
琴古主忘れられし筑紫箏・琴古主
ことふるぬし
詳細説明
天才・八橋検校の台頭によって音楽史の闇に葬り去られた「筑紫箏(つくしごと)」の絶望と哀しみを体現する、最も正統かつ悲劇的な解釈版である。この琴古主は、人間を襲って食い殺すような野蛮な妖怪ではない。その真の恐ろしさと哀愁は、誰も訪れない深夜の土蔵や廃屋の奥深くでひっそりと展開される。
暗闇の中、長年放置され、ひび割れ、埃にまみれた古箏が、誰の手も借りずにひとりでに調弦(チューニング)の音を立て始める。そして、切れてささくれ立った無数の絃(糸)が、まるで生き物のように、あるいは執念深い女鬼の黒髪のようにうごめき、現代の人間にはもはや理解することのできない、古雅で重苦しい「筑紫流」の廃曲を奏で始めるのである。その音色は、かつて貴族や高僧に愛された誇り高さと、今はもう誰にも見向きもされないというむき出しの絶望が混ざり合い、聴く者の心を締め付けるような強烈なノスタルジーと精神的な不安を引き起こす。
琴古主の目的は復讐ではなく、「ただ誰かに自分の音を聴いてほしい」という、楽器としての純粋で狂気的な渇望である。そのため、この妖怪を鎮めるために剣や御札は必要ない。もし、古い音楽に理解のある者がこの古箏の埃を払い、丁寧に絃を張り直し、愛情を持って再びその古曲を弾き鳴らしてやれば、長年の怨みは嘘のように昇華され、琴古主はただの名器へと戻っていくのである。芸術の残酷な移り変わりと、道具に対する日本独自の情愛を見事に表現した存在である。
出典情報
種類全体の出典primary
画図百器徒然袋
著者: 鳥山石燕
年代: 1784
出版社: (天明4年・付喪神絵本)
性格
忘れられたことへの強い恨みを持つが、心の底では聴衆を渇望する極度の寂しがり屋
相性
伝統音楽を愛する者、忘れ去られた歴史や古い道具に深い情をかける人間
能力・特技
弱点
愛情を持った調弦と手入れ(再び弾かれることで怨みが昇華する), 現代の俗箏(八橋流)の華やかな音色, 丁重な楽器の供養や焼納
コレクション収録
この妖怪は以下のコレクションに収録されています:
診断評価
妖怪バウンダリー・タイプ指標
いたずら濃度
1.0high: 戯 low: 護
📝 メモ
郷愁や哀愁を精神へ流し込むが、直接害より悲哀が強い。
変化適応
2.0high: 化 low: 定
📝 メモ
古箏が自鳴し、切れた絃を髪や触手のように操る。
夜話度
3.0high: 夜 low: 昼
📝 メモ
深夜の土蔵や廃屋でひとりでに調弦する。
情の深さ
3.0high: 縁 low: 境
📝 メモ
忘れられた筑紫箏として聴衆と演奏への渇望が強い。
結界強度
1.0high: 律 low: 流
📝 メモ
楽器蔵や古道具納所に結びつくが、掟は強くない。
表舞台圧
-1.0high: 表 low: 影
📝 メモ
誰もいない土蔵で音を鳴らす、ひそやかな楽器付喪神である。
妖怪相性診断
喜び
1.5喜びと楽しさの程度
📝 メモ
喜悦よりも嘆きと未練が前面。音も湿りを帯びる描写。
怒り
6.0怒りの激しさの程度
📝 メモ
怨念由来で怒りは中程度以上。ただし暴虐性は控えめで音による訴えが中心。
慈悲深い
3.0慈悲深さの程度
📝 メモ
情をかける者には和らぐ示唆はあるが、自発的な慈悲は限定的。
憂鬱
8.0憂鬱で思慮深い程度
📝 メモ
忘れられた楽器の嘆きという設定から憂愁が強い。
静寂
4.0内なる平静の程度
📝 メモ
静かな自鳴はあるが内面は不満と寂寥で不安定。供養後は上がるが標準像では低中程度。
いたずら好き
2.5いたずら好きで活発な程度
📝 メモ
人の気配に応じて音色を変える軽いいたずら性はあるが、本質は戯れより嘆願。
やさしい
3.5やさしく親しみやすい程度
📝 メモ
恨みを抱く付喪神で人懐こさは低いが、丁重な修繕・供養で鎮まる余地があり完全な悪性ではない。
厳格
5.5厳格で真面目な程度
📝 メモ
調弦・修繕・礼節への応答が明確で、扱いの規範を求める面が中程度に強い。
守護的
2.0他者を守る傾向
📝 メモ
守護の動機は乏しく、主に嘆きと怨みの顕現であり保護的行動は伝わらない。
神秘的
8.5神秘的で不思議な程度
📝 メモ
夜陰に自鳴し幻聴を誘うなど、姿と振る舞いが強く神秘的。図像系譜も不可思議性を補強。
霊性の深さ
8.5精神的境界の深さ
📝 メモ
付喪神思想と器物霊観を体現し、図像・伝承両面で霊性が深い。
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