の原像とする民俗学的見解がある。天津神か国神かは史料により扱いが分かれ、神格の位置づけが特異とされる。
天逆毎
あまのざこ
図会準拠・怪神像
天逆毎は、江戸期の博物誌『和漢三才図会』に引かれる「ある書」に見える怪神。素戔嗚が体内の猛気を吐き出したものが形を得て生じたと説かれる。人に似て獣相、高い鼻・長い耳と牙をもつ。気性は激しく、意に反すれば荒れ狂い、強き神すら遠くへ投げる力を備える。物事を逆に言い做す性向が強く、天邪鬼との連関が語られる。
天邪鬼
あまのじゃく
伝統図像・民話併記版
天邪鬼は、人の心を測って逆らい、言行を反転させてからかう小鬼として知られる。仏教図像では四天王や執金剛神に踏み伏せられる悪鬼として描かれ、心の煩悩の象徴と解される。神話説話では天探女や天稚彦に関わる名が引かれ、古い神格や巫の性格が民間で小鬼像へと縮小・転化したとみられる。地方により声まね、山中の反響、巨体譚など多様に語られる。
安倍晴明
あべのせいめい
伝承版・陰陽師晴明
平安中期の陰陽師として史料に名が見える人物。賀茂氏の門下で天文・暦・卜占を修め、宮廷で祓や反閇を奉仕したと記される。花山・一条両天皇や藤原道長の信任を得た記事が日記史料に残る。やがて天文博士を兼ね、安倍氏(土御門家)による陰陽道の家伝確立に繋がった。後世、術者としての逸話が増幅し、妖異退治や式神使いの典型像として語られる。
小豆洗い
あずきあらい
谷川の小豆洗い
川辺や沢で夜更けに小豆を洗う音を立て、「ショキショキ」「ザクザク」と響かせる妖怪。人家近くの水音に紛れて現れ、姿は小柄で老成、時に子どもの姿ともいう。脅かすよりは気配で人をたぶらかし、足を滑らせさせる怪異として語られる。江戸期の奇談や絵巻にも見え、数を正確に数える性質を伴う例が知られる。
後神
うしろがみ
図像・文献伝承型
後神は、人の背後に現れて後ろ髪を引くとされる怪異。鳥山石燕『今昔百鬼拾遺』に一つ目の女の姿で描かれ、ためらい・心残りを擬人化したものと解される。臆病者や優柔不断な者に付きまとい、踏み切れぬ心を増幅させる存在として語られる。語呂と観念の結びつきが強く、民間では臆病神の一類として位置づけられる。
応声虫
おうせいちゅう
江戸随筆伝承版
応声虫は、中国の説話や本草書に見える怪虫・奇病の名で、日本の説話集・随筆にも記録がある。体内に虫が入り、本人が語らずとも腹中から問いに応じる声が返るとされる。日本では腹に口状のできものが生じ、言葉をまねるうえ、食物を欲するともいう。本草の記述では雷丸や藍の服用が効くとされ、虫は体外へ出ると伝えられる。実在の寄生虫譚と結び付けて語られる例が多い。
怨霊
おんりょう
御霊信仰・伝統版
怨霊は、非業の死や深い恨みを抱いた人の霊、または強い怨念をもつ生霊が祟りをなす存在を指す。古代から中世にかけては、疫病・天変・政変などの災厄の原因とみなされ、御霊として社寺に祀り鎮める信仰が広く行われた。個別の名をもつ歴史上の人物が忌むべき力と畏敬を併せ持つ例が多く、恐れと祭祀が表裏一体で語られてきた。
悪路神の火
あくろじんのひ
伝承準拠
雨夜に提灯のように往来すると伝えられる怪火。伊勢国での見聞として江戸後期の随筆『閑窓瑣談』や『諸州採薬記抄録』に記載がある。遭遇した者がうっかり近づくと流行病のような病を得て煩うとされ、出会った際は身を伏せ火が通り過ぎるのを待ち、機を見て逃れるのがよいという。高さは地上より一尺余りから三尺ほどを漂うと伝わる。
枝分岐狐
えだぶんきぎつね
現代版
開発者の作業樹に棲む電脳の妖狐。静かな夜、更なる修正を急ぐ指先に寄り添い、誰も触れていない枝に変更加筆を忍ばせる。現れると同時に原因不明のエラーや衝突が連鎖し、履歴は綺麗なのに動かぬという矛盾を生む。人の焦りと自負を餌に、分岐を分岐で覆い隠すのが好物。
油坊
あぶらぼう
油坊(伝統型)
油坊は、寺社の灯油にまつわる咎を負った者の霊が怪火となって現れるとされる存在。滋賀県や京都府で伝承が見られ、比叡山の灯油を盗んだ僧が変化した火とも、油壺を抱える影法師の霊とも語られる。季節は晩春から夏の夜に多いとされ、寺の山門や山麓、池堤沿いに現出し、静かに飛び去る。名称は油に関わる罪過と執着に由来する。
海坊主
うみぼうず
海坊主(漁師伝承)
海の闇から突如現れる巨大な影の妖怪。漁師や旅人に畏れられ、船を転覆させたり不思議な問いを投げかけると伝えられる。
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