YOKAI.JP

琵琶牧々

びわぼくぼく

琵琶牧々

琵琶牧々

この子の魂が、あなたの言葉に応える

基本説明

琵琶牧々(びわぼくぼく)は、鳥山石燕の妖怪画集『画図百器徒然袋』(天明4年・1784年刊)に描かれた付喪神で、古い琵琶が霊を得て、座頭(盲僧)の姿に化したものとされる。図では、頭部を琵琶とし、僧体に剃り上げた身で杖をつき、目を閉じて歩む姿に描かれる。これは『平家物語』などを語り歩いた琵琶法師・盲僧琵琶の像を下敷きにした造形である。石燕は詞書に「玄上(げんじょう)・牧馬(ぼくば)といへる琵琶は、いにしへの名器にしてふしぎたびたびありければ、その牧馬の転にて、ぼくぼくといふにや」と記す。すなわち名は、宮中に伝わった名琵琶「玄上(玄象)」と並び称された名器「牧馬」に由来し、その「牧馬」を重ねた語呂から「牧々(ぼくぼく)」と名づけたという、石燕一流の言葉遊びによる。古器が長い年月と人の手を経て霊を得るという付喪神の観念を、語り物と縁深い琵琶に当てはめた一例である。

民話・伝承

琵琶牧々は固有の昔話を持たず、石燕の図と詞書、そして名器琵琶にまつわる古来の奇談を組み合わせて成り立つ妖怪である。詞書のいう「ふしぎたびたびありけり」は、玄上・牧馬という実在の名琵琶にまつわる説話群を指す。順徳天皇『禁秘抄』(13世紀)は、玄上・牧馬を宮中第一の名器として記し、これらが単なる楽器を超えた霊威ある宝物と見なされていたことを伝える。とりわけ玄上(玄象)には霊異の談が多く、『今昔物語集』巻二十四第二十四「玄象琵琶為鬼被取語」は、宮中から失われた玄象を、楽の名手・源博雅が夜ごとの音を頼りに尋ね歩き、羅城門で鬼に奪われていた琵琶を取り戻したと語る。琵琶が独りでに鳴り、内裏炎上の折に自ら飛び出して焼失を免れたといった奇瑞も伝えられ、名器が意思を持つかのように扱われた。

こうした「楽器が霊を帯びる」という観念は、琵琶法師の語り物の世界とも深く響き合う。盲目の法師が『平家物語』を弾き語る姿は中世以来広く知られ、石燕はその盲僧の像に琵琶そのものを重ねて、器物が人形を得た付喪神として描いた。図像の源流としては、室町期の『百鬼夜行絵巻』に見える、琵琶や琴など楽器の妖が行列する図様が指摘される。器物が齢を経て妖と化す思想は『付喪神絵巻』に説かれた付喪神観の延長にあり、琵琶牧々はそのなかでも、名器の霊異譚という確かな文芸的裏づけを背後に持つ点で、純然たる絵姿先行の付喪神とはやや趣を異にする。ただし「琵琶牧々」という妖怪そのものに固有の説話があるわけではなく、その人格や挙動は石燕が名器の伝承を束ねて造形した像である点は、なお留意される。

妖怪カード2

琵琶牧々 を様々な画風のカードで

カード一覧

徹底解説

石燕の図像と室町絵巻の系譜に基づく標準的解釈。長年弾かれた琵琶が成霊し、座頭の装束で夜行に加わるとされる。音色は人心をひきつけ、古器への畏れと敬意を促す寓意を帯びる。特定の人物史や土地伝承に依拠せず、器物礼讃と戒めが主題。名器「玄上」「牧馬」に付随する奇談は付喪神観の背景を補強するにとどまり、琵琶牧々そのものの行状は絵画的表象として伝わる。図像では目を閉じ、杖を頼りに進み、同見開きに琴の付喪神が配される例がある。

妖怪設定

この区画は物語を楽しむための当サイト独自の設定です。史実・考証ではありません。

妖怪タイプ
伝統妖怪
カテゴリ
付喪神・骸怪
レアリティ
名妖
性格
寡黙で執心深い
相性
静寂や調律を好み、喧噪と粗暴を嫌う
能力・特技
調弦に応じて人心を和らげる音色を奏でる古器の気配を呼び覚ます夜行の群れを先導するように歩む
弱点
弦の断絶や胴の割れ, 粗暴な扱い, 長期の不調律
生息地
古寺の蔵, 座敷の納戸, 楽屋の道具箱

🔮妖怪相性診断

💕恋愛妖怪体質診断

琵琶頭の盲僧姿・琵琶牧々についてさらに詳しい情報や診断結果については、こちらをご覧ください。

出典・参考文献

5
  1. 画図百器徒然袋鳥山石燕((天明4年・付喪神絵本), 1784) [図像資料]石燕最後の妖怪絵本。徒然草もじりの夢仕立てで、ばけの皮衣を上巻に収める。
  2. 今昔物語集(巻二十四第二十四「玄象琵琶為鬼被取語」)編者未詳((平安末期の説話集), 12世紀前半) [古典文献]
  3. 禁秘抄順徳天皇((鎌倉前期・有職故実書、禁中の名器を記す), 1221頃) [古典文献]
  4. 百鬼夜行絵巻土佐光信(伝、真珠庵本ほか)((大徳寺真珠庵本など諸本), 室町時代(16世紀ごろ)) [primary] 参考資料
  5. 付喪神絵巻作者未詳((御伽草子系絵巻、岐阜・崇福寺ほか所蔵), 室町時代(現存最古本は16世紀)) [primary] 参考資料室町期成立の絵巻。冒頭に「陰陽雑記云、器物百年を経て、化して精霊を得てより、人の心を誑す、これを付喪神と号す」と記し、康保年間の煤払いで捨てられた古道具が節分に妖怪化して人を襲い、護法童子・密教の法力に調伏されて仏道に帰す筋を描く。引用元の『陰陽雑記』は実在が確認されていない。

このタイプの妖怪に興味がある?

妖怪診断で、あなたの性格に最も近い妖怪を発見しましょう

妖怪診断を始める

神社で今日の守護妖怪に出会う

おみくじを引くと、今日あなたを見守る妖怪が現れます。