🔤 かな別妖怪図鑑

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封豨

封豨

珍しい

ほうき

桑林の異国獣・封豨

動物変化中国『山海経』由来の異国獣。江戸の異国奇談で名のみ引用、日本の地理伝承と結びつかない

封豨(ほうき)は、本来は日本の妖怪ではなく、古代中国の神話や地理書『山海経』などに記された、巨大で凶暴な猪の怪獣(または神獣)である。中国音では「フェンシー(Fēngxī)」と呼ばれるが、日本に伝来した際に音読みで「ほうき」として定着した。伝説によれば、全身が鎧のように硬い毛皮に覆われた途方もなく巨大な猪であり、その圧倒的な力で田畑を荒らし、人々を食い殺す災害そのものとして恐れられた。日本では江戸時代の百科事典『和漢三才図会』などの「異国奇談」を通じて知識層に紹介されたが、地域に根付く民間信仰(民俗妖怪)には発展せず、長らく書物の中だけの「舶来の怪物」に留まっていた。しかし現代において、漫画やアニメなどのポップカルチャーを通じてその名が突如として脚光を浴びることとなる。

箒神

箒神

名妖

ほうきがみ

家を清める箒の神・箒神

神霊・神格箒に宿る産神·民俗神、全国の産育習俗

箒神は箒に宿る神霊とされ、掃き清める所作に霊的な「祓い」「集め」の力があると見なされた民間信仰の対象。出産や門口の清浄と結びつき、箒を依代として敬う地域がある。箒を跨ぐ・踏むことを忌むなどの禁忌が伝わり、逆さ箒で来客を帰す術や、枕元に箒を置く安産祈願などの風習が各地に見られる。鳥山石燕は付喪神としても描いた。

彭侯

彭侯

珍しい

ほうこう

老樹に宿る人面犬・彭侯

自然現象・自然霊中国『捜神記』『白沢図』の木の精、渡来

中国の説話に見える木の精で、老樹に宿る霊的存在。『捜神記』に、人顔の犬のごとき姿で樟の大木から血を流して現れたと記される。日本では江戸期の博物誌や妖怪絵巻に中国妖として紹介され、木魅・木霊の一種と理解された。山中の反響現象を起こす木霊観と結びつき、山彦像の淵源とも論じられる。

方相氏

方相氏

名妖

ほうそうし

宮中追儺の四つ目・方相氏

神霊・神格中国『周礼』の鬼払い官、大儺の儀として渡来

中国の大儺の儀礼における辟邪の役を起源とし、日本では宮中の大儺・追儺で疫鬼を祓う主役として登場した存在。四方に通じる力を象徴する四つ目の方形の面をつけ、右手に戈、左に大楯を持ち、熊皮を被る装束が古記録に見える。侲子や儺人とともに内裏を巡って悪疫を門外へ逐い、年中行事として定着したとされる。

払子守

払子守

稀少

ほっすもり

禅坐する払子の精・払子守

付喪神・骸怪石燕『百器徒然袋』、払子の付喪神、禅公案からの連想

払子守は、禅僧が用いる払子に精が宿ったとされる付喪神。鳥山石燕『百器徒然袋』に、天蓋の下で結跏趺坐し坐禅する姿として描かれる。石燕は禅の公案「狗子仏性」を引き、払子にも仏性が顕れるとの連想を示した。長年用いられた法具が霊威を帯び、静坐して成仏を志す姿として表象されるのが特徴である。

布袋

布袋

伝説

ほてい

弥勒の化身·笑門の僧·布袋

神霊・神格中国五代の実在の禅僧·契此がモデル。明州 (現·浙江省寧波) 出身

唐末·五代の実在の禅僧·契此 (かいし、?-917)を本源とする神格。太鼓腹を露わにし、大きな頭陀袋 (布袋) を背負って杖をつき、赤い顔で破顔大笑する僧形が定型図像である。「弥勒真弥勒、分身千百億」と臨終偈に詠じたと伝わることから弥勒菩薩の化身とみなされ、仏弟子としての位置と民間福神としての位置を兼ね備える。鎌倉期に禅画の画題として日本へ渡来し、室町後期に七福神の一柱として定着、江戸期に至って笑門来福·夫婦円満·子宝·商売繁盛の神として庶民信仰を広く集めた。大度量·無所有·分け与えの徳を肥満体と大袋に象徴させる珍しい類型の福神である。

骨女

骨女

稀少

ほねおんな

牡丹燈籠の白骨女・骨女

人妖・半人半妖明『剪燈新話』牡丹燈記が淵源、浅井了意『伽婢子』翻案、渡来

骨女は、鳥山石燕『今昔画図続百鬼』に描かれた骸骨の女。石燕は解説で、御伽草子系の怪談に見える、牡丹模様の提灯を携え逢瀬に通う女の骸骨を典拠とし、浅井了意『伽婢子』所収「牡丹燈籠」の女亡霊像に拠ると示す。美女に見まがう姿で男に近づき、実は白骨であるという怪異譚の図像化で、色恋と死の境が交錯する恐怖の象徴として知られる。

ボゼ

ボゼ

一般

ぼぜ

悪石島の来訪神

神・精霊鹿児島県

鹿児島県トカラ列島の悪石島(あくせきじま)に伝わる来訪神。お盆の最終日(旧暦7月16日)に現れ、人々の悪霊や穢れを払い、幸をもたらす存在として信仰されている。2018年には「来訪神:仮面・仮装の神々」の一つとしてユネスコ無形文化遺産にも登録された。

暮露暮露団

暮露暮露団

稀少

ぼろぼろとん

跳ね布団の暮露暮露団

付喪神・骸怪石燕『百器徒然袋』、ボロ布団の付喪神、言葉遊び創作

暮露暮露団(ぼろぼろとん)は、鳥山石燕の妖怪画集 『画図百器徒然袋』(天明 4 年・1784) 中巻に収められた、古びた布団の付喪神である。同書は鳥山石燕の妖怪四部作 (画図百鬼夜行 1776 / 今昔画図続百鬼 1779 / 今昔百鬼拾遺 1781 / 画図百器徒然袋 1784) の最終巻で、付喪神を専門に扱う絵本。暮露暮露団は中巻のうち「如意自在 → 暮露暮露団 → 箒神」という配列に置かれ、楽器付喪神 (琴古主・琵琶牧々・三味長老) と仏具付喪神 (経凛々・乳鉢坊・木魚達磨) が並ぶ流れの末尾、布団・箒・蓑草鞋という日用品付喪神群の冒頭にあたる。石燕の詞書は普化禅宗 → 虚無僧 → 薦僧(こもそう) → 『七十一番職人歌合』 (= 職人づくし歌合) の「暮露暮露」 という連想を踏まえ、結びに「かの世捨人のきふるせるぼろぶとんにやと、夢の中におもひぬ」と詠じて、中世遊行僧「暮露」が着古した襤褸布団であるかと夢のなかで思った、という発想で命名する。つまり暮露暮露団は、在地の口承から拾い上げた怪ではなく、中世遊行僧の文学的記憶 + 「ぼろぼろ」 + 「布団」の二重の語呂遊戯 + 図像という、完全に文人の机上で組み上げられた創作妖怪である。 多田克己『百鬼解読』(2002) が指摘するように、石燕付喪神シリーズは中世文献を踏まえつつ語呂で結ぶ江戸後期擬古的言語遊戯の到達点であり、暮露暮露団はその核手法を最もコンパクトに体現する作例である。

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