江戸の奇談に即し、後頭の口が本体の空腹を増幅させる型。表の口は少食を装うが、背の口が髪を操って器を引き寄せる。周囲の食を盗み食いするため家内不和の因となり、家計や恥を巡る語りとともに伝えられた。視覚表現では、結髪の間から牙の生えた口が覗く図が通例で、音や匂いに敏いとされるが、人前では巧みに隠す。
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ふたくちおんな
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ふたくちおんな
二口女(ふたくちおんな)は、後頭部または項(うなじ)にもう一つの口をもつとされる女の妖怪。江戸後期の奇談集『絵本百物語』(桃山人夜話、天保十二年=一八四一年刊)[1]の一図として広く知られ、編者桃山人(とうさんじん)[1]の文に竹原春泉斎[1]が挿絵を添えた。普段は長い黒髪で後ろの口を覆い、表向きは淑やかな女としてふるまうが、空腹になると後頭の口が二枚の唇をうごめかせて物を乞い、髪を蛇のように操って食物を口へ運ぶと描かれる。ただし髪を触手のごとく動かして食をむさぼる図像表現は本文には記されず、竹原春泉斎[1]の絵による創意とされ、文と画の間には齟齬がある。人妖・半人半妖に分類され、外見は常人と変わらぬまま身体の一部に異形を宿す点に特徴がある。後ろの口は本人の意思とは無関係に飲食を求めて当人を苦しめ、悪行の報いとして身に生じた「奇病」「業病」として語られた。
『絵本百物語』[1]巻三所収の二口女は、下総国(しもうさのくに)の話として語られる。ある男の後妻が、先妻の遺した継子を憎み、満足な食を与えず終に餓死させてしまう。子の四十九日が過ぎたころ、夫が薪を割る斧をあやまって妻の後頭部に打ち当て、その傷が癒えぬまま人の唇のような形に変じ、物を入れねば激しく痛むようになった――継子を飢えさせた業がわが身に返った因果応報の譚として説かれる。これと並んで、けちな夫が食費を惜しんで妻を娶ったところ「飯を食わぬ女房」がじつは後頭に口をもつ妖で、夜ごと髪を操って台所の米を貪っていた、という昔話系の話型も知られ、二口女はしばしばこの「飯食わぬ女房」「食わず女房」[2]系の伝承と結び付けて理解される。もっとも民俗学的には、後者の昔話の正体は山姥(やまんば)や蜘蛛の化身とされることが多く、『絵本百物語』[1]が描く因果譚としての二口女とは本来別系統の話であって、両者を安易に同一視できないとも指摘される。近世東北の紀行家菅江真澄[3]の見聞録など、地方の口碑に類話を求める解釈も後世なされたが、二口女という固有名と図像を確立したのはあくまで桃山人・竹原春泉斎の版本[1]であり、それ以前に遡る確実な伝承の系譜は乏しい。
二口女 を様々な画風のカードで
江戸の奇談に即し、後頭の口が本体の空腹を増幅させる型。表の口は少食を装うが、背の口が髪を操って器を引き寄せる。周囲の食を盗み食いするため家内不和の因となり、家計や恥を巡る語りとともに伝えられた。視覚表現では、結髪の間から牙の生えた口が覗く図が通例で、音や匂いに敏いとされるが、人前では巧みに隠す。
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