神格
伝統妖怪

基本説明

玄武(げんぶ)は、北方を守護する四神の一にして、天の北方七宿を象った霊獣である。しばしば亀に蛇が巻きついた姿(亀蛇相絡)で表され、五行では「水」、五色では「玄(黒)」、季節では冬に配される。中国の星宿信仰に発し、『淮南子』天文訓では北方の獣を玄武とした。古代日本に受容されたのちは、背後に山を負う「玄武」の地相を吉相とする四神相応の観念とともに語られた。

民話・伝承

玄武は、北という方位と水気・冬を体現する霊獣である。天の北方七宿(斗・牛・女・虚・危・室・壁)の星の連なりを、蛇のからむ亀に見立てたのが、その独特な図像の由来である。『淮南子』天文訓は北方の帝を顓頊、その獣を玄武とし、水気・冬・玄(黒)に配した。『礼記』曲礼の「前朱鳥にして後玄武」も、北を玄武とする。

玄武の亀蛇については、後漢の魏伯陽『周易参同契』が「玄武は亀蛇、蟠虬(ばんきゅう)相扶けて、以て牝牡(ひんぼ)を明らかにす」と述べ、亀と蛇の絡む姿を陰陽和合・雌雄の象徴とみた。ただしこれは玄武の本義(北方七宿の象)に後から重ねられた象徴解釈であり、両者は層を異にする。なお玄武は道教では人格神「玄天上帝(真武大帝)」へと発展したが、これは日本の四神(方位守護)とは別系統の信仰である。

日本では、玄武は背後に山地や丘陵を負う地勢を吉相とする「四神相応」の観念のなかで語られた。『続日本紀』の大宝元年(七〇一)の朝賀儀礼では、玄武の幡が北の守りとして立てられている。図像としては飛鳥のキトラ古墳北壁に、亀蛇相絡の玄武が四神の一翼として現存する。

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四聖獣

四神

天の二十八宿を四方に配し、東西南北を守護する四つの霊獣。青竜(東・木)・朱雀(南・火)・白虎(西・金)・玄武(北・水)からなり、中国の星宿・五行思想に発して古代日本へ受容された。飛鳥のキトラ古墳壁画に四方すべて揃う。

徹底解説

玄武は、四神のなかでもっとも特異な姿――亀と蛇の絡む姿――をもつ、北方・水気・冬の霊獣である。この版では、その図像の意味と、日本での四神相応の観念を辿る。

起源は天の星にある。北方七宿(斗・牛・女・虚・危・室・壁)の連なりを、蛇のからむ亀に見立てたのが玄武である。『淮南子』天文訓は北方の帝を顓頊、その獣を玄武とし、水気・冬・玄(黒)に配した。玄(黒)は水気の色であり、万物の閉じこもる北の冬天を象る。

亀蛇の姿には、二重の意味が重なっている。第一は本義――北方七宿の星の象である。第二は後漢の『周易参同契』が説く象徴で、亀(長寿)と蛇(生殖)の絡む姿を陰陽和合・牝牡とみる。後者は本義に重ねられた解釈であり、両者を混同してはならない。また玄武は道教で「玄天上帝(真武大帝)」へ人格神化したが、これは日本の方位守護の四神とは別系統の発展である。

日本では、玄武は「四神相応」の地相観のなかで、もっとも具体的に語られた。背後に山を負う地勢を玄武の吉相とするのである。ただし「平安京は四神相応の地(北の玄武=船岡山等)」という比定は、遷都当初の確証ではなく、昭和五十年頃に整理・定説化された後世の解釈であり、研究者により比定地も食い違う。確実なのは、四神相応という風水の観念が平安期に存在したことまでである。『続日本紀』の四神幡が文献上の初出であり、図像はキトラ古墳北壁の玄武に、亀蛇相絡の姿をとどめている。

妖怪設定

この区画は物語を楽しむための当サイト独自の設定です。史実・考証ではありません。

性格
寡黙で沈静、守護に徹する
相性
北方・冬・水徳と調和
能力・特技
方位守護(北)災厄消除・方除けの象徴力堅固・持久の加護寒冷や水難への鎮静象
弱点
積極的に害をなす性格付けは乏しい, 具体的降神儀礼の地域差が大きく一様でない
生息地
都城・城郭の北側に想定される地勢観, 社寺の四神図・天井画・曼荼羅などの図像空間

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出典・参考文献

6
  1. 淮南子(天文訓)劉安ほか((前漢の思想書), 前2世紀) [古典文献]東方=蒼竜・南方=朱鳥・中央=黄竜・西方=白虎・北方=玄武と、五方・五行・五帝に五獣を完全配当する体系化の鍵文献。
  2. 礼記(曲礼上)(儒家経典)((五経の一), 戦国〜前漢) [古典文献]「前朱鳥にして後玄武、左青龍にして右白虎」と四神を行軍の配置に用いる最古層の記述。
  3. 周易参同契魏伯陽((道教煉丹の古典), 後漢末) [古典文献]「玄武亀蛇、蟠虬相扶、以て牝牡を明らかにす」と、玄武の亀蛇を陰陽和合(牝牡)とみる象徴解釈の典拠。
  4. 続日本紀(大宝元年正月元日条) [古典文献]
  5. キトラ古墳 四神壁画(奈良文化財研究所)((特別史跡・国宝、奈良県明日香村), 7世紀末〜8世紀初頭) [考古資料]石室四壁に青竜・朱雀・白虎・玄武が四方すべて揃い、十二支・現存世界最古級の天文図を伴う、日本で四神が完備する唯一の古墳壁画。
  6. 四神相応(学説史)村井康彦・足利健亮ほか((風水・歴史地理の論考), 20世紀後半) [研究]平安京を四神相応の地とする比定(青竜=鴨川等)は遷都当初の確証ではなく、昭和五十年頃に整理・定説化された解釈で、研究者間で比定地が食い違う。

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