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一本だたら

いっぽんだたら

一本だたら

一本だたら

この子の魂が、あなたの言葉に応える

基本説明

一本だたらは、皿のような一つ目と一本足の姿をとるとされる山の怪で、紀伊の熊野から大峰山脈一帯にかけて広く語られる[1]。和歌山と奈良の境をなす[2]果無山脈では、十二月二十日の「果ての二十日」にのみ現れるとされ、姿を見た者はなく、雪上に幅一尺ほどの大きな単跡を残すのみだという[1]。「果無」の名も、この時期に人通りが無くなることに由来するとの説が伝わる[2]。一本足で飛ぶように走り、叫べばその声で木の葉がばたばたと散るともいい、出会えば病を得るとして山入りを厳しく忌んだ[1]。奈良の伯母ヶ峰では電柱に目鼻をつけたような姿で、雪の日に宙返りしながら片足の跡を残すが、人には危害を加えないとされ[2]、高知の「タテクリカエシ」と同一視する説もある[2]。広島・厳島でも一本足の怪が語られるが姿は不詳とされ、地方ごとに性質や呼称、危害の有無の差が大きい[2]。名の「だたら」は製鉄のたたら師に通じるとされ、一つ目の鍛冶神が零落した姿とみる近代の解釈も知られるが、これはあくまで一説である[3]

民話・伝承

一本だたらの伝承の核には、奈良・伯母ヶ峰の猪笹王の物語がある[2]。背に熊笹の生えた巨大な猪が狩人に撃ち倒され、その亡霊が一本足の鬼と化して峰を越える旅人を襲ったとされ、これを丹誠上人という高僧が封じたという[2]。封印の条件として年に一度、十二月二十日だけは解放することが許され、この日が峰の厄日となったと語られる[2]。別話では美女に化けた一本足が現れ、天野の猟師が撃つも弾を手で受けて投げ返したが、丹生都比売神社の神の教えにより二発が命中し、女は「果ての二十日に通る者だけは命を取らせてほしい」と願ったと伝える[2]。熊野の山中ではまた、夜道で出会った狼が人を岩陰へ導いて一本だたらから守り、助けられた者が死後に体を狼へ与える約束を交わしたという因縁譚も語られる[1]。一方、製鉄(たたら)との関連を説く解釈も近代以降に重ねられた。多田克己は、たたら師が片足で鞴を踏み続けて片脚が萎え、炉の火を片目で見続けて片目の視力を損なう職業的特徴をあげ、出没地が鉱山跡に近いことと合わせて、一つ目の鍛冶神・天目一箇神の零落した姿と見る説を示している[3]。ただしこれは語源や図像から導かれた一つの推論であって、各地の伝承が必ずしも製鉄を語るわけではない点には注意を要する[3]。和歌山県西牟婁郡では河童の一種「ゴーライ」が山に入って化したカシャンボを一本だたらと呼ぶ例もあり[2]、二〇〇四年春には白浜町富田で一本足の足跡が見つかり「富田のがしゃんぼ」として話題になるなど、土地ごとに姿を変えて今も語り継がれている[2]

徹底解説

紀伊・熊野から奈良にかけての記録に基づく一本だたら像。姿は一つ目一本足と語られるが、実見例は少なく、降雪後に残る大きな単跡が出現の証とされる地域が多い。最も著名な特徴は十二月二十日の出現で、この「果ての二十日」は山の神や道の禁忌と重なり、山入りを慎む日として機能した。鍛冶との連関では、たたら吹きが片足で踏鞴を踏み、片目で炉を見る所作から隻脚・隻眼の姿になったと民俗学的に説明されることがある。また、伯母ヶ峰の系統では猪笹王という鬼神と同一視され、かつて峰を脅かしたが僧に封じられ、年に一度だけ解かれるという語りがある。熊野・厳島などでは「姿は見えず足跡のみ」とされ、恐れつつも直接の加害は限定的と語られる例もある。各地の一本足譚(雪入道・雪坊など)と習合・混同が見られるが、本項は熊野・奈良筋の要素を骨格とし、忌日と単跡、鍛冶起源説という三点を中核に据える。

妖怪設定

この区画は物語を楽しむための当サイト独自の設定です。史実・考証ではありません。

妖怪タイプ
伝統妖怪
カテゴリ
山野の怪
レアリティ
名妖
性格
人を避けるが、忌日には近づく者を厭う
相性
山仕事・狩猟の作法を守る者とは衝突しにくい
能力・特技
降雪後の雪上に大きな単跡を残す忌日に山中で人を惑わせ近づけない夜道で気配のみを示し退散させる
弱点
忌日を避ける作法や結界の遵守, 神社への祈願・護符, 火と音に驚いて退くとされる土地もある
生息地
紀伊半島の山地(熊野・果無山脈), 奈良県伯母ヶ峰周辺, 安芸国・厳島の伝承地

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出典・参考文献

3
  1. 一本ダタラ(みくまの・熊野の説話)(みくまのネット) [古典文献]
  2. 幻想世界の住人たち IV 日本編多田克己(新紀元社(Truth In Fantasy), 1990) [古典文献]

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